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成功する企業はベストコストをつくり込む(51)

7.ベストコストづくりを考える

7-10 コスト・コーディネーターの役割

● 社内の仕事も三権分離
 コストデザイン過程を順調に進めるには、それなりの仕掛けが必要です。その第一は、関連する規程の制定やコストレビューのための諸々の『書式を制定』することです。第二にはそれらの仕組みが、現業者の間に『制度として定着』することです。
 これを逆にいえば「仕掛けを終わり」「仕組みを整備して実行する」ことによってこの制度が完全に導入されたといえるのです。かといって『CR実施規程』だとか『CR運営要領』『コスト評価基準』『目標原価設定ガイドライン』等々の社内法規の整備が、コストデザイン過程が『進行できる保証』にはなりません。
 どちらかといえばコストダウン業務は、現場の人々にあまり「好かれない作業」です。ですから多少は強制の伴う『立法』に対し、一方ではそれがどの程度守られているかをみる『司法』の存在も必要になるということです。
 だけどこれは、人員配置において役割の三権分立ができる大きな会社だけの話ではありません。中小零細企業にも、ここで『司法』に例えられる経営機能だけは絶対に必要だという話です。 

● P-D-C-Aサイクルの根拠
 コストデザイン『する人』は、開発・設計を担当する当事者です。したがってコストデザイン制度の、いわば『行政』ともいうべき部署は、初めから公式組織上に存在するわけです。ですからコストデザイン・プロセスの確立は、制度のために『立法』と『司法』を改めて整備することです。
 ただし立法の機能は『基本理念』や『進行手順』を決めたり『諸規定』を整備したりと、制度を確立するまでの一時的な処置ですむはずです。が、司法機能は立法機能と行政機能が継続するかぎり『継続的に存在』する処置でなければなりません。
 制度確立の問題提起や細部の具体的検討は、ボトムアップ由来でもトップダウン指示でもよいのです。が、トップは『制度の確立』つまり立法化への決断と『行政への執行』つまりコストデザイン業務実施の指令をださなければ、制度は始動しません。
 今後、新商品開発には「コストデザイン・プロセスを並行させよ」との、トップによる業務命令が『モノづくり部門全体』に下されるわけです。そして『司法機能』とは、トップによる指令の実施状況を監視し、現場の諸問題を裁くことです。この機能が加わってコストデザイン過程は、P-D-C-Aが回るというものです。

● 機能だけはいつも要る
 中小企業など、コストデザイン・プロセスを計画(P)し、開発部門の業務執行(D)状況をチェック(C)する専門のスタッフ要員が得られないケースはいっぱいあります。
 それならトップ自らが、自分で下した業務指示の実施状況をチェックしてもかまいません。が、ボトムつまり現業従業員に『責任』と『権限』を与えさえすれば、彼らが自分で『司法機能』を十分に果たします。
 大きな会社だと、管理部門が司法機能に当たるのが一般的でしょう。しかしいずれにせよ、行政機関をチェックする司法機能は、現場にとっては「うるさい存在」に違いありません。
  だのに開発経験のない管理部門の第三者が、強い権限をもったために「うるさがられる」のでは、現業部門と管理部門の間に抜き差しならない摩擦が生じるおそれがあります。さもなければチェック機能自体が、現場に無視されるかもしれません。
 したがって少なくとも立法が整備され、制度が普及するまでの何年間かは、現場事情がわかる人達でチームをつくり、司法機能を果たす方法もあります。この機能を果たすものこそ、コスト・コーディネーターだというわけで、その役割は図表7-10にまとめるとおりです。

     
● ラインとスタッフの責任のあり方

 本来、ここでいうコーディネーターの存在は、新商品開発に当たって市場に対する『品質とコスト』の供給水準をベストの状態に調整する機能を負います。が、コストデザイン制度が社内に普及するまでは、立場上スタッフたるコスト・コーディネーターが、この司法機能を果たすのがよいでしょう。
 コストデザイン自体の遂行責任(Responsibility)は、委員会などの集団に負わせるわけにいきません。集団責任体制は、「寄ってたかって」議論する工数の投入が、非効率なばかりではありません。経営機能的にもっと困るのは、当事者が一人当たりの「結果責任を薄くできる」と勘違いしがちの『おみこし体制』になることです。
 逆に、ライン上にいるコストダウンができる人々は『集団の英知』を集めるとか『複合技術の混成』など、集団で当たる方が『効率的』な場合が多いものです。しかしそれは、集団に全面的な結果責任(Accountability)を負うリーダーの存在があるからこそ、パワーになるのです。
 したがって現場の仕事を『横からコーディネート』するときは、リーダーを通じて行動しなければなりません。ラインの行政機能がリーダー個人であるのに対し、スタッフ的存在である『監査』や『統制』が集団であっては、責任の所在があいまいになってしまうということです。

● 会社全体のコーディネート

 では図表7-10の中に示した、コーディネーターの実務はどうかです。部門間では、営業部門と市場品質に適合した『コストづくり』を認識し合います。
 たとえば「風速50mの台風がきても大丈夫だから、この太さの柱を使った」といったような、技術的根拠を営業部門の人々が知っておく必要があります。
 それがなくて営業マンが「こんなみすぼらしい柱を使った家は、恥ずかしくて売れない」と思っていたのでは、ベストコストのつくりこみどころではありません。こんな状況では当然の結果として、商品が売れないのですから、これまでコストを掛けてきた『開発自体が失敗』に終わります。
 反面、開発・設計者は自分達がつくりあげた果実に、このような売価設定が「なぜなされた」のか、その事情を理解しておく必要があります。
 これらの相互理解は、お客様へのプレゼンテーションに必要なだけではありません。営業マン自身が、市場ニーズ競争条件の実態を知り、新商品に『求められる品質水準』を認識することに役立ちます。それがまた、次の『開発目標を具体化』するのにつながります。
 ですからコスト・コーディネーターは『営業情報を駆使』し、開発・設計者に『目標コストの必要性』を説き、開発・設計者をして、コストデザインへの『取り組みを動機づけ』するのです。
 しかしわが社には「そんな役を務める人材がいない」というケースがあるでしょう。であるならばトップ自身が、コーディネーターを務めればよいのです。トップにも、その余裕がなければ『制度が定着』して『ベストコストを実現』し、会社が『低コスト体質を築く』までは、社外コンサルタントなどの知恵をアウトソーシングすればよいのです。

                                                      全巻のおわり

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「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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