ものづくり事業部

事業部トップ>執筆者:金井 努

執筆者:tkanai

第31回 直流のお話

電気を送るのに交流が良いか直流が良いかは、昔アメリカでエジソン(直流)とテスラ―(交流)が争いテスラ―が勝利したことは良く知られています。今日では、家庭やオフィスへの低圧配電(AC100V)から、発電所から遠くの変電所までの高圧送電(数万Ⅴ)まで、全てが交流で行われていました。その最大の理由は、交流は変圧器(トランス)によって電圧を容易に変換できるからです。

しかしここに来て、敗北した直流送電が見直されています。まず長距離の高圧送電です。なぜ長距離は高圧で送るかと言えば、同じ電力を送る場合、電流値を小さくできるため、電力線で消費される電力ロスが少なく抑えられるからです。しかし交流を銅線で送る場合、表皮効果と言うやっかいな問題があります。交流は銅線の中心部分は流れず表面しか流れません。このためロスが大きくなります。

しかし以前は、高圧を直流に変換することは困難だったのですが、最近の技術進歩(高圧素子の開発)により可能となりました。このため長距離の高圧送電に直流を用いる方法が実際に行われています。特に、太陽光や風力等の不安定な自然エネルギーを安定化させて広域に送るスマートグリッドでは、高圧直流送電が一般的になってきています。

では、家庭向けの低圧配電ではどうでしょうか。家庭内のテレビやAV機器、パソコン等は全て直流です。コンセントに取り付けられたACアダプターだけでも大変な数になり、これ等は皆待機電流を消費します。また、ノートパソコンを出張に携行する時は、必ずACアダプターも持って行きます。やはり家庭やオフィスでも、ACアダプターの不要な直流配電があれば便利です。これを解決できるかも知れない鍵がUSB-typeCのPower Deliverryです。

下図は、そのコネクターの配置図です。

第31回図表

 

 

 


これまでのUSBは電圧が5Vでしたが、このコネクターは20Vの電圧も対応しており、最大100ワットまで供給可能ですから、通常の電子機器やパソコンでも充分に電力供給が可能です。これまでのUSBはパソコンから周辺機器に電力を供給するのみの一方通行でした。しかしこの規格は双方向で、USBを通じて電源供給を受けることもできます。つまり、出張にACアダプターを携行しなくてもパソコンが使える時代が来るかも知れません。

実際に村田製作所と戸田建設は、USB 3.1(Type-C)に対応した電源・通信システム機器を、国内では初めて、ホテル「御宿野乃奈良」に導入したと言うニュースが出ています。残念ながら、このコネクターを装備したノートパソコンはまだあまり販売されていないようです。早くこのコネクターを装備した電子機器が出回るようになって欲しいものです。

第15回 産学連携の現状と課題

名古屋大学の青色発光ダイオードに見るように、イノベーションの創出には産学連携が欠かせない。しかしながら、日本は米国に比較してこの分野で大きく遅れている。ここでは、日本における産学連携の現状と課題を考察する。

1.米国における産学連携
米国における産学連携は、レーガン政権(1981年~1989年)による強いアメリカ復活の政策としてバイドール法(1980年)が制定されている。
これは、連邦政府の資金で研究開発された発明であっても、その成果に対して大学や研究者が特許権を取得することを認めたもので、研究開発成果を広く活用できるようにすることを可能とした。

米国における産学連携の実態
米国における産学連携の最大の成果は、大学発ベンチャーの創出である。
1980~1999年に米国の大学発ベンチャーは335億ドルの経済的付加価値を創出している。2000年までに創出された大学発ベンチャーは3,376社であり、1社あたりの経済的価値は1,000万ドルである。

1980~1999年に米国の大学発ベンチャーは28万人の雇用を創出した。1社平均83人である。ちなみに、日本の大学発ベンチャーは1社平均10.8人、全体で1万6千人であり、利益の創出も僅かである。

2.日本における産学連携
1)地域新生コンソーシアム事業
1997年から2005年までの間に実施された、本格的な産学連携事業。大学のシーズ、知見を企業に移転し、新産業を育成することを目的としている。大学と複数の地域企業が連携して、研究開発を実施する。しかしながら、研究成果はほとんど実用化されなかった。大学のカルチャーの問題もあり、実用的なテーマが設定されていなかったことが原因と思われる。

2)日本版バイドール法の制定(1999年)
産業技術力強化法第 19条として、米国から20年遅れて制定された。国等の委託 研究発について、開発者のインセンティブを増し、研究開発成果の普及を促進するため、国等の委託研究開発に関する知的財産権を受託者(民間企業等)に帰属させることを可能としたものである。 
このために、国立大学の独立法人化が行われた。

3)TLO(Technology Licensing Organization)の設立
産業技術力強化法第 19 条が制定され、大学等おける技術に関する研究成果(発明や特許等)の民間事業者への技術移転(Technology Licensing)の促進を図ることを主要業務とし、産学連携の仲介役・中核の役割を果たす技術移転事業者が設立される。
基本的に、大学から独立した会社組織で運営されるべきであるが、文科省が知財本部事業を立ち上げて、大学内部に知財本部を設立させる。
大学の知財をめぐり文科省と経産省の縄張り争いが発生する。このため、TLOを大学内の一組織とする内部TLOが誕生する。

3.産学連携の課題
1)日本における産学連携の課題
 産学連携の最大の課題は、大学の閉鎖性
 大学間、学部間、学科間、研究者相互等、多くの連携が不足している。政府が最近推進しようとしている「医・工連携」のような試みは、欧米には存在しない(当然すぎることである)。

2)産学連携に適した研究者の不足
 人間性を含む研究履歴が重要(斉藤九州大学名誉教授)
 適した研究者は工学系研究者の1割程度であり、コーディネータにはこの一割を見抜く力が要求される。

3)産学連携コーディネータに要求される要件
   技術評価能力(知財知識含む)  
   ビジネス評価能力
   経営者とのコミュニケーション能力
   経営者とのコミュニケーション能力

 

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

詳細はこちら >

執筆者

月別アーカイブ

このページの先頭へ