※なお、このコラムはあくまでも訴訟経験者である私個人の見解であり、法律の専門家としての見地には立っていないことを申し添えておきます。
1.事件の経緯
2020年末:予定されていた約300万円の支払いが履行されず、相手方とも連絡を取れない状態となりました。私は弁護士と対応方針について相談をし、まず「内容証明郵便」を送ることにしました。この時は、1) 業務委託契約の即時解除の連絡 2) 債務の即時弁済の督促 3) 債務の即時弁済が履行されない場合には法的措置を検討する、という内容を記したものでした。
この内容証明郵便は受領はされたものの、相手方からの反応はありませんでした。
2021年6月:事件発覚から半年が経過しました。この間、若干の支払いがありましたが、相変わらず連絡がつかない状態が続いていました。そこで、2度目の内容証明郵便を送付し話し合いの場を持ち対応方法について協議したい旨を通知しました。この通知書には、私の想いを記した手紙も添えました。徒に紛争を激化させることを望んでいるわけではなく穏便に解決策を見出したいこと、これまでの機会提供への感謝などを綴ったものでした。
2021年7月:その後、引き続き何の連絡もなく、弁護士からのメールへの反応も皆無でしたので、訴訟に踏み切りました。弁護士の提案により、訴訟を提起後、相手方に和解を提案しました。結果として、分割払いで債務を弁済する、という和解案を作成・合意して裁判は終了しました。
2022年1月以降:8月まで計画通り支払いがなされたものの、9月以降は履行されず約100万円の債務が未回収となったまま現在に至ります。この時点でも相手方と連絡がつかず、これ以降の回収を諦めました。
2.考察
(1) 債権回収戦略
1) ADR(裁判外紛争解決手続き):相手方と話し合いができる状態ならば、ADRが有効です。非公開で弁護士が調停を行います。3か月程度と比較的短期で決着できるうえに、費用がかかりません。ただし、相手方を交渉のテーブルにつかせることができない場合はこの方法は採用できません。
2) 内容証明郵便の送付:相手方と連絡がつかない場合には、まず内容証明郵便を送付し相手方の反応を見ることを推奨します。内容証明郵便は、「このような内容の書面をいつ、誰が誰に送りました」ということを証明するもので、内容証明郵便そのものには法的な効力はありません。しかし、法的措置が示唆され、かつ弁護士の名前で通達がなされるわけですから、一般的には、受け取った方は少なからず衝撃を受けると思います。驚いて支払う可能性があります。この内容証明郵便にも無反応だった場合には、いよいよ法的措置をとるかどうかの選択となります。法的措置をとるかどうかは当然、状況に応じて判断が分かれますが、コスト面は一つの基準になります(後述)。
3) 訴訟提起~和解:私の場合は、相手が自身の債務不履行を認めており、敗訴の可能性はほぼゼロに近かったのですが、勝訴した場合債務は一括弁済が基本となり、相手方が支払えなければそれで終わりです。実現可能な支払計画(分割払)を相手方と相談して、現実的な和解案を作成するほうが債権回収の可能性が高まるため、和解案を選択しました。
結果的には全額回収できませんでしたが、分割払にしたおかげで一部回収できたと感じます。
(2) コスト
債権が回収できない事態に至った場合、対応方法を検討する際に重要となるのがコスト面です。
1) 訴訟にかかる費用:訴訟を提起する場合は原告側が裁判費用を負担します。和解合意した時点で交渉
成功とみなし、成功報酬が発生します。原告の立場からすると、債権回収が実現するか不明な中、弁護士には成功報酬を支払わねばなりません。私の場合は弁護士費用(内容証明郵便、裁判に要した着手金+成功報酬)は約100万円でした。最終的に回収できた債権は約200万円、100万円は未回収です。
2) 強制執行:和解合意した場合(裁判に勝訴した場合も)で不履行が生じた際に、「強制執行」という
手続きを行う権利が得られます。ただ、この強制執行を行うためにも多額の費用がかかります。裁判所に担保金の供出を行い、加えて別途弁護士費用もかかります。また、差し押さえる財産がない場合(もしくは事前に察知されて財産を引き上げられた場合)には「差し押さえ失敗」となり担保金が1円も戻ってこない可能性があります。
このように、権利はあってもコスト的に行使するハードルが高く、現実には泣き寝入りせざるを得ないことがほとんどではないかと感じます。
3.総括
