ものづくり事業部

第21回 初めてのシステム開発発注

1.はじめに
中小企業での業務改善や商品開発にはシステム開発を伴うことが多い。システム開発は緻密で根気がいる作業であり、中々とは容易な作業ではありません。ましてや外部のIT会社に発注する場合には、法務、購買、プロジェクト管理などの基本知識が必要です。
今回は中小企業が外部のIT会社にシステム開発を初めて発注する際の、必須の実施事項、注意点を説明します。

2.システム開発発注の流れ
システム開発発注の基本的な流れは次の通りです。
2-1.見積依頼 → 2-2.発注 → 2-3.システム開発 → 2-4.検収
以下に、順を追って各々の押さえる勘所を説明します。

2-1.見積依頼
(1)予算
1)予算額
初めて発注する場合は、失敗などのリスクを考えて、最高でも年商の5%、すなわち売上が10億円であれば500万円ぐらいを限度とした方がよいでしょう。
2)費用対効果
システム化により収益がいくら見込めるか、費用はいくら削減できるか、十分に検討しましょう。希望的予測は厳禁です。
3)パッケージ利用も選択肢
全てを自作するのではなく、市販のパッケージを積極的に組み込むことにより開発費を削減します。パッケージ導入に伴う業務手順の変更は、大抵の場合は業務改善に繋がる傾向にあります。

(2)見積依頼
1)IT会社の選定基準
・年商
1兆円超のNTTデータ等の超大手、数千億円のNRI等の大手はまず先方が商談に乗ってきません。中小企業が見積を依頼する会社は、数百億円~数億円すなわち準大手~中堅クラスとなります。
・エンドユーザとの直接取引実態
IT会社の会社概要やHPの取引先を確認します。超大手や大手の多段階下請けとして一部分を任されてシステム開発しているのか、あるいは直接エンドユーザ(お客様)と契約してシステム開発しているかを確認します。もちろんエンドユーザと直接取引しているIT会社を選びます。さらに納入実績にお客様実名で記載があれば安心です。
・業種/業務に特化
同じくIT会社の会社概要やHPから、得意とする業種/業務分類があるか確認します。例えば単なる製造業ではなく、精密密機械器具製造業のような記載があれば特化していると信用できます。
・紹介ルート
同業者、金融機関、コンサルタントからの紹介、インターネット検索など様々ありますが、第一優先は同業者からの口コミです。
・地元密着/全国展開
地元でお客様の要望に迅速にこまめに応じている、最後まで逃げないIT会社を選びます。
・システム開発範囲
単なるプログラム製造ではなく、基本設計からテストまで、さらには運用(維持管理)まで請け負うIT会社が望ましい。但し、初めての発注の場合は詳細設計から総合テストまでなど範囲を狭めて納期遅延などのリスクを少なくします。

(3)見積依頼書
以下の項目記述は最低限必要です。必ず複数のIT会社に相見積してもらいます。
1)予算
概算なのか、限度額なのか明記する。概算の場合は予算確定時に金額が膨れます。
2)見積期限
年月日さらに必要であれば時刻まで厳格に記述します。
3)工期
開発開始の年月日から納品の年月日を記述します。
4)システムの機能要件
システムの機能の理解に行き違いがないように具体的な業務フロー及び機能図など見える化して提示します。
5)開発場所
システム開発する場所や環境を明記する。
6)IT会社の再委託
原則禁止します。
7)納品場所
具体的に工場、物流センターなどを指定します。
8)相見積
必ず複数社に相見積を依頼します。
   
