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執筆者:T.柴田

第24回 エネルギーとCO2排出からみたEV

中国政府の半ば強制的な普及政策、欧州自動車メーカのディーゼルからの方向転換、日本メーカの開発体制強化など、いまEV(Electric Vehicle:電気自動車)に注目が集まっています。排気ガスもなく静かで充電電気代も少ないと、多くの利点が喧伝されています。車そのものと利用シーンだけを見ればその通りですが、エネルギーとCO2排出を社会的な視点で見ると別の側面が見えてきます。

車を走らすにはエネルギーが必要です。EVは電気でガソリン車は化石燃料が走行エネルギーですが、どちらもエネルギーフローを経て我々の手元に届いています。このフローに着目してEVとガソリン車(ハイブリッド車)を比較してみます。(ガソリン車がガソリン車であり続けるとすると、エネルギー高効率化とCO2排出抑制の点でハイブリッド化は一つの有力解です。)

最新のEVには40kWhの蓄電池搭載で400kmと長い航続距離を誇るものがあります。一方ハイブリッド車は航続距離と言うよりも燃費が基準になり、その中でも優れた燃費を持つものは40.8km/Lを誇ります。エネルギーの単位は遙か昔に中学か高校で習ったJ(ジュール)です。1kWhは3.6MJ(メガジュール)で、ガソリン1Lは34.6MJのエネルギーがあります。これを元に1km当たりの走行エネルギーを比較すると、
EVは3.6MJ x 40 ÷ 400km=0.36 MJ/km ハイブリッド車は34.6MJ ÷ 40.8km =0.85 MJ/kmとなります。

EVは同じ距離を走るのにハイブリッド車の約40%のエネルギーですむ計算です。これだけ見ると素晴らしいエネルギー効率ですが、この効率は蓄電池と燃料タンクにエネルギーが充填されてからの効率で、充填されるまでのエネルギーの損失を計算に入れる必要があります。一般的に発電に投入されるエネルギーは40%程度が我々需要家の手元に届きます。EVを1km走らすために発電へ投入されるエネルギーは 0.36 ÷ 0.40=0.9 MJ となります。更に蓄電池では充電時に損失があります。
EVの充電の効率を85%と見ると 0.9 ÷ 0.85=1.06MJとなります。

ハイブリッドが0.85 MJですので、数値が逆転します。原子力が殆ど停止している今、日本における発電はわずかな再生可能エネルギー(水力、風力、太陽光)を除くと殆どが化石燃料によるものです。EVもハイブリッドも、燃やすところが発電所かエンジンかで、化石燃料がエネルギー源である点に変わりがありません。EVは発送電による損失がありハイブリッド車にはそれがないため、EV本体の効率が良くても大元の投入エネルギーに対する効率はハイブリッド車に負けるということが起きるのです。

ところでCO2排出の視点ではどうでしょうか。環境省は電気事業者別のCO2排出係数というものを毎年発表しています。電気事業者毎の1kWhを作り出す時に排出するCO2の量です。電気事業者によって異なるのですが、概ね0.00055トン=0.55kg程度と考えられます。一方ガソリンのCO2排出量は2.32kg/Lとなっています。1km走るときのCO2排出量を計算すると
EVは                         0.55kg/1kWh=0.55kg/10km=0.055kg/km、
充電損失を考慮して 0.055kg/km/0.85=0.065kg/km
ハイブリッド車は       2.32kg/L=2.32kg/40.8km=0.057kg/kmとなります。
CO2排出でもハイブリッド車が優れているという計算です。

以上エネルギー効率とCO2排出を見てきましたが、EVはこの点で決して優れてはいないのです。EVの普及を進めると社会全体のエネルギー消費とCO2排出が増えてしまうという、イメージとは逆のことが起き得るのです。中国では国策でEVを推進していますが、石炭火力が多いため大気汚染とCO2排出に拍車がかかるのではと危惧されます。

効率とCO2排出に優れた再生可能エネルギーに発電が置き換わっていけばEVの社会的な価値は向上します。それまでの間は優れた燃費のハイブリッド車を使うというのが社会的には良いのではと筆者は思っています。

 

 

 

 

 

第7回:電力の自由化について(T.柴田)

今年の4月1日に電力の小売が完全自由化になりました。マスコミや小売事業に参入する各社のTVCM等で大々的に喧伝され、多くの人が認識することになったのではないかと思います。しかし自由化は今回に限ったわけではなく、発電事業は既に1995年に自由化されています。決して目新しいものではありません。
色々な段階を経て拡大し、今回は小規模需要家(50kW以下)や家庭向けの「小口の小売市場が自由化」されたというものです。

自由化というと、1985年に電電公社(国内)と国際電電(海外向け)の二社独占状態が開放された通信自由化が思い浮かぶのではないかと思います。通信自由化では異業種から新規参入が相次ぎ、目覚しい技術革新が起こり、新しい商品・サービスが数多く生まれました。現在ユーザは様々な形でその恩恵を享受しています。固定電話だけしかない時代から携帯の時代になり、通信に払っている金額は増えてはいますが、通信の基本単位であるビット当たりの料金は劇的に低くなっています。サービスやコンテンツは百花繚乱。好きなときに好きな映像や音楽を、フェアな料金で楽しめるようになりました。これぞ自由化の効果と言えます。

さて、電力の自由化はどうでしょうか。自由競争で次から次へと発売される「様々な色や形や動きをした電気」を、「大幅に安くなった料金」でどこでも利用できるということには残念ながらなりません。皆さんが日常使っている電気は、火力、原子力、再生可能エネルギー(太陽光・風力)を問わず、どれで発電されても商品としての電力は全く同じです。まさに無色・無味無臭で、商品性の違いはありません。原子力発電がほぼゼロの今日、発電源は火力が殆どで電源構成変化も遅い状況では、発電コストは燃料費が大方を決めま
す。生産(発電)と消費も一対一で拡大コピーもできない(むしろ減衰する)ため、情報のように一粒で何度でもおいしいという訳にはいきません。このようなことから電力料金の低下には限界があるといえます。
「競争原理により電力料金が下がる」と喧伝されている向きがありますが、自由化先行した諸外国では、むしろ上がっている国のほうが多いです。小口の小売市場が開いたばかりの今は、当面は安値競争もあると思います。しかし、自由化市場ではそれぞれの参加者が自己の利益最大化を狙って、自由に対象物(金、株、商品、電力)を売買することになります。需給バランスも働きその諸活動の結果として電力の取引額が決まっていくことになります。例えば発電所の老朽化に対応した新設発電所が建設出来ない事態が起きると、需給バランスが崩れ料金高騰も考えられます。今は地域電力会社が安定供給を至上命題として安定した料金で安定した電力供給を行なっていますが、今後は安定した料金から、市場で決まる料金=変動が大きい料金へと変化していきます。 このため電力多消費型の中小企業は、電力料金の高騰や大幅な変動に頭を悩ますことになるでしょう。

幸い市場の自由化で、今までにないタイプの電力商品メニューも考えられています。電気の使い方が金銭的価値を持つ例えば「デマンドレスポンス」。電気を使うのではなく、ピーク時に使わないことを約することで逆に需要家がお金をもらえるといったことです。このような新しい電力メニューが出てきたときこそ、コンサルタントの知恵の絞りどころではないかと思います。守りの省エネから、攻めの儲かるエネルギーソリューションです。

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ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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