一般的には、「裁判に勝てばお金は取り戻せる」と思われているのではないでしょうか。私もそう信じていました。相互に合意している報酬を支払っていないのだから「自分は絶対的に正しく、相手が絶対的に間違っている」と思っていました。しかし、裁判で和解案に合意したとて、相手が支払わなければそれで終わりです。また、強制執行しても、財産がなければそれで終わりなのです。また、訴訟を提起するためにかかる膨大な労力とそれに伴う精神的負荷はかなりのものです。
こういったことを起こさないようにするために、また、被害を最小限にする対策として、弁護士保険や共済への加入、支払いサイトの短縮化、取引先の与信チェック等のリスクヘッジをしておくことが重要になります。そして、取引先との日常的なコミュニケーションの中で信頼関係を構築しておくことが何よりも大切だと感じます。
何か不具合が生じても、率直に話し合える関係を構築していきたいものです。
The post 第76回 自分と会社を守るということ first appeared on ものづくり事業部.]]>一般的に、「財務会計」と呼ばれる基準に従った決算書の数値をもとに、過去と比較したり、専門機関がまとめているデータの平均値と比較することは、一定の参考にはなりますが、より精度の高い経営判断に活かすのはどうしても難しくなってしまいます。
自社の事業特性に合わせた「管理会計」を取り入れ、基準値や目標値を作り、経営判断をしていくことが望ましいですが、初めて取り組む中小企業・小規模事業者においては、どのように進めていくべきかわからないということがあると思います。
例えば、いくつかの部門があり、売上高は製品ごとや顧客ごとに分けて把握はしているが、経費はまとめて管理しているため、「どの部門がどれくらい利益を出しているのか、わかりにくい」ということがあります。
また、「経営陣や経理、総務といった本社部門の費用は適正なのか」という判断が悩ましい。ということもあります。このような場合、原価と経費を変動費・固定費に分けた上で、部門ごとにかかっている費用を明確に分けて損益を管理することは、全社への貢献度を把握するには有効な手段の一つです。本社経費などの共通費についても各部門に按分し、共通費を賄う収益が出せているかが把握できます。もちろん、どのように配賦するかは事業形態に合わせて設計する必要があります。
次のステップとしては、製品・サービスごとに原価を算出する「原価計算」に取り組むことも重要となります。
1つの製品を1単位作るのにどのくらい費用がかかるのか、どのくらいの単価で販売しないと利益が出ないのか、どのくらいの量を生産しないと固定費を賄えないのか等が見えてきます。
製造にかかる間接費をどのように配賦するかについては、製品を1単位作るのにかかる時間などで基準を作ることが検討できます。
上の図表ように、事業の特性に合わせて自社基準を作ることで、「どの部門に力を入れるのか」「この単価で良いのか」「もっと生産性を上げないといけないのか」「無駄なコストがあるのではないか」といった経営判断の精度を高めることができ、環境変化の激しい現代において柔軟な対応を取ることができます。
この数値は、各部門に従事する担当者の評価や目標として活用できる一方で、部門間に差ができてしまう場合は、モチベーションの低下などに気をつけなければなりません。また、基準の種類が増えすぎたり、複雑化しすぎて理解が難しくなったりすることにも注意が必要です。最大の目的は、経営判断に活かせる有効な基準を設計し、全社が一丸となって目標に向かって取り組める環境を作ることになります。
さいたま総合研究所には、このようなサポートができる中小企業診断士などの資格を有した専門家が多数在籍しています。自社の経営判断のための基準づくりを検討の際は、是非ご相談ください。
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フリーランス・トラブル110番に寄せられた相談の中で最も多いのは、発注者が約束した報酬を⽀払ってくれないという相談です。 例えば、ポスターのデザインを作って欲しいという依頼を受けて、イラストレーターが多くの時間と労⼒をかけてポスターを作成しましたが、 発注者は、完成したポスターのイメージが違ったという理由で、 一⽅的に報酬を引き下げたり、納品を断って報酬が⽀払われなかったりすることもあります。 会社に雇⽤されて働く労働者の場合には、労働基準法で賃⾦は決まった⾦額全額を、決まった⽇に⽀払わないといけないということが定められている、一方フリーランスには、労働基準法は適⽤されません。このようにフリーランスは、発注者に⽐べ、弱い⽴場に⽴たされることが多いため、業務委託する取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備を図ることを⽬的とする法律ができました。「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
