ものづくり事業部

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執筆者:山崎 登志雄

第10回 計画なくして経営革新なし ―予算という計画を建てる―

〔暗中模索のなかで〕
 企業経営は、近未来に向かって革新していくからこそ、永続していけるというもの。だが未来は、どのように開けていくか分からない。経営革新は未知の世界で暗中模索するのだから、ここに何らかの灯火があれば道標になる。
 この『ともしび』とは将来に向かう『計画』で、企業経営においては『経営計画』『事業計画』『ビジネスプラン』などの名称が付けられている。まさにこの道標は、経営者が自身のため、また革新していく仲間や協力者のために、自分が灯さなければならないのである。

〔どのように灯せばいいのか〕
 一言に『計画』といっても、慣れないうちはどのように建てていけばよいか分からない。その問いに即答するなら、1)どれくらい先の近未来を照らせばよいか ⇒「3~5年くらい先の『中期経営計画』にする」のが良い、2)どのような内容を満たせばよいのか ⇒「次に図示するような構成で考える」とまとまり易いのではないか、ということになる。
 ただしここで忘れてはならないのは、3)経営革新を進めるための計画は ⇒「絶対に『利益計画』でなければならない」ことである。逆にいえば、将来の経営を維持するための利益の獲得は ⇒未知の世界に対応した「革新を進める」ということになる。

〔二重構造の辻褄が合うか〕
 図に示したように、経営計画は将来に向けて『時間』と『金額』両方の要素を備えていなければならない。つまり利益を産み出すための『行動計画』と、その結果を客観的に表す『計数計画』すなわち『予算』の二重構造になっていなければならない。
 このうち行動計画の方は、販売活動にしても開発・生産活動にしても「今年はこうする」「来年はこう」で「再来年までには・・・・」とばかり、P-D-C-Aサイクルの『Pプラン』の目標も直ぐに建ち、スケジュールも建つ。また行動計画は『Pプラン』に対する『D実行』も、P-Dの『Cチェック』に基づく反省や修正も、次の『Aアクション』に繋ぐことも容易にできる。
 しかし子供の計画と同じで、ただ行動計画があるだけでは、どんなに頑張っても利益計画にはならない。つまり企業活動には、必ず『コスト』を必要とするのであり、活動の成果は『収益』として還ってくるのだから、これで【収益-コスト=利益】が見込めることになる。
 両計画が揃ってはじめて、利益計画のP-D-C-Aサイクルが廻るのである。この二つ計画は、サブプランとする場合もあるが、両方が揃わないと計画にならないのだから、両方ともメインプランと呼称すべきであろう。
 経営革新計画の立案にあたっては、一定の書式が決まっている場合でも、行動計画のスペースは多いのに、予算の方は将来の『予想損益計算書』スタイルのスペースがとってあるだけである。たしかに行動計画は「あれもやりたい」「これもできる」とばかり、次々に埋められる。
 だのに予算、つまり文字通りに「予め計算する」段になると、だいたい「こんな程度ではないか」とばかり、適当に見積もった数字を当てはめるだけになってしまう。
 もちろんこれでは、行動と結果の間に因果関係はなくなってしまう。だが紙数の関係で、どうすれば辻褄が合うようになるか、計画策定のコツは次の機会に譲ることにしよう。
                                               以上

第9回 ロングセラーはもう出ない ―成熟市場下の新製品開発―      山﨑登志雄

〔成熟市場では焦っても始まらない〕
 新製品開発は、ものづくり企業にとって、最適の経営革新になることに違いない。だが開発には『時間』と『コスト』という貴重な経営資源を注ぎ込む、大変リスキーな経営行為になる。だから事業の停滞時や、開発の『ネタ不足』のとき慌てて取り掛かるのは危険極まりない。
 経済社会の流れが、緩やかな大河のごとく安定していたときは、どの企業もロングセラー商品を生み出してきた。しかし大河はもはや、流れを多様化して細い急流に分散した成熟市場へと変化してしまったが、この流れは独自の努力で、元の大河に戻すことはできない。
 個別企業はこの成熟市場に何とか沿うべく、目先を変えた新製品開発に貴重な経営資源を消耗することになる。が、そんな小刻みな対策に焦っても、安定経営は始まらない。

〔道筋をつけるのが経営革新〕
 製品ライフサイクルが短くなると、新製品開発の機会が多くなり、企業の将来を見据えた道筋がみえなくなってくる。だからものづくり企業は『製品フレーム』つまり自社製品共通の『骨格』を時の流れに沿わせる経営革新が必要になる。
 どの企業にも『製品ジャンル別』だとか『業種別』だとかに区分される、製品ポジショニングがあるものだが、経営資源を分散すると、その位置を確保し続けられなくなる。このため自社製品の背骨から矯正し、将来への筋道をつけていかなければならない。

〔製品群の拠るべき骨格は〕
 自社の製品フレームを有望市場向けにシフトする着眼点は、4つの道(ストリーム)があるのではなかろうか。その道こそは現在、自社製品が位置付けられているポジションから見渡すことができる。
 すなわち一方の着眼点は、経済の社会的分業における生産プロセスの上流(アップストリーム)と下流(ダウンストリーム)の二つの方向があるであろう。さらに傍流(サイドストリーム)にも市場と技術関係から二つの方向性が考えられる。


① 上流への指向

 これは文字通り、現在は社外から調達している部品、材料などを自家製品に切り替えるための新規開発で、組立型産業はもちろん素材産業でも、上流の採掘型産業へシフトする可能性は十分にある。
 しかしあくまでも、コストパフォーマンスあっての指向であり、むしろ特徴ある『機能性部品』や『希少素材』などの確保と安定供給を目的とすれば、その機会は必ずしも多くない。だがこの道が成功すれば、高付加価値生産が約束されることは、間違いないであろう。
② 下流への指向
 これは新たに現有製品の『付属品』や『周辺装置』『追加ソフト』などを開発し、市場占有率の向上と規模の拡大による総原価率の低減を狙う革新である。だからこの流れに沿う事例は、日常的に多く見かけるだけに、安易な指向は激しい競争に晒され、経営資源を消耗しかねないところでもある。
③ 傍流右サイドへ指向
 仮に右サイドは、従来から取引のある、または新規取引をねらう『販売ルート』の要請(ニーズ)に基づくのだが、あくまでも独自の確認情報を根拠にした新製品開発でなければならない。
 この狙いは『異分野参入』『新市場開拓』であり、ルートのニーズに基づく新市場シフトは比較的に易しい対策といえる。だが逆に、自社から販売ルートへの提案型アプローチの方が重要で、積極的なPR攻勢を展開すべきであろう。
④ 傍流左サイドへ指向
 得意とする自社技術を活かして『商品レパートリーを拡張』する流れを掴もうとする意図は、従来から存在した。しかしその指向は、市場ニーズを無視した独善的な『プロダクトアウト』の新製品開発に陥る恐れがある。だからむしろ独自判断で、市場ニーズに沿った『マーケットイン』を指向し、その新製品開発に必要な中核技術(コアテクノロジィ)を探索する流れを起こさなければならない。

〔ショートセラーを効率的に〕
 こうして製品フレームの指向性が確定されれば、全社的な目標への関心事が統合され、的確な情報をキャッチする機会も多くなり、僅かな経営資源を集中させて『低リスクの新製品開発』が期待できる。
 これからの経営は、開発製品のロングセラーが望めない成熟市場であっても、自社の製品フレームの方向性をしっかりと見極めていけば、数あるショートセラーを効率よく開発する革新によって、企業の永続性を望むことができよう。

第5回 経営革新のもとになる予測の手法(山﨑登志雄)

〔経営は無鉄砲に革新できない〕
 革新し続けなければ生き残れない、昨今の経営環境です。だのに某経営者に「経営革新計画の必要性」を説いたら「どうせ計画どおりにいかない」のだから「そんなものは必要ない」と言われたことがあります。
 ご自分の「経営革新を進める力量」には、十分な自信がおありなのでしょう。が、計画という指針なくして「革新できた」か「できなかった」か、本当に革新力が「ある」のか「ない」のか、どうして分かるのですか。
 会社の経営に限らず人間の行動は、すべて「将来に向かって暗中模索」するのですから「どうせ思うようにいかない」のが当たり前だといえます。ですから「思うべきこと」つまり「目指す方向」を「計画の形式」で明らかにして、意識的に「思うよう」にいかせる能力こそが、本当の革新力というものです。
 ものづくり事業は、他の産業に比べて比較的大きな『設備』を抱え、長年培った『技術』を以て経営しています。そこで無計画な成り行き任せの経営で、上手く「ことが運べる」はずもありません。
 “ものづくり”は長期間にわたって、固有の『新製品開発』や『調達』『生産』『販売』などの諸活動を積み上げ、それらを総合して付加価値を生む事業です。いわば「大きな図体」をして「長距離を長時間」駆けっこしているようなものですから、駆けだす前に目的地をしっかり「見極めて」いないと、とんでもないところで歯車が狂い「ばったり」いきかねません。
 人間の行動の目標であり、指針でもある『計画』というものは、未知の「将来に向かって立てられる」ということです。行動の「行き着く先」の状態は、不透明ながらも『予測』して『目標』や『指針』が『経営革新計画』として、はじめて描けるわけです。

〔先人の知恵が詰まった予測技法〕
 予測技法といえば、過去のデータを基にした時系列分析が浮かびます。つまり統計学上の『最小二乗法』、『指数平滑法』、『移動平均法』、『相関係数法』、『連環比率法』及びこれらの混合法などの計数分析の結果を回帰式に表して「将来の姿」を予測します。コンピューを駆使した『多変量解析』のような、難しい予測技法を説く人もいます。
 たしかに計数分析には客観性があるのですが、難しい技法を駆使したからといって「予測の確度」があがる保障はありません。経営実務では、数値化できない事象のほうが多いのですから、むしろ『デルファイ法』のような計数分析以外の技法をミックスすることが大切です。
 デルファイ法というのは、主観的なある予測対象を設定し、複数の専門家にアンケート方式などで、第一次の予測をしてもらい、その集計結果をバラツキのあるデータのまま、再び回答者に示します。そして再度予測してもらうわけですが、この作業を繰り返し、データのバラツキが「これ以上縮まらない」段階で最終的な予測結果を得る技法です。
 まことに手間のかかる技法のようですが、この原理はアイディア開発のブレーンストーミングの「三人寄れば文殊の知恵」に通じます。要するに将来の状況は、より多くの人々の「情報」と「知恵」を終結して予測しようということです。
 ものづくり企業の社内には、自社の仕事に最も関心を寄せて「情報収集」し、真面目に「将来を心配」している専門家が多くいます。またコンサルタントなど、社外専門家の意見を聴取する手立てもあります。いかに有能なワンマン社長でも、専門家の見解を活かせずに的確な予測ができるわけがないのです。

〔トップが判断しなければ〕
 いろいろな情報や、将来に対する見解が錯綜すると、どれを「根拠」にすればよいか迷うだけかも知れません。それは予測が、経営革新計画を立てためのプロセスの一端に過ぎないからです。
 将来を見極め「どの方向へ」「どのように」進めばよいかは、社長が決断しなければなりません。ただ判断の根拠となる予測には、どうしても勘(K)と度胸(D)と運(U)によって適否が決まるというやっかいな問題が残ります。
 どんな手法を用いた予測であっても、最終的に「人の判断によって選択」されなければなりません。ですから「科学的背景をもつ勘(K)」に頼って「大胆な度胸(D)」を発揮しなければ、会社を経営革新に導く計画にはなりません。
 計画遂行の過程には、思わぬ特需に恵まれたり、自然災害のような予期せぬアクシデントに襲われたり「運(U)の善し悪し」がつきものです。予測手法としてはその事態に際し、如何に「対処するか」が大切になってきます。
 決断には勘(K)をはたらかせるといっても、安易な山勘に大切な経営革新を委ねるわけにきません。反面いつまでもぐずぐずして、意志決定する度胸(D)がなければ、革新計画は策定できず、P-D-C-Aサイクルが始動しません。したがって次の図に示すような、予測技法をミックスして経営革新の成功度をあげていくよりほかにないのです

成功する企業はベストコストをつくり込む(52最終回)

『おわり』に代えて

 約4年間に亘ってご愛読いただいたこのコラムは、第51回をもって連載を終了しましたが長すぎて、本文の右欄にある月別アーカイブだけでは、個々の掲載内容が検索できなくなりました。今回は、掲載日とは逆順に『章』と『節』の目次と『掲載年月日』を掲載し、月別アーカイブから掲載年月日をクリックしていただければ、ご関心の項目が見つかるようにしました。これを以て、ご愛読の御礼とさせていただきます。

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成功する企業はベストコストをつくり込む(51)

7.ベストコストづくりを考える

7-10 コスト・コーディネーターの役割

● 社内の仕事も三権分離
 コストデザイン過程を順調に進めるには、それなりの仕掛けが必要です。その第一は、関連する規程の制定やコストレビューのための諸々の『書式を制定』することです。第二にはそれらの仕組みが、現業者の間に『制度として定着』することです。
 これを逆にいえば「仕掛けを終わり」「仕組みを整備して実行する」ことによってこの制度が完全に導入されたといえるのです。かといって『CR実施規程』だとか『CR運営要領』『コスト評価基準』『目標原価設定ガイドライン』等々の社内法規の整備が、コストデザイン過程が『進行できる保証』にはなりません。
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事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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