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成功する企業はベストコストをつくり込む(37)

6.コストはデザインできるか

6-4 要求品質が見えないかぎり

● 市場品質で勝負する
 お客様に提供する商品やサービスの品質は、図表6-8に示すところの製造品質だけを指しているのではありません。たしかにお客様に供給される品質は、設計品質で定められた諸要件を実現する製造段階で形成された製造品質がベースであることに違いありません。
 しかし、商品に求められる品質は『顧客満足(customer satisfaction:CS)を要件』とした市場品質において、最終的に決まるものです。つまり商品の『供給品質』は『需要品質』への適合で、その良し悪しのすべてが確定するわけです。

 さらに商品やサービスの『良く』『優れ』『気高く』『美しい』という品質水準は、文字どおり品位という言葉で示される概念であろうと思います。が、これは「何に対比」されての優位性であるかといえば、明らかに『他社商品との比較』です。
 つまり商品やサービスの『機能品質』が、より優れていれば『品質が良く』『品位が高い』といえるわけです。また、評価や嗜好に個人差が強い、薬品や食品・手芸品・ファッションなどの商品では『官能品質』が『需要品質』の主体になることがあります。
 しかしより多くのユーザー消費者が、他社商品に比べてより多くの「満足を獲得」できければ、それだけでも『品質が良く』『品位が高い』商品といえるでしょう。 

● 創造性新製品の品質とは
 対比する「競合商品がない」という前提のもとでは、一定の品質水準と対応するコストの水準は「どんな品質を開発するか」という、新製品企画の段階に遡って考えなければなりません。が、新製品企画では「世の中にない新製品」つまり創造性新製品を考えろと、上層部から担当者にハッパをかけられることが、よくあるのかもしれません。
 ところが、企業の経営側からみたとき「世の中にない新製品」が、市場ニーズにマッチした『良い商品』であり『よく売れる商品』であるとは限りません。いくら世の中にない珍しい新商品でも、粗悪品であってはもちろん売れないでしょう。
 つまり製造品質は、品質以前に「それ自体が良くなければならない」という絶対性があって他社比較されるべき問題ではないのです。が、設計品質や市場品質は、他社商品との相対関係で「一番良い」商品を狙って設計することになります。ユーザーやお客様は、数ある商品の中で「これが一番良い」から買って行かれるのに違いないのです。
 創造性新製品は対比するもの、つまり「比較できる品質がない」のですから、会社に相当なマーケティング力があって、他社比較でなくても「これが一番良い」ことを知らしめないと、市場品質で勝負することができません。
 前回掲載の図表6-7の例で「世の中にない商品をお供えしました」といったところで、氏子たる『作り手』『売り手』の声が、神様である『お客様』まで届かないのです。いくら、他社にない市場品質を誇っても、神様の耳や目に止まらない商品は『お供え』つまり供給したことになりません。

● 新製品企画がスタート点
 新商品企画が他社よりも、もっと良い「どんなものを創るか」を決めるわけです。が、それが決まれば、次に「どのように造るか」という課題に取り組むことになります。つまり企画に基づく新製品開発が、供給されるべき『製造品質を確定』し、生産段階でその『品質を造りこむ』ことになるのです。
 コスト決定要因は「何を創るか」を課題とする新商品企画のウエイトが、大変大きくなるのです。が、製品の品質を造り込み、その中でベストコストを実現させるのは、それ以後の『生産工程に負う』のです。
 しかし「鉛から金を作れ」という、錬金術的な新商品企画は、実務の面でありえません。ですから最終的な市場品質を『創りだす』開発・設計部門は、新製品の品質目標が具体的に示されるか、独自に品質目標も企画しなければ、自身が開発業務に入れません。

● 適正コストの推測から
 創造性新製品の『商品企画』だけではないのですが、類似商品や周辺の関連商品を探してでも、目指すべき『品質のレベル』を具体的に示すことは大切です。開発部門たるものは、その新製品スペック(仕様書)の中で、ベストコストを模索していくのです。
 企画段階では『市場品質の素』になる神の声は、当然『営業部門』たる神主さんが、設計品質への要求水準を、明確にしなければなりません。ですが『明確』といっても、設計品質の『目標』は、世間水準との比較値において、およその新製品イメージだけでも示せばいいのです。
 狙うべき水準さえわかれば、開発・設計部門は十分に『お客様のご意向』を推測できるというわけです。つまり開発設計目標の仮説が立てられるのですから、このお告げたる『要求水準の明確化』によって、おぼろげながらでも適性コストのレベルがわかってきます。
 もちろんベストコストは適正コストより下のレベルにあるのです。が、適正コストのレベルが分かれば、それは確実にベストコスト追求のスタート点になるわけです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
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ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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