この法律は「特定受託事業者」として、フリーランスを定義したうえで、 全ての発注者に対し、受託事業者であるフリーランスが⾏う、給付の内容、⽀払い期⽇、報酬の額などの事項を予め書⾯やメールなどで明⽰することが義務付けられました。この他、 報酬の⽀払い期限の規制も出来ました。発注者は、特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払義務があり、再委託の場合には、発注者から支払いを受ける期日から30日以内の支払い義務があります。具体的には、図で示すと以下の様になります。
一定期間継続してフリーランスと取引をしている発注者に対しては、一⽅的に報酬額を減らしたり、 成果物の受け取りを拒否したりする⾏為などが禁⽌されました。このほか、フリーランスに対するハラスメント⾏為について発注者が必要な措置をとる、取引を解約するには少なくとも30⽇前に予告しなければならないこと等が求められました。本法律で定められている特定受託事業者に係る発注者の禁止事項(第5条)は以下の様になります。
これらの違反⾏為には罰則も⽤意されています。新しい法律が出来たことにより、フリーランスと発注者の間のトラブルを未然に防ぐことが期待されます。 また、発注者に求められる様々な遵守事項が定められ、違反⾏為には罰則も適⽤されますので、 発注者とフリーランスとの間の取引が適正化されることが期待されます。一⽅、 新しい法律が出来たというだけで全てが解決するわけではありません。まず、この法律は労働基準法のように、法律が定める基準に達しない契約の規準を法律の規準にまで引き上げる効⼒を持つものではありません。フリーランスと発注者が、この法律を⼗分に理解し、適切に活⽤していくことが必要となります。また、発注者の違反⾏為に対しては罰則も適⽤されることになっていますが、違反⾏為を適切に拾い上げ、是正するための国の体制を整える必要もあります。この法律は、法律制定から1年6ヶ⽉以内に施⾏されることになっていますので、 来年の秋までには国の体制も整える必要があります。
発注者もフリーランスが発揮する専⾨性を尊重し、その専⾨性の⾼い働き⽅を⾃らの事業運営に効果的に活⽤するようになれば、より活⼒のある働く現場を作ることができるのではないか期待しています。
The post 第74回 フリーランス支援の今後 first appeared on ものづくり事業部.]]>1. 使用済み太陽光パネルの廃棄・リサイクル
FIT制度の下で大量設置した太陽電池モジュールは、2030年以降に大量廃棄時代を迎え、年間50~80万tが排出されると想定されています。2020年の太陽光パネル回収実績はまだ0.7万tですが、66.5%がリユースされ、33.5%がリサイクルされています。
太陽光パネルのリサイクルは、現状では単純破砕処理方式から高度選別方式まで種々あり、より高度なリサイクルとなるべく、各社が検討中です。アルミフレームのリサイクルは容易ですが、重量比率の高いガラス・プラスチック・シリコンのマテリアルリサイクルをどう促進するかが課題です。
2. 風力発電設備の撤去とリサイクル
風力発電所は1990年代以降建設され続け累計2,300基が北海道・東北・三重・西九州等風と土地が豊富な地区に設置されています。20年の寿命を迎えた風力発電機の解体撤去は190基となり、2030年以降は年100基 (1,500t) ペースになると推定されています。風力発電機解体撤去の困難性は、高さ60m・重さ数十トンの巨大さ、主部材の風車ブレード素材はFRPリッチでリサイクル困難、立地が僻地のために輸送コストが高い等にあります。現状では重機で解体した風車ブレードは切断の後に現地の産業廃棄物処理業者が埋立処分しています。
クリーンエネルギー設備の埋立廃棄をなんとか資源循環リサイクルしたいと、宏幸(株)が環境省の補助金を活用して「FRP(繊維強化樹脂)を原料とする風車ブレードリサイクル実証事業」を令和4~5年度に実行中です。これが実現すれば、解体した風車ブレードを粉末加工して他の再生素材とブレンド成型することで、太陽光パネル下敷き地面マット等の再生合成樹脂としてリサイクル社会実装していきます。再生エネルギー設備の循環リサイクルというクリーンサステナビリティが構築できます。遠山は宏幸(株)の顧問として、環境省の実証事業およびリサイクル技術の進展に積極的に関わっています。
3. 再生エネ設備リサイクル専門家会議(環境省・経産省)
