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成功する企業はベストコストをつくり込む(27)

5.VA・VEの王道を探る 

5-7.ワークシートを活用しよう 

● VAの両輪を構成するワークシート
 ワークシート(Work Sheet)は仕事を確実に行ったり、仕事の記録を残したりするひとつの方法ですから、コストテーブルと並ぶもうひとつのVAツールといえます。もちろんワークシートはVAに限らず、サービス産業や一般事務などいろいろな業務でもそれぞれの形式で使われるツールの総称です。
 VAによる改善アイデアは、どんなところから芽生えるかわからないので、開発にあたっては落ちのないように、また注目すべき事項を忘れないために役立てます。ですから予め必要項目すべてを網羅したシートを準備しておこうというわけです。
 VAではコスト要素の総てにわたって、価値分析のローラー作戦が仕掛けられます。しかし縦横にローラーをかけていると、手数がかかる反面、かけ忘れによる機会損失も起こります。その防止策としてVAには、縦軸に『分析作業のためのワークシート』があり、横軸に『網羅性あるコストテーブル』が必要になるわけです。
 全体的にワークシートは、あたかも検査要領書という一種の作業標準が簡易化された『シート』と、記録に残る試験成績書が『リスト』の形で一体をなすようなものです。ですからVAワークシートの作成にあたっては、チェックポイントを見落とさないために、たとえば図表5-18に8項目を例示したようなポイントを検討します。

 これをみればお分かりのように、このチェック項目は『図表5-2マイルズさんのVAスピリッツ体系(13.05.25掲載)』をヒントに構成しています。 

● VAチェックリスト制作上の難しさ
 ワークシートには、いろいろな種類があるでしょうが、まずチェックリストとチェックシートの2種類は不可欠のシートです。
 チェックリストは、各種の作業標準と同じように「未熟練者に作業訓練を与えるとき」や、ベテランでも項目の漏れが生じないよう「ポカよけが必要なとき」などにはたらきます。
 さらにチェックシートが、チェックリストと関連性をもって独立したシート状になっていると、価値分析業務に記録性をもたらせます。ですからISOの品質保証体制にも組み込めるし、PL(製造物責任)のトレーサビリティーにも役立ちます。
 よく、技術指導書などにも載っているこの種のサンプルは、どうも実務的なものになりません。その理由は、図表5-19のように整理できるでしょう。
       つまり一言でいえば、どんな業種・業態にも適合するようにつくるのが難しいということです。が、この中のコメントは筆者が、あれこれとワークシートを試作してみた結果ですから、これからつくられるときの留意点になるはずです。
 ただ、どんなに制作が難しくても、やはりチェックリストのような『社内固有のツール』がないとVA業務の作業効率が悪く、機会損失を招く可能性もあるわけです。ですからどんな方法や形式であっても自社に適したガイドが、VAローラー作戦には欲しいのです。要するに『手づくりシート』は、独自につくっておくべきだということです。 

● VA三つの切り口からチェックリスト
 どこにでも使えるワークシートは難しいといいながら、ここまできたら厚かましくも、図表5-20のような、チェックリストを提案してみようというわけです。



 この提案のポイントは、先に述べたVA三つの切り口を『大項目』にしたことです。三つの区分の中ではVA対象を『中項目』にし、現状をどのように方向づけるかで『小項目』を整理してみました。このように区分しておくと、大項目に沿った課題によって、VA業務へは『専門分野別に分けて』参加させることができます。
 また参加者は変わらなくても、実施日を変えればVA対象の目先が変わります。VAの焦点は、できるだけ狭い範囲に絞り込み、集中力が持続できる範囲内でマンネリを排除しようというわけです。
 それにしてもローラーをかけるとなると、チェック項目が多くあるものです。いや実は、もっと多くあったのですが、この点だけは押さえておきたいと思う、チェックポイントだけに止どめました。あとは『その他』という形式で逃げましたが、分析作業では最小限これらの項目をチェックしておきたいものです。 

● チェックリストに対応するチェックシート
 チェックシートは、いわば『見落し防止表』ですから、項目をいろいろと解釈するよりも、ドキュメントつまり『事実の記録』としての機能を考えるほうが大切です。そのため、図表5-21に示すチェックシートをチェックリストとは「別に設定」しました。

 ベストコストを目指した『アイデア開発』の過程では、VAを行いつつチェックリストに直接チェック印を付けてもいいのですが、用紙節減の意味だけでなく、保管するのにかさ張らないように別のシートにしたわけです。
 こうしておけば、たしかに『チェックした証拠』は残せますが、この記録だけでは「ただ、やったよ」で終ってしまいます。したがって次のVE段階に、確実につなげるための記録も必要になってきます。
 この事例では、VA検討会が9月15日に5名で行われています。対象は『BB-33の機能ブロック』という半製品で『1.生産対象』と『2.生産手段の一部』でした。
 当日実施されなかった『3.生産方法』については、専門の関係者がいなかったのか、時間的に余裕がなかったのでしょう。この半製品が使われる親機との総合的なVA検討会は「後日実施してくれ」といった具合に、チェックシートに記録が残せるというわけです。 

● チェックシートでVEにつなぐ
 そこで次は図表5-22のような、報告書用紙を準備してVA結果を『開発』とか『設計』『生産技術』など、VE(Value Engineering)の実施部門に通知します。

 VA結果報告書には、VAチェックシートが添付されます。報告書はVEへのアイデア提案もしくは改善のヒントを提言しているようなものです。ですからチェックシートにある縦軸と横軸のチェックポイントは、空白になっている部分を省略し、改善案だけが箇条書きでまとめていればよいでしょう。
 チェックシートのコメント欄や、報告書の一項目に書ききれないアイデアの細かいニュアンスなどは、別紙を添付します。が、後日の実施状況のチェックにも使えるよう一枚にまとめたいのです。
 報告書はVA責任者が、VEのできる部門に改善の実施を「お願いする」形式をとっています。が、ただお願いするだけでは「その内にやっておこう」となるかもしれません。ですからVA責任者には、業務として執行命令がだせる権限を委譲しておくような処置が、あらかじめ社内規定などで決めておくのがいいでしょう。
 ベストコストを目指すVAのコストダウン効果は、VEの内容によって時間差がでます。また同じ内容であっても、時間の経過による技術進歩がコストダウン効果に、新しい展開をもたらせます。
 つまり過去の記録、VAドキュメント類が、永遠のコストダウン活動を繋いでいくことになるのです。ですからVA発案者が「自らVEを実施する」といったような中小企業においても、VAワークシート類は必ず作成しておかねばなりません。

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