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成功する企業はベストコストをつくり込む(47)

7.ベストコストづくりを考える

7-6 ワーク・シートの記入例

● コストレビュー用のツール
 新製品開発の都度、実施しなければならないコストレビューすなわちCRには、予め書き込み可能なワーク・シートがあると、評価業務が効率的に運べます。つまり図表7-7のような、統一書式を制定しておくわけです。

 ワーク・シートの内容は、必ずやっておかなければならない事項が、網羅されていればそれでいいのです。
 CRの場で展開するブレーン・ストーミング(BS)などの『実施要領』や『思考の深め方』に慣れをつくるためには、いつも同じ書式のシートを用いるのがいいでしょう。いわばワーク・シートは、CRを進めるための道具(ツール)のひとつだということです。 

● 記入の要領はといえば
 さて、シートに記載しておくCR業務の必須事項です。これまで述べたようにCRは、製品企画の段階で想定した目標原価と開発対象製品の原価見積りを『比較して評価』する形式で進めます。ですから先ず、シートの書き方の要領が問われます。
 図表7-7の事例は、先に図表7-4(15.03.25掲載)で示した直接原価見積書の記入例を引用し、第一回目のCRを実施する形式にしています。したがって3.シート履歴には②項にレ印を付けています。
 4.添付資料の①項のコストテーブルには、見積書の『発行番号』を記入しています。それはこの見積書が、予め『全社適用のコストテーブル』から拾い上げた数値だからです。ですからCRの場に全社で共有する膨大なデータベースを「持ち出さなくてもすむ」わけです。
 そして5.目標原価です。当社では、図表7-3(15.02.22掲載)でいえば「マークアップ係数その二」を採用しているので、予定売価に【1-限界利益率】を掛けて『直接原価目標』としています。
 いずれも、ブランク・ボックスの中に書き込む書式なので、対象品名「○○用機構ブロックB―5」のマークアップ係数は、コストレビュー基準で44.7%(×0.477)に決まっているというわけです。

● 予定販売価格は辛めに設定
 目標原価というものは、ベストコストづくりの全過程を通じて参照すべき基準値になります。したがって新商品企画段階で設定する予定売価マークアップ係数は、開発の最後まで重要な位置付けになってきます。
 ただ予定売価は、あくまでも『仮の数値』であって、決して販売価格ではありません。実際の販売価格というものは、新製品を開発した後に発売する直前でマーケティング戦略的に決めるものです。
 それは売価決定が『新製品』から『新商品』に移行する商品化計画の、最重要にして最難関の一要素だからです。
 開発期間中に起る市場環境の変化次第では、発売価格が予定売価をさらに下回ってしまうことさえあります。したがって、コストレビューの基準となる予定売価は、多少『辛く設定』したおくのも一つのコツかもしれません。

● 利益計画に響くことを意識する
 中規模企業だと限界利益率を全社一律に設定すれば、部門間、製品間に矛盾が生じてきます。むしろ『事業部別』『製品別』などで、基準値は分けられるべきでしょう。
 ただし事業部別または製品別のマークアップ基準は、過去の実績値などを参考に『経営計画上』にきちっと定めて、社内の誰もが何時でも認識できるようにしておかねばなりません。その理由は『市場環境の変化』によって、利益計画に、いわゆるセールスミックスが作用してくるからです。
 つまり市場競争の相互関係によって、限界利益率を低く設定せざるをえない『事業部』や『製品』は売れるが、高い限界利益率がとれる『部門』や『製品』が売れなかったときです。当然このケースでは利益計画、すなわち経営計画が達成し難くなります。
 ですから、全社一律の限界利益率が設定できない『市場環境』や『企業』では、予めそんな事情を経営計画に組み込んで、マーケティング戦略を有功に運ばなければなりません。が、どんな場合でもベストコストのつくりこみは、全部門、全製品『共通の目標』であることに変わりはないのです。

● ベストコストはもっと低いレベルに
 見積原価が『用途別コストテーブル』だとすれば、今後のコストダウン・ターゲットがはっきりします。この事例では見積書が、しっかりと『ツリー式』のストラクチャ型にできていて部品材料費が、全直接コストの79.5%も占めているのです。ですから、先ず「部品材料費の圧縮を如何にすべきか」とばかり、重点主義の第一ターゲットが明確になるのです。
 しかも『特記事項の二番目』にあるように、これから設計を始める製造部品(内製部品)は、金額ベースで部品材料費の80%以上になりそうです。ですから今後、VAアイデアは製造部品に向けて徹底的に開発し、VE的改善を加えなければならないことがわかります。
 ここまでわかれば、原価差異は単純計算です。要するに、差異率はマイナス5.3%ですから、あと13,000円ばかりコストダウンを図れば、目標原価に到達する目処がつきました。
 しかしベストコストは、もっと『低いレベル』にあるはずですから、コストダウンの絶対性(’12.02.11掲載)をもって、これからも強力なVE活動を展開しなければなりません。

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ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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