政府環境省と経産省は、前記の再生エネルギー設備の廃棄・リサイクル課題の政策検討のために「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」を2023年4月より立ち上げて、4回の会議を開催しています。https://www.env.go.jp/page_00665.html
第4回検討会(2023/7/18)のヒヤリング資料6宏幸(株)阪和興業(株)合同資料「風力発電機解体事業の現状/FRPを原料とする風車ブレードリサイクル実証事業」について、阪和興業:八木部長、宏幸:高谷社長、宏幸顧問:遠山(さいたま総研理事長)が発表しました。https://www.env.go.jp/council/03recycle/page_00024.html
日本の脱炭素とリサイクル技術向上に貢献していきたいと願っています。
1.温暖化で豪雨が増加する
近年、短時間に狭い範囲で非常に激しく降る雨が頻発しています。記録的大雨という言葉も新聞でよく見かけるようになりました。気温が高いほど大気に多くの水蒸気を蓄えられるため、豪雨災害につながりやすいというわけですが、IPCC第6次評価報告書によると、産業革命前からの気温上昇が1.1度である現在は、大雨の頻度が1.3倍になっていると報告されています。今後更に地球温暖化が進み、産業革命前からの気温上昇が1.5度、2度になると、大雨の頻度はそれぞれ1.5倍、1.7倍になると予想されています。事実、日本では、大雨の年間発生回数は、1976年~1985年までは平均174回、2008年~2017年までは平均238回であり、この30年間で1.4倍に増加しています(中小企業庁:「中小企業白書2019年版, 第3部第2章防災・減災対策」より)。今後も気候変動の影響により、日本では水害が頻発することが懸念されています。
2.ハザードマップを確認しましょう
前掲の中小企業白書によると、自然災害への備えに取り組んでいない企業の理由として最も多い回答は「何から始めれば良いか分からない」であり、そのように回答した企業の7割以上がハザードマップを確認していないと報告されています。更に、ハザードマップを見たことがない企業の3割は、水害による浸水リスクを抱えているとされています。まずは、ハザードマップを確認することを推奨します。代表的なハザードマップは以下の通りです。
○J-SHIS(地震ハザードステーション) http://www.j-shis.bosai.go.jp/
○国土交通省ハザードマップポータルサイト https://disaportal.gsi.go.jp/
○地域の自治体HP(国土交通省HPからアクセス可)
3.水害に備えて事業継続力強化計画を策定しましょう
事業継続力強化計画とは、中小企業が自社の災害リスクを認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために必要な項目を盛り込んだもので、将来的に行う災害対策などを記載するものです。計画策定の目的は、1)防災・減災の事前対策を行うこと、2)災害時の迅速な行動力を養うことであり、実効性を担保するためには、継続的な見直しと教育訓練が不可欠です。効果的かつ効率的に進めるためには、専門家の活用が有効です。
ぜひ、さいたま総研にご相談下さい。
The post 第72回 水害に備えて事業継続力強化計画を策定しましょう first appeared on ものづくり事業部.]]>ヒトの審査とは
この社長にお金を貸してちゃんと返ってくるか、融資のお金を有効活用してくれるか、長く付き合っていける先か等です。会社が儲かっていないのに高級外車に乗っている、社長の自宅がやけに豪華、身なりが派手、遊びが派手、愛人がいるというケースはヒトの審査で落ちてしまいます。また、意外に節税の好きな社長・税理士は実は銀行は好きではありません。それは、なぜかというと、
・返済能力が減る=融資可能額が減る
・自己資本が積みあがらない
・節税する=お金が出て行く
・本来の収支が分からなくなる
からです。
保険料を使った節税がはやりましたが、実は審査という点ではマイナスだと思います。
モノの審査とは
これは、事業に強みや将来性があるか、融資で伸びる可能性があるかといった銀行に収益をもたらすかどうかという観点で見ています。
カネの審査とは
これは、決算書で判断します。「会社には銀行用、税務署用、取引先用の3つの決算書があると言われる」銀行は提出された決算書が正しいかどうか、粉飾がないかどうかを調べます。粉飾を見つけるようになれると一人前と言われました。
簡単な粉飾は、勘定科目を3期~5期並べてみると科目の推移に異常があれば浮かび上がってきます。
1.決算書はどこから見るか
皆さんは決算書をどこから見るでしょうか?
