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成功する企業はベストコストをつくり込む(13)

3.間接費低減の手法を考える

3-3.雑務、雑用を知的にするに

● ムダ飯を食っているのは誰だ
 間接コスト、とりわけ『ムダな業務』の議論で思い浮かぶのは、雑務雑用の存在でしょう。あるとき、筆者が行った『間接費低減活動』でのヒヤリング調査でも「雑用が多い」という声が、圧倒的多数の現場の声でした。これはおそらく現在でも、どんな会社の人に聞いても、ほぼ『同じ答え』になるではないでしょうか。
 しかし「雑務や雑用とはどんな仕事か」と反問すれば、意外と指摘できないのです。が、あえて「雑用だと訴える仕事」を整理してみると、ほとんどの人がルーチン・ワーク以外の仕事を挙げます。それは主として『会議』『打ち合わせ』『電話対応』など、コミュニケーション系の仕事です。 本来『意志決定の場』であるはずの会議をコミュニケーションとは、おかしな言い分かもしれません。が、アンケートの中に「忙しくなると会議がなくなる」という、おもしろい回答を発見したものです。
 だとすると、会議時間を圧縮するための『会議原則』とか『会議推進要領などの規制を設けて「ムダな会議をなくす」などという、難しい低減策を考えることはありません。要は『本来の業務』を重くし、それから外れた『ムダな業務』を軽くすれば、必然的にカンセツコスト低減になっていくのです。まともな『用の無い』いわば余剰人員だけが、忙しそうに『会議というムダ飯』を食っていればよいのです。

● 雑用業務の実態はどうだ
 あるとき「電話交換機の入れ換え」に必要な資料として、図表3-3のような調査をしたことがあります。モニターになってくれた人々には、相当に面倒な「間接工数をとらせ」ましたが『電話対応』という、いわゆる雑用業務の中身を知るうえで、貴重な調査結果を得たものです。
 調査は「作業票を書かない人」つまり間接要員である管理職をモニターにしたため、Cグループなどは所定内労働時間の4分の1近くも電話にかじりついています。また各グループとも、電話に拘束されている時間の半分以上は「技術的な問い合わせ」に対応していることが分かりました。
 昨今ならさしずめ、Eメールで「目が悪くなる」とでるかもしれませんが、こんなに電話しているのでは「耳の皮が剥げる」のではないかと心配したものです。
 それはともかく業務の4分の1くらいの時間は、せめて見積依頼など『商談に結び付く』内容に答えていたいところです。それなら電話応対は、雑用ではなく本業です。
 もちろん「電話の上手な受け方、かけ方」のように、雑用消化のスキルを向上させる方法自体は、確実に『間接コストをダウン』させる絶対的な方策です。電話のかけ方の良し悪しで、この種の雑用時間は大幅に短縮できます。が、NTTなどが準備している『一般的なマニュアル』だけでは、大幅短縮にならないでしょう。
 なぜなら「電話の上手な受け方、かけ方」は、各自が担当分野の『職務に精通する』ことが大前提になっているからです。つまりこの種の雑用解消法は明らかに、この大前提なくして一般的な『要領上手』ではないのです。
 ただコミュニケーション系に限らず、職務に精通していれば、仕事が早くなるのは万全の真理です。ところが、この当然が容易にできません。だから「間接人員は何名削減せよ」といったような、強引な業務命令がでるのもうなずけるというものです。

● 新しい付加価値の仕込み
 人件費が大部分の間接コストが「徐々に増加する」のは、会社の活動が高度化して知的業務を増加させるからだともいえます。トップの意志決定を支援する『企画』部門や『開発』『生産技術門』『生産管理』部門などは、『生産』『製造』部門などの直接部門からみれば『雑用部門』のように思えるかもしれません。

 しかし単に、会社が「大きくなる」からではなく、会社の「高度化に伴って」こんな業務が、これからも拡大を続けていくでしょう。これは『企画』とか『管理』といった名称のついた部門のことではなく、そういった経営機能つまり『仕事の内容』をいうのです。
 このような『間接部門の機能』を知的業務と総称すれば、会社はその増加によってより新しい付加価値を産出していくのです。ですから、同じ間接コストでありながら『企業内サービス』の低下は我慢できても、知的業務を我慢すると「会社の成長が止まる」ことになりかねないということです。
 販売員や直接作業員が生みだす『現在の付加価値』は、計算式に基づいて「金額で把握する」ことができます。いわば「現金取引みたい」なものですが、知的業務が産出する『将来の付加価値』は、容易に計算できない「手形取引みたい」なもので、現在価値によって評価することが難しいだけのことです。

