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成功する企業はベストコストをつくり込む(4)

1.コストは人によってつくられる

1-4 コストの性質を見極める

● 企業コストと消費コストや社会コストとの違い
 家庭サービスのためのお父さんの支出は、お父さんにとっては「痛手な出費」でしょう。が、家庭サービスは「他人に販売されない」ものですから、経営活動として行う『コストダウンの対象』ではありません。
 お父さんは「愛情発揮のため」に消費コストが必要ですし、地域社会は名所、旧跡の「美しさを維持」し「周辺環境を整備」するために、やはり社会コストが必要です。これらのコストも、元は『個人所得』ですし『税金』ですから、できるだけ節約し、値引きを期待する心情や事情は同じです。

 個人や公的機間の節約や低減の行動基準は、コスト・パフォーマンスというか「掛けた金額に匹敵する満足感」や、社会の「安全性・快適性の維持」であるわけです。ですから利益行為であるコストダウンと、節約心や節制行為は、まったく違った性質をもっているわけです。
 表現は不適切でしょうが、企業は己の有する経営資源を「コストの形で切り売り」しながら生存し、かつ成長していくのです。まるで自身のストックを食って生きる蛸のような表現です。が、企業は蛸の逆で、付加価値というストックを増やしながら、生きています。ですから赤字なのにストックを吐き出す、いわゆる「蛸配当は法律で禁じられている」というわけです。

● 実体あるコストと情報としてのコスト
 会社の経営目的に転換される『正味のコスト』は、実体原価と呼びます。これは呼称のとおり、原材料の購入費や労働賃金のように、商品をつくったり、売ったりするために「10万円を要した」とすれば、そのコストそのものです。会社を維持するために支出される間接原価のような資金でも、実体のあるコストになります。

 それに対し、帳面のうえに『原価10万円』と記入されるコストは、数字に示されたいわば「実体原価の陰」に過ぎないコストです。経営活動において投入された、総ての経済価値をコストとして「単純に写しただけ」ですから、このように計算されたコストのことを情報原価と呼ぶのです。図表1―6がそのイメージです。

   情報原価は、実体原価のコピーですが、コピーがとれるのはコストが「計算できる経済価値」である証拠です。ですから、直接原価も間接原価も『計算できるコスト』は実体原価であり、経済価値のすべてが『コストダウンのターゲット』になるわけです。
 もちろんコストダウン活動は、『実体原価そのものにはたらきかけ』なければ「ダウンするはずがない」のです。さらに、消費または投入された財貨と用役は、計算することができても、計算した『後で取り返し』て「ダウンさせることは不可能」です。

● コストダウンは未来形と現在進行形
 投入「される価値」ないしは、投入「されようとする価値」に対し、経営活動の事前または進行中にはたらきかけなければ、コストダウンはできません。まさにコストダウン・ターゲットは、いま『発生しつつある実体コスト』そのものです。

 つまり現在進行形か未来形のコストでなければ、コストダウン対象ではないのです。が、逆に原価計算業務では過去形のコストでなければ、計算の対象になりません。ですから「情報原価はコストダウン・ターゲットでない」ということです。
 情報原価の扱いについては、会計上のいろいろな取り決めがあります。が、コストダウンは会計分野の課題ではないので、原価の会計的な扱いなど、どうでもいいように感じなくもありません。つまり過去の結果と未来へ向かう対象では、活動分野が違うのです。
 しかし原価計算しないと「以前のコストがいくら」で、それが「いくらになった」かがわかりません。原価の状況が把握できなければ、コストダウン活動の利益効果がわからないのです。それを知るのが、原価計算の『羅針盤的な役割』ですから、コストダウン活動には原価計算が絶対に『不可欠なツール』だというわけです。

● 原価計算の役割はまだある
 また原価管理の視点からみれば、原価計算という仕事は、発生した原価を「集計するだけ」では済みません。決算会計の機能をもつ原価計算は、会社が「どれほどの利益を生んだか」「現在どれほどの資産があるか」を知るために、実体原価の正確なコピーが求められます。

 しかし会社が「今どんな状態になっているか」を知る管理会計の機能では『正確性』よりも、むしろ『迅速性』をもって情報原価を把握することが望まれます。
 原価計算の業務は『コストダウンの羅針盤』となり、またコストテーブルの作成などに『情報提供』する重要な管理会計機能を果たします。が、業務自体は会計学的な約束ごとの処置によって進められます。
 ですから、そんな約束ごとにかかわりのない現場技術者などは、原価計算のことを「非生産的で面倒な業務」だと思うのが正直な感想です。
 また筆者の経験から、この話しをもう少し脱線させると、原価計算の結果が「日常のコストダウン努力を惑わすような」ところがあるので後日、項を改めて解説を加えましょう。

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ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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