一般的には、利益がどれだけ出ている会社かということでP/Lから見るのではないでしょうか?
実は、銀行員は、貸借対照表(B/S)から最初にみます。それも、利益剰余金をその会社の業歴で割り、過去の平均利益を計算します。
そして、当期利益と見比べ、最近儲かるようになった企業か、昔はよかったがじり貧になってきた企業かを判別します。儲かっていた企業が連続で赤字を出し始めると立ち直るのはなかなか難しいと経験則で言われています。
2.融資を引き出すには銀行をファンにする
銀行は「晴れている時には傘を貸すが雨が降ったら貸してくれない」とよく言われます。
業績のいい時にお金を借りると、実は銀行と良好な関係が作れるようになります。預金が多い企業には、銀行の決算が近づくと先方から好条件で融資の話を持ってきます。資金に余裕を持つことで社長が金策に走る必要がなくなり、業績が拡大し始めます。
実は無借金会社が融資を申し込んできたときには断ることが多いと言われます。これまでお金があるから借りないと言っていたのにお金が必要になる、すなわち「自分の会社の業績が悪い」と言っているようなものです。
実際コロナで倒産した会社のなかには無借金会社だったところが意外とあります。
低金利の時代、節税をするのであれば借入をして手持ち預金を増やし1年ぐらいは売上がなくてもやっていけるぐらいの会社にする方がこれからの時代はいいかと思います。金利は経費です。将来の業績悪化の時に備えた保険と思えば決して高いものではありません。
3.資金繰り表を出すとポイントがあがる
決算書は過去のものです。これに対し、資金繰り表は会社の未来を示したものです。意外と税理士の先生でも資金繰り表が作れない方がいます。
銀行は資金繰り表を作って毎月出してくれる会社を高く評価します。
また、資金繰り表を作っておけば、入金が遅れることが事前に分かった場合の対応が素早くできます。手形のように絶対払わなければならないもの、社会保険料や税金など一時的に支払いを延ばせるものなど支払の順番を変えることで凌げることもあります。
資金繰り表作成のポイント、経常収支、経常外収支、財務収支に分けることです。一時的な経費、税金支払いは経常外に月末が休日だと試算表の残高と合わなくなるので注意してください。財務収支も面倒でも銀行ごとに記入し提出すると他行の状況もわかり融資が出やすくなります。
4.銀行には、いい時も悪い時も情報の早期開示をする
銀行に試算表を翌月には提出すると評価は変わります。最近は会計ソフトで作れますので早いところは翌月の5日には出来上がるといったところも珍しくなくなりました。
いいことも悪いことも早く伝えることが会社の信用となります。経営計画発表会を行う企業へは銀行も融資をしたくなります。
5.士業に求められる銀行との関係強化
国は、銀行に事業性評価による伴走支援を求めています。しかし、融資以外の商品も売らなくてはいけないうえに、残業をすることができず、時間がないのが実情です。
中小企業の経営者もコロナの次は円安での物価高、賃上げにどう対処すればいいかで時間がないと思います。補助金以外にもゼロゼロコロナ融資の借換え支援をしてもらいたい企業がこれから増えるかと思います。銀行審査の裏側を知ることで、銀行との関係強化を図り、銀行担当者が稟議を書きやすい資料を提出できれば、銀行との関係強化が図られます。頼りになる存在として経営改善計画書等の作成依頼もあるかもしれません。
1.先端設備等導入計画と固定資産税の特例について
先端設備等導入計画とは、中小企業者が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。認定された事業者は、生産性を高めるための設備を取得した場合、固定資産税の軽減措置(3年間1/2に軽減。賃上げ方針を従業員に表明した場合は1/3に軽減)を受けることができます。例えば、耐用年数8年、1億円の機械装置を購入するにあたり、事前に先端設備等導入計画の認定を受けていれば、3年間の節税見込額は約140万円です(1/2軽減の場合)。
2.経営力向上計画と法人税の特例について