● リスクをどこで負うか
 どんな商売でも、不況で「金回りが悪い」から『掛売り』や『手形取引』はしていられないというのでは、取引の拡大が望めません。むしろ不況だからこそ、決済は先になっても掛売りや手形取引という『信用供与』のリスクを負って取引を拡大ないしは維持していこうとします。

 もちろんそのためには、的確な資金の『遣り繰り』をしなければ、今度は自分の経営がもちません。ですが、こうして売上高の維持・増強に努めるのが、どこの会社でもやる機会利益の増強策というもので、売上増強によって「リスク負担を軽減」させていくのです。
 もっとも成長どころか、今は「会社を維持するのが精一杯」だから、どの部門も「聖域におくわけにいかない」といった事情があるでしょう。たしかにベストコスト追求のためなら、どの部門も聖域におく必要はありません。利益を直接生み出す『開発』や『販売』部門だけが、甘やかされるわけにはいかないのです。
 ここで機会というのは、文字通り『チャンス』のことです。すなわち、好機を「捉えて生み出す利益」や「捉え損ねる損失、裏返せば原価」を指しているのです。
 会社を将来ともに維持するために、どうしても必要な知的業務のことですから、どんな経済情勢であっても、最小限の間接機能は維持し、少数精鋭体制を貫くことこそ「リストラ時代の間接費圧縮」だということです。
 ではその道はとなると、各部門別に機会原価を低減させるか、機会利益を増大させることです。基本的には『コストの投入量』と、将来的な『付加価値の量』との比較で考えます。つまり「同じ投入量で、より高い付加価値」をあげるか、または期待が「同じ付加価値ならより少ない投入量」で経営することです。
 要するに OUTPUT/INPUT の比率、すなわち入出力比を上げることが「知的業務のコストダウン」だと言いたいのです。その原理は、後で述べる『VAの考え方』と同じです。

3-4.知的支援ツールとスキルの向上策

● 投入コスト圧縮より成果の拡大を
 研究開発分野の『CAD』や『試験装置』など、また意思決定業務を支援する『情報関連機器』や『関連システム』など知的業務を高度化し、効率アップを狙う設備がいろいろあります。

 このような設備や教育などへの支出は、まぎれもなく間接コストに計上される資金投入です。しかしこれを単純にいえば、間接コストの投入は『仕事を減らすため』になされることは、直接業務単純間接業務の場合と変わりません。
 ですが『機械化』や『スキル・アップ』などによるコストダウン手法は、入・出力関係でいえば人件費という「インプットを小さく」する対策に違いないのです。だけど知的業務は、付加価値を上げる「人間にしかできない使命」をもっているのです。ですから「人を減らす」つまり『インプットを圧縮』するより、むしろ『アウトプットを拡大』する対策を考えなければなりません。
 生産業務では、出力を大きくすれば『つくり過ぎ』の弊害が生じます。が、知的業務では、無限の『価値増殖が期待』できるのです。つまりそこには『つくり過ぎ』がないのですから、インプットが多少上がっても、それに『倍するアウトプット』を得ることこそが、本領というものです。

● 産業教育は全方位体系
 知的業務の従事者の能力を高め、そこから『創造性豊かな産出物』を得ることが、機会利益アップであり、ひいては機会原価のダウンにつながるというわけです。となると基本的な対策は、まず要員教育です。

 産業教育の体系は、図表3-4に示すとおりです。図表の上部に『技能の習得』として、『O・J・T on-the-job training』など、「仕事をなくす要員教育」も体系づけられています。

しかし下部の『態度の変容』や『問題解決能力』は、知的業務に従事する要員の「能力を高める教育」方法もあります。図表3-5に示す事例がそうであって、これも体系のなかにちゃんと挙げられているのです。
● 知的業務は高さの勝負
 産業教育に関する経営上の留意点として、筆者は「知的業務こそは英才教育でなければ非効率だ」と考えています。つまり市場における企業間競争は、人材の能力に関して図表3-6のような構造で成り立ちます。

 知的業務の頂点の「高さが、競争の結果」を制するのであって、決して全体の「面積が勝負を決める」のではないのです。たとえば『新商品開発』は、多くのドングリが「背比べしながら開発」するよりも、少数の精鋭が開発した商品のほうがよくヒットを飛ばします。
 しかし反面では『提案制度』のような、多くの参加者が「知恵を出し合って」高いコストダウン効果をみせる改善提案もあります。
 ですから知的業務の教育は、英才教育が「入・出力関係を改善」するのです。が、一方で全社員の職務能力は、TQC活動などによって全体を均等に向上させる投入が、高品質を維持する『生産力のベース』になっているのも現実です。これを総合したのが、ベストコスト実現のための教育コストの投入だということです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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