ものづくり事業部

月別アーカイブ:2018年 7月

第31回 直流のお話

電気を送るのに交流が良いか直流が良いかは、昔アメリカでエジソン(直流)とテスラ―(交流)が争いテスラ―が勝利したことは良く知られています。今日では、家庭やオフィスへの低圧配電(AC100V)から、発電所から遠くの変電所までの高圧送電(数万Ⅴ)まで、全てが交流で行われていました。その最大の理由は、交流は変圧器(トランス)によって電圧を容易に変換できるからです。

しかしここに来て、敗北した直流送電が見直されています。まず長距離の高圧送電です。なぜ長距離は高圧で送るかと言えば、同じ電力を送る場合、電流値を小さくできるため、電力線で消費される電力ロスが少なく抑えられるからです。しかし交流を銅線で送る場合、表皮効果と言うやっかいな問題があります。交流は銅線の中心部分は流れず表面しか流れません。このためロスが大きくなります。

しかし以前は、高圧を直流に変換することは困難だったのですが、最近の技術進歩(高圧素子の開発)により可能となりました。このため長距離の高圧送電に直流を用いる方法が実際に行われています。特に、太陽光や風力等の不安定な自然エネルギーを安定化させて広域に送るスマートグリッドでは、高圧直流送電が一般的になってきています。

では、家庭向けの低圧配電ではどうでしょうか。家庭内のテレビやAV機器、パソコン等は全て直流です。コンセントに取り付けられたACアダプターだけでも大変な数になり、これ等は皆待機電流を消費します。また、ノートパソコンを出張に携行する時は、必ずACアダプターも持って行きます。やはり家庭やオフィスでも、ACアダプターの不要な直流配電があれば便利です。これを解決できるかも知れない鍵がUSB-typeCのPower Deliverryです。

下図は、そのコネクターの配置図です。

第31回図表

 

 

 


これまでのUSBは電圧が5Vでしたが、このコネクターは20Vの電圧も対応しており、最大100ワットまで供給可能ですから、通常の電子機器やパソコンでも充分に電力供給が可能です。これまでのUSBはパソコンから周辺機器に電力を供給するのみの一方通行でした。しかしこの規格は双方向で、USBを通じて電源供給を受けることもできます。つまり、出張にACアダプターを携行しなくてもパソコンが使える時代が来るかも知れません。

実際に村田製作所と戸田建設は、USB 3.1(Type-C)に対応した電源・通信システム機器を、国内では初めて、ホテル「御宿野乃奈良」に導入したと言うニュースが出ています。残念ながら、このコネクターを装備したノートパソコンはまだあまり販売されていないようです。早くこのコネクターを装備した電子機器が出回るようになって欲しいものです。

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