経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。認定された事業者は、計画に基づき一定の設備を新規取得して指定事業の用に供した場合、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。
例えば、1億円の機械装置を購入する場合を考えます。設備取得年度の税負担軽減目的なら即時償却を選択し、長期の法人税額合計を減少させる目的なら税額控除を選択します。10%税額控除なら、最大1,000万円の税額控除となります。但し、税額控除額は、その事業年度の法人税額の20%が上限となりますので、法人税額が1,000万円であれば税額控除限度額は200万円です(税額控除の限度額を超える金額については、翌事業年度に1年間繰り越すことができます)。なお、補助金を受給して圧縮記帳の適用を受ける場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額となります。
3.まとめ
先端設備等導入計画や経営力向上計画の認定による税制支援は令和7年3月31日までの時限措置です。計画認定を受けるためには、設備投資によって労働生産性を一定程度向上させる事業計画を策定しなければなりません。加えて、先端設備等導入計画では投資計画書の作成、経営力向上計画では工業会証明書の取得または投資計画書の作成が必要です。設備投資を予定されている事業者様におかれましては、補助金の利用と併せてこれらの計画認定をご検討されることをお勧めします。
The post 第70回 先端設備等導入計画や経営力向上計画の認定により税制支援が受けられます(令和5年4月改正版) first appeared on ものづくり事業部.]]>子どものころ、海や川で「ここで魚や貝を採ってはいけない」と叱られた経験はないでしょうか。「公有水面埋立法」によると海や川は国の所有とされています。ところが、漁業法により「漁業権」が「物権」として、「自然公物利用権」よりも法的保護が強い側面があるのです。
漁業とは
漁業は水産業の一部であり、1次産業です。ドラマ「ファースト・ペンギン」では漁業が水産加工、物流まで行う6次産業として紹介されていました。漁業には「狩る」漁業である沿岸漁業、沖合漁業、遠洋漁業と「増やし育てる」養殖漁業があります。沿岸漁業は日帰り漁が多く、日本の漁師の8割を占めています。漁法は地域さまざまですが、主に定置網や刺し網を使ってエビ類や海藻類を採取します。沖合漁業はEEZ内で沖合底引き網や第中型まき網を使って、サンマ、アジ、イワシなどの多獲性浮魚類(たかくせいうきうおるい)を採取する漁業です。遠洋漁業は世界中の海で遠洋トロールやマグロはえ縄漁でマグロやカジキなどを採取します。養殖は区画して管理する海域などで、タイや牡蠣、のりなどを育てます。
世界の漁業
世界の漁業・養殖業生産量は増加の一途をたどっています。2020年の世界の漁獲量は2億1,400万トンで1960年の3,687万トンのおよそ5.8倍、消費量は2倍に増加しています。生産・消費量が増加した原因は、輸送や冷凍冷蔵技術の発達、健康志向の高まりから水産物の消費が増えていること、新興国中心に芋類の食生活から魚中心の食生活に変化した点が挙げられています。しかし、日本で見ると魚介類が多かった食生活を肉類の消費が逆転したこと、魚介類の価格が肉に比べ、高めであること、家庭での調理がしにくいことなどから消費量は減少しています。各国の漁業構造を比較すると、日本の漁船の平均総トン数は最も低く、12m未満の漁船割合は最も高いといえます。
漁獲量は増えているものの、漁獲圧の高まりで水産資源の減少をもたらすメッセージは世界中で広まっています。2022年6月の第12回WTO閣僚会議で水産資源の乱獲を促進する漁業補助金の禁止が採択されました。これに先立ち、SDGs14.6でも「2020年までに過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止すること」が宣言されています。
日本の漁業