(4)見積書
IT会社から受領する見積書は以下の項目のチェックが必須です。
1)前提条件
自社が想定していない前提条件をIT会社が盛り込んでいないか確認します。もし、そのような前提条件がある場合には内容、理由を質します。承服できない場合は再度見積させます。例としては、見積有効期限、端末レスポンス時間や検索時間などの性能条件です。    
2)見積機能範囲
見積依頼したシステムの機能に対して、見積機能に過不足はないか確認する。IT会社に実現する業務フローや機能図の提示を求めて過不足がないようにします。
3)見積方法
見積方法には大きく2通りあります。
・プログラムステップ方式
 プログラムのステップ(行)数から開発規模を算出する方法です。
・ファンクションポイント方式
画面や処理などの機能の複雑さに応じて点数をつけて開発規模を算出する方法です。
4)見積詳細内訳
工程、機能、プログラム 等々の項目分けで開発規模、開発工数が詳細に記述されているか確認します。
5)人月
開発工数の単位であり、標準的な技術者が1ヶ月に20日間稼動した場合を1人月と定義しています。
6)人月単価
1人月の金額を表します。準大手~中堅クラスのIT会社では70万円から100万円ぐらいが通常です。但し、金額の絶対額ではなく1人月あたりの生産性を考慮する必要があります。
7)納品物件
納品物件の種類と内容を確認します。例としては、開発工程が設計から本番稼動までの場合は、基本設計書、詳細設計書、プログラム、テスト成績書、操作・運用説明書等です。

2-2.発注
(1)基本契約書
特定の取引先と反復継続的な取引に共通する基本的な取り決めを定めて必ず締結します。契約締結は一度だけで自動更新規定を付けます。
基本契約書の取り決め事項は以下の通りです。
1)代金の支払条件、2)納品方法、3)納品物件の検収方法、4)知的財産権、5)秘密保持義務、6)契約解除事由、7)損害賠償、8)有効期間、9)合意管轄裁判所
代表的な基本契約書の雛形を挙げておきます。
   
JISA ソフトウェア開発委託基本モデル契約書(平成20 年5 月版)
http://www.jisa.or.jp/Portals/0/resource/legal/download/contract_model2008.pdf

(2)基本契約の重要事項
以下の事項はIT会社と厳格に交渉して、締結する必要があります。
1)納品物件の検収方法
確実に検収が実施できるように基準、期間を明確にします。
2)瑕疵担保責任
システム開発物件に瑕疵があった場合の修補責任範囲、損害賠償範囲、損害賠償金額、瑕疵担保責任期間(通常1年)を定めます。
3)知的財産権
自社の知財戦略に則って、著作財産権の自社への譲渡規定、著作人格権はIT会社不行使規定、特許権の自社帰属規定を決定する。関連してプログラム、文書等は納入物件に必ず含めます。
4)機密保持義務
開発上知り得た自社固有の技術上、その他の業務上の機密の開示漏洩禁止を規定します。IT会社の再委託を認める場合や中国など外国企業に発注する場合は特に重要です。

(3)個別契約書(注文書・注文請書)
基本契約書の締結後、個々のシステム開発物件について、以下の事項を規定して個別契約書を締結します。通常は個別契約書を作成しないで、「注文書」と「注文請書」の形で取引きすることがほとんどです。1)代金、2)納期、3)納入物件、4)納入場所、5)特約事項

2-3.システム開発
以下の通りの工程の流れに従って進みます。
(1)基本設計
利用者に提供する機能や操作などを定義する工程です。画面や操作方法(ユーザインターフェース)や、帳票類、データベースの構造などを決めます。外部設計と呼ぶ場合もあります。
(2)詳細設計
基本設計で定義した機能や画面・操作などに基づいて、プログラムやシステムとしてどのように実現するかを具体的に定義する工程です。内部設計と呼ぶ場合もあります。
(3)製造
内部設計で定義したプログラムを具体的にプログラム言語を使用してプログラムを作成、正しく動くかテストする工程です。プログラム開発、単体テストなどより細分化して呼ぶ場合もあります。   
(4)テスト
製造の工程でテストしたプログラムを1)連結して正しく動くか、2)システムとして正しい機能を実現しているか、テストする工程です。1)を連結テスト、2)を総合テスト、システムテストと呼ぶ場合もあります。
(5)運用
実際の現場でシステムを稼動して業務遂行する工程です。システムの稼動により、以下の業務が発生します。1)システムを実際に動かすオペレーション(操作)、2)システムを障害監視して維持管理するメンテナンス(保守)、3)システムに関する問い合わせに対応するサポート

