ものづくり事業部

新商品開発 第1章 商品企画 1、2

成功する企業には新商品開発がある

1.新商品・新サービスは企画から - 新商品をものにする土壌づくり -
1-1.企画は思考なのか行為なのか

〔企画と計画はどう違う〕

 いったいどうすれば、新商品開発や新サービスの『考案が実現』するか。効率的な新商品開発のプロセスがあるはずです。その鍵を解くことこそ、まさに新商品企画を理解することにほかなりません。
 では企画とは、どういった概念で捉えればよいのでしょうか。しかし意外と、これがわかりません。そこでまず企画は、よく混同される計画と比較しながら、その概念を追ってみることにしましよう。

● 企画は、その文字が示すとおり『くわだて』です。わたしの好きな落語調でいうと、「よっ!何か面白れぇことはねぇか」ときます。ここで「何か」が企画の始まりです。
 女性落語家の生い立ちを描いたNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』ではないが、面白いことをするために「それじゃあ、愛宕山に繰り出して花見といこう や」となります。「愛宕山と花見」というように目的が明確になり、「繰り出す」ことによって目的を果たす方法までが企てられるのです。
 『くわだて』は「このようにしたい」という人間の意志を、意図的に実現するためになされる『基本的な思考』です。面白いことをするには、あえて「何々したい」といった『くわだて』がなくては、目的が達成できません。

● 計画は、これも文字が示すとおり『はかりごと』です。上の例を受ければ「それじゃあ、4月5日の明け六つに 長屋の木戸に集まって」、「今月の月番がそれぞれ2文ずつ集め」る。そして「熊さんは酒を、八っつぁんはお重を仕立てて」とばかり、スケジュール、予算、 役割分担など『目的達成の手段』を手にし、目的達成のための『行為と手順』の具体的な予定を『はかる』のです。

● 計画の思考対象である「何を計るか」は、企画の『意図を具体化』することにあります。企画を実現させるため「このようにしようではないか」というように、企画の意図するところへ向けた、やり方、進め方の「道筋を立てる」のが計画です。
 当然、企画には無から有を生み出す創造性があり、計画には与えられた要件の中に制約された実現性が『それぞれの主体』となります。
 ここで言いたい商品・サービスを創造する企画と、商品・サービスを取得する計画の相互関係は、図表1-1のような体系になるでしょう。

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〔企画の機能を考える〕
 会社の中では商品企画のほかに図表1-2に示すような、いろいろの企画を立てます。が、これらの企画は、共通して次の三つの機能をもっています。

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● 創造性機能
 企画は『考え方』を指しているのですから、決して姿・形のあるものをつくりだすわけではありません。人間が「これから始めようとする行為」を創出するわけです。
 『ものの考え方』や『人々の行為』は、もともと価値をもっていましたが、情報化社会に至って姿・形のない『考え方や行為』が大変な価値として評価されるようになりました。
古くから、人々の生活を豊かにするための人の行為、つまりサービスは一定の経済価値を有していたので、サービスがビジネスの対象になってきました。
 しかし情報化社会に至り、新しい価値を産むようになった典型は、コンピユータのソフトウエアです。さらに今後は、ものごとの考え方の価値自体が、ますます上がっていくはずです。また『経済のソフト化・サービス化』傾向が、これに拍車をかけることになるでしょう。
 現にイベント・プログラムなど『企画の創造性』は計画や実施と切り離され、考え方のみが単独で特定の分野において取引されるようになっています。それを意図的に創造し、実務的に実施できるようにすれば『成功する企業の新サービス開発』になるはずです。

● 予測機能
 企画の創造性は、未来の『未知な事象』に向かって発揮されるのですから、未来の姿・状態を予測しないと企画が成立しません。予測は、過去のデータと現在の状況把握を前提にしています。
 つまり予測は、諸情報を駆使して成り立つため、企画はすなわち情報収集だと勘違いする向きさえあります。が、ともかく企画によって、人間は未来に向かって『挑戦的な行動』を起こします。