一方、日本漁業の生産量は、大幅に減少しています。生産量は1984年の1,282万トンがピークであり、現在は約3分の1にまで縮小しています。この大きな原因は遠洋漁業の縮小とマイワシの漁獲量が大幅に減少したためです。マイワシは食料となるだけでなく、肥料や飼料などさまざまな用途でしたが、1988年をピークに急激に減少しています。原因はさまざま考えられますが、海水温の急激な変化がもっとも大きな要因とされています。
漁業就業者数も減少し、高齢化をたどっています。平均年齢が56.9歳で65歳以上の割合が38.3%を占めている状況です。漁業者が活動する上で欠かせない漁業協同組合(以下、漁協)は信用事業、共済事業、販売事業、指導事業など4つの事業を営んでいます。漁協の合併も進んでいるものの、組合員数も減少し、倒産する漁協もみられます。漁協もこれまでのビジネスモデルを継続するだけでは存続が難しく、新たなビジネスモデルを見出し、経営基盤を強化する経営革新が必要です。
漁業法と科学的管理法
漁業法とは日本の漁業生産に関する法律であり、海や内水面で漁場を誰にどのように使わせるかを定めたものです。漁業法は明治43年の成立以降、何度か改正されています。近年資源水準が大幅に低下し、漁業従事社の減少など漁業の危機的状況を背景に直近では2020年12月に改正漁業法が施行されています。改正漁業法で最も着目すべきは科学的管理法の採用です。改正漁業法を踏まえ、より実効性の高い水産政策が水産庁から発表されています。科学的管理法では、一定海域の資源尾数をコホート解析で推定し、これから最大持続生産量(MSY)を算出します。算出されたMSYから漁獲可能量(TAC)を設定し、IQで配分した結果をコントロールする流れとなります。
漁業経営の状況
漁業就業者とは過去1年間に「漁業の会場作業に年間30日以上従事」した「満15歳以上」の人を指します。個人経営体(漁船漁業)の経営収支を見ると平均漁労所得は2021年で226.7万円です。高齢化するほど所得は少ない傾向にあり、操業日数を縮小し、肉体的負担の少ない漁業に変更するなど縮小した規模で漁業を継続していることが伺えます。また、漁船の老朽化も大きな経営課題です。漁船の耐用年数は20トン以上の漁船は500トン以上で12年、500トン未満で9年です。また、20トン未満のFRP船が5年です。しかしながら、現在、船齢が20年以上の漁船が全体の77%を占めています。小型船舶ほど漁船の高船齢化が進み、高品質の水産物供給が難しいといえます。
日本はまわりを海に囲まれた海洋資源国です。これらの海洋資源を守りつつ、海外の取組を必要に応じて取り入れ、日本の新しい漁業のあり方に積極的にチャレンジしていく必要があります。
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有機農業は数多くの作業工程が あり、その作業は手間のかかる農作業があり対応するには労働力が必要になっています。 有機農業は、除草剤や虫を殺す 農薬を使用していないので、慣行農法(農薬・化学肥料を使用)に比べて、栽培には「手間」がかかります。この手間を惜しむと品質の良い青果物ができなくなってしまいます。 しかし、有機農業では収穫前に必要な作業をする労働力が現在は不足しています。農家がこの作業に多くの労務費をかけると費用が大きくなり、販売価格を上げざるを得なくなり適切な価格で売れなくなってしまいます。この労働力不足を無料で調達できれば、健康に害のない青果物を適切な価格で販売することができるようになります。
◎農作業を企業研修プログラムに組み入れる
この付帯的な農作業(雑草取り、マルチシート片付け、畝づくり作業、マルチシート貼り)をすることを企業の人事研修プログラムに取り入れました。1 チーム5人で作業をおこない、チームワークを取りながら農作業をすることで完成度の高い作業を素早く行えるよう工夫してみました。 チームワークを高めて作業する際には、コミュニケーションスキルが必要になり、自然発生的にコミ ュニケーションを取るようなヒューマンスキルを醸成できる人事研修プログラムを開発しました。
マルチシート貼り作業は 1 チーム 5人で分担して作業することで、完成度が高くなるような工夫を求められて作っています。工夫するためにはコミュニケーシ ョンを取ることが必要でヒューマンスキルの醸成に役立ちます。作業をおこなう前に研修講師からの「投げかけ」をおこないコミュケーションを取らざるを得ない状況を作り出します。