2-4.検収
納品されたシステムの機能や動作を検証し、自社の仕様を満たしているかどうかを判定する作業です。検収合格となれば、IT会社に最終的な費用を支払います。
検収で重要なポイントは以下の通りです。
(1)検収期間は短期間として、迅速に行う。
 検収内容が多い場合は、中間の工程の要所要所で段階的に検収を実施しておきます。
(2)検収は必ず実際の本番稼動環境で実施する。
 1)本番データを使用して検収します。2)接続端末、印刷帳票、時間帯など最大稼動状況を考慮して検収します。   
(3)予めIT会社と自社で検収項目を合意しておく。
 基本設計の終了時点で業務フローや運用手順書に沿った検収項目を作成しておきます。
  
3.まとめ
(1)小さく産んで大きく育てる。
費用対効果が見込める範囲で、小さな予算・規模・機能の開発に絞り込み、実際の運用や環境変化に応じて段階的に大きく改善していく。
(2)自社とIT会社はパートナーである。
システム開発作業は最善の準備を尽くしても、ゴールまでの道のりは障害の連続です。自社とIT会社は厳密な契約の下、
二人三脚で一体となってシステムの正常稼動を達成を目指さなければなりません。
(3)システムは開発2割、運用8割である。
自社にとってはシステムを開発することが重要ではなく、システム稼動後の更なる業務改善、効率向上が永続的な最終目的です。

第20回 「ものづくりはひとづくり」

大企業でも、中小企業であっても、モノ作りをになうのは最終的には人であると言われています。よほど汎用性のあるものでない限り、ほとんどの場合で最終的にモノを作るためには人の手が関わってきます。ということは、モノづくりは「人づくり」であるといっても、過言ではないということになります。今回は「人を作る」つまり、人材育成について考えてみたいと思います。

1.人は資源か資産か
大辞泉を調べると「資源」は、広く産業上利用しうる物質や人材とあり、「資産」では、個人や企業が所有する財産と説明されています。いずれにしても、人は経営資源の一つに違いはありません。
人を資源と捉えると次のような特徴が考えられます。手を加えると価値が上がっていくが、加え方を間違えると逆に価値が下がっていく。入手した時点から価値が上がっていく資源であるが、組み合わせにより力を出したり出さなかったりする。日によって調子が変わりやすい。非常に扱いが難しい資源だと言われています。

2.人的資源の動機づけ理論
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが人間に対する分析を行い、「動機づけ・衛生理論」を提唱しています。人間には2種類の欲求があり、苦痛を避けようとする動物的な欲求と心理的に成長しようとする人間的な欲求という別々の欲求があるとしています。
言いかえると苦痛を避けようとする動物的な欲求をいかに充足しても、人間は不満足感が減少するだけで積極的な満足感を増加させることはない。また、たとえ心理的に成長しようとする人間的欲求を十分に満たすことができなくても、不満足感が増加するわけではないと述べています。つまり、仕事の満足感を引き起こす要因と不満を引き起こす要因とは違うということなのです。
不満要因(衛生要因)をいくら取り除いても、満足感を引き出すことにはつながらず、不満足感を減少させる効果しかなく、仕事自体の満足感を引き出すには「動機づけ要因」にアプローチしなくてはいけないということです。
少し極端に言うとすれば、給料をいくら多く出しても、人間は、直ぐに当たり前だと思うようになるので、給料を多くするだけでは駄目だということです。仕事の満足感を与えようとするならば、その人間にある仕事を任せて、その達成度を評価してあげるということをすれば、人は成長していくということを述べています。成長するということは、人は自らが考えて、自分で問題点の解決策を発見していくことだと言えます。

3.人を資産と捉える
アメリカの経営学者のピーター・ドラッカーは、人こそ最大の資産であると著書のなかで述べています。人のマネジメントとは、人の強みを発揮させて生産に結び付けることであり、また、人の弱みを中和させることであると述べています。ここでいうマネジメントは「管理」という意味でなく、組織に人を適材適所で「配置すること」であるとしています。また、彼は人材を資産と考えたとしても、人は企業の所有物ではなく清算するものでもないと述べています。
人は共に働く人たちを生かすべきものとして捉えることであり、その強みが成果に結びつくよう人を配置すべきであると説明しています。ドラッカーだけが経