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成功する企業はベストコストをつくり込む(49)

7.ベストコストづくりを考える

7-8 コストレビューの進め方

● レビューに用いるツール
 CRすなわちコストレビューは、図表7-6(’15.05.28掲載)に示したように、最少でも新製品開発の三段階に分けて行います。レビューに用いるツールいわば『道具立て』は、前の図表7-7(’15.06.18掲載)に示した『コストレビュー・シート』と、これから説明する『チェック・シート』の両立てです。
 レビュー・シートの方は一種類ですが、この履歴欄には「どの段階のCRであるか」にレ印を入れれば3通りに使えます。つまりCRの3段階で同じシートを用いることによって、レビュー対象の『目標原価』や『見積原価』『原価差異』が、CR段階別の過程を比較できることになります。
 しかしCR段階別にチェック・ポイントが異なるためチェック・シートは、CRの各段階によって使い分けるほうがいいでしょう。分けておけば、今やっているCRの位置付けも、参加者にはっきりと認識させられるわけです。
 図表7-8は、段階別チェック・シートの三例を『別々に』示しました。チェック・シートの記入例は、CR1とCR2、CR3の対象事例を連続させています。 

● 開発段階別のチェックシート
 さて、CR1とCR2、CR3それぞれの記入例です。チェック・シートは、項目別のチェック・リストにつけた番号と照合して、チェックした結果を箇条書きで右側の欄に記入するようにしています。

 これらのチェック・シートは備忘録的な記録機能を重視しているので、チェック結果の欄が狭い場合は、詳細な別紙を付けるようにします。チェック・シート自体は、整理し易いように項目ナンバーを振って、A4版1枚に収めて収納し易くするためです。
 CR1は最初のレビューですから、新製品コンセプトからチェックしていきます。コストは「品質についてくる」のですから、これが固まらないことには開発が始まらず、必然的にコスト構想も固まらないからです。
 『目標コスト』と『コスト構想』および『差異分析』については、レビュー・シートに記入できるようであれば、その内容確認を項目別に行うだけです。
 まだハード的な、現品が姿をみせない段階のCR1シートの事例では、VA予定日をCR実施日の翌日に分けて、実施する予定になっています。ともあれ絶対にVAは、具体的な開発設計に『執りかかる前』に行わなければなりません。

● レビュー結果の判定基準
 ここでのVAつまり価値分析は、コストの構成要素をできるだけ細分化し、その部分は「もっと安くあげる方法はないか」とばかり、新しい『価値を徹底追求』します。そして構成要素の各部分別に、できるだけ多くのコストダウン・アイデアを集めておいて、開発・設計業務に執りかかるのです。
 そこで今度はレビューの結果判定です。CR1までの工程では、基礎的な調査などで若干の開発工数を使っています。が、まだ本格的な開発費の投入はありません。だがCR1以後の段階からは『本格的な開発費の投入』に向けて次のステップを『踏み出す』のです。
 したがってこのレビュー判定は『差異分析が基準』になります。レビュー・シート上で今後、開発投資を行うか否かの意思決定の判断基準を決めておくのです。
 またこれと同様に「4.差異分析①目標コストと見積りコストの差」が、±何%くらいのレベル差なら『ステップを進行させるか』開発費投入額の規模別、つまり投入リスクの大きさ別などに分けて、あらかじめ判定基準を決めておくべきでしょう。
 この判定基準の有無にかかわらずレビュー責任者は、チェック・シートに記録した判定結果をもって、この新商品企画に承認を与えた『上層部に報告』しなければなりません。その結果、開発ステップが進むことになるわけです。

● 原価差異を埋める手立ては
 CR2は、コストレビューの中で最も重要な位置付けです。このチェック・シート上のポイントは、やはり差異分析です。が、この事例だと-2.3%の差異を埋める具体的なアイデアが、浮かんでくるかどうかが『判断の分かれ目』です。

 この事例では「4.差異分析④その他」にあるとおり、習熟効果にコストダウン効果を「期待する」向きもあります。しかし『判定コメント』では、習熟効果だけでこの差異を埋めるのは「難しい」と否定しています。
  にもかかわらず、判定が「次のステップに進める」ようになっているのは、CRと同日に実施したVAにおいて、習熟効果『以外のコストダウン・アイデア』が浮かんできたのでしょう。
 ただ、この段階のVAで大切なのは、外観デザインにかかわる評価が非常に重要です。特に成熟商品は、外観デザインが新製品の大きな差別化要素になるからです。普通に出回っている成熟商品をモデルチェンジして新製品とする場合など、DR(デザインレビュー)でも外観デザインが、最も注目されるところです。
 一方で外観デザインは『コストを固定』する大きな要素でもあるわけです。仮に外函成形用の金型製作などの大型投資がない場合でも、外観デザインは発売後の『VAが殆ど効かない』コスト要素に違いないのです。
 CR2では外観デザインという、官能品質は理性的にチェックしたいところです。しかし官能品質は、たとえば嗜好品』か『機能製品』や『性能製品』なのかといった製品別の特性があるため、チェック・シートの書式には定型的に示せません。ですから各チェック項目とも「その他」の項を自由に追加して、チェックするようにしています。

● ベストコストづくりの始まり、始まり
 最終のCR3の段階に至っては、もうコスト要素を『いじる』ことができません。ですから新製品の完成度をチェックし、ベストコストの実現に向けた『生産条件を確認』することが主目的になるわけです。
 つまりこれで、開発業務全体の『コストデザイン過程』そのものが評価されるのです。と同時に、これからがベストコストづくりの第一歩を踏み出すことになるわけです。


 この事例での判定は、2ヶ月くらいの準備期間をおいてから、第一歩を踏み出す『生産移行』されるべきだとしています。その期間が長いか否かは、企業固有の事情によるのでしょうが、いずれにせよベストコストを『つくりこむ』ための生産体制の準備は、十分に構築しなければなりません。
 なお、コストデザインに関する一連の『規定』や『基準』『シート類』は、開発過程の諸記録を含めて新製品のドキュメント類として文書管理されていかなければなりません。

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