◎労働力不足支援プロジェクトは有機農業者と企業をつなげる社会貢献度の大きいものです。
企業研修プログラムに取り組むことで、従業員はコミュニケーションスキルを駆使してチームワークを上手く取り、素早く完成度の高い農作業を達成できるようになります。
企業は従業員がヒューマンスキルを取得でき、農業者は労働力不足を解決できるという二つの課題を解決する社会貢献度の大きいプロジェクトです。
このプロジェクトは日本の農業の方向性にマッチした取り組みだと言えないでしょうか? 興味を持たれた方は、農商工連携プロジェクトチームまでお問い合わせください。
The post 第68回 有機農業者の労働力不足支援プロジェクト first appeared on ものづくり事業部.]]>①おもしろマーケティングとは
ポストモダンマーケティングといわれる新しいマーケティング手法を加えた評価基準を用い、豊島区中小企業診断士会が豊島区内の各商店街加盟の商店(小売業・飲食業など)を訪問して評価し、優秀な個店を表彰しています。
②ポストモダンマーケティングとは
スティーブン・ブラウン(アルスター大学教授)は、「顧客志向」が溢れ変えっているなら、「顧客志向」を捨ててしまうこともマーケティング目的を達する戦略の一つであることを提唱しています。具体的には、経済の成熟化・消費の個別化が進むなか、従来のマーケティング手法に代わって必要なのは、Trick(トリック)、Exclusivity(限定)、Amplification(増幅)、Secrecy(秘密)、Entertainment(娯楽)この5つだと述べています。
■おもしろマーケティング大賞表彰式(令和2年)
令和2年1月7日(火) ホテルメトロポリタンにおいて豊島区商店街連合会の新年賀詞交歓会が行われ、高野之夫豊島区長、太田昭宏衆議院議員をはじめ、 地元選出の都議会議員、区議会議員のほか、区内各界の著名人、区内の商店街関係者、中野・板橋・練馬・杉並区の各商店街連合会長など、217名が出席しました。終盤には、小池百合子東京都知事も出席され、会場は大いに盛り上がりました。
※豊島区中小企業診断士会ホームページから抜粋:
http://www.toshima-smecg.org/2020/01/funny-marketing-awardsceremony2020/
③評価方法
おもしろマーケティングの評価は、コミュニケーションなどの日常的なマーケティングと、ポストモダンマーケティングの要素を入れた非日常的なマーケティングなどについて点数を付けて総合点で評価します。
④事例
<巣鴨とげぬき福寿庵>
“シベリア”をロールケーキ型にして、「シベリアロール」と名付け、商標登録も行って巣鴨の新しい名物として限定販売している。「シベリアロール」は、女優の吉沢京子さんの芸能生活50周年パーティで初お目見えとなり、口コミで拡散しました。
<群馬県太田市から池袋へ新鮮な野菜を│OTA青果>
https://www.facebook.com/gunma.ota.seika/
店主の自宅のある群馬県太田市の農家や市場で買い付けた野菜や卵を大きな赤いパラソルを立てて販売してます。通常の小売店と違い、ワゴン車でのオープンな環境で、色とりどりの野菜、果物を見るだけでも楽しい販売方法です。
<椎名町のお米屋さん|並木米穀店>
お米マイスターの店主が独自の評価により特徴を表現し、ランク付けを行い、量り売りを行っています。また、特別栽培米でつくる手作りおむすびや、おはぎなど季節の和菓子を提供するなど、消費行動の文脈にもつながる販売手法を実行しています。
豊島区中小企業診断士会では、おもしろマーケティングで受賞した店舗を紹介するサイト(http://www.toshima-smecg.org/omoshiro-marketing/)を構築し、蓄積された手法とノウハウを地域中小企業にフィードバックするとともに、個店経営の現状分析と、おもしろマーケティングのコンサルティングを無償で行っています。
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