● 統合調整機能
 企画は『複数の人間』が、一致した特定の目的を『組織的に遂行』するためにも必要です。ある企画のもとに、複数の人々が演出され、行動して目的を達成していくのです。
 したがって企画が、複数の人々の『考え方を調整』し、組織を『統合した行為』を引き出していくことになります。
 考え方の違った組織構成員が、企画を承認する形式で統合され、企画の実行に参加します。参加者は、企画を通じて相互に調整されているわけです。
 企画の有するそれぞれの機能には、図表1-3のような相互の関連があるものです。

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1-2.なにを指して新商品

〔よいモノをつくる会社〕

● モノを産む
 企業は社会の需要を満たす物資やサービス、これを一括して『モノ』と称すれば、それを生産つまり『産み出す』ところです。ですからどこの会社も、社会に必要とされ、受け入れられるところに『社会的な存在意義』があります。
 一方、真の需要を満たせる物資やサービスは、当然売れます。結果として、売れるモノが供給できる企業・会社には、利益がもたらされる道理です。

● 業績のよい会社と悪い会社
 ところが経済社会には、まず『業種間格差』という現実があって、実態では景況のよい業種と悪い業種に別れてきます。必然的に好況業種だけに「健康優良児といわれる会社」がいるように思われがちです。
 しかし成功する企業と、そうでない企業は、業種にかかわりなく存在するものです。業種間格差のもう一方では『企業間格差』が存在するからです。このほうの格差は、売れるモノをつくれるか否かで決まります。

● 売れる要素
 ところで『よいモノ』は売れます。では『よいモノ』は社会の需要、つまり市場のニーズを満たすだけでいいのでしょうか。会社側から見れば、売れなければ『よいモノ』とはいえません。
 社会的に貢献できる有用物資なら、生産すれば確実に売れるとは限りません。会社の方では、自社の提供商品が社会に貢献でき、かつ、市場に受け入れられると、勝手に決め込んでいるかもしれないのです。
 したがって図表1-4のような、売れる要素を盛り込んだ商品に造り込み、創り上げていかねばなりません。

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〔新商品でよいモノやよいコトを〕

● 相対的によいモノ
 当然、他社の商品に対して『使用価値と販売価格の比』が大きいことが、よいモノの基本となるのは、交換経済の始まった「太古の昔から不変」です。その意 味から使用価値は、『絶対価値』であるはずです。が、現実的には使用者の観念的な個人差によって、競争商品相互間の『相対価値』とならざるをえません。
 その太古の昔は、物資というハードウエアが万能の時代です。が、近代市場ではソフトウエア、ヒューマンウエアさらには情報やサービスが、産業化する時代です。商品の使用価値の中に、使用したうえでの満足感がより強く求められるというわけです。

● お客様にとってよいモノ
 CS(Customer Satisfaction)といわれている消費者や最終ユーザーの満足感は、多分に買い手側の主観によって形成されるものです。成熟市場の商品は、ますま す多様化を進展させなければ、よい商品になりません。が、いかに成熟市場であっても、多種多様な欲求と、それぞれに違った満足感はあります。
 したがって中小企業だろうが、零細企業だろうが、企業規模に適合したよいものを供給する機会は、無限にあるというものです。
 また新商品が売れていくには、顧客がその存在を『認知』することが前提です。売り手側からは、予想される買い手に対し、商品の存在情報を発信しなければ なりません。このとき、商品自体に新規性、話題性などが情報として盛り込まれていれば、商品自体が『売れてゆく力』をもってくることになります。
 その新商品には、図表1-5のような類別があります。

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この節でのコメント
 世のトップ族は新商品開発というと、すぐに「世の中にない」完全新製品を期待したがるが、むしろこれはヒットしにくい商品と心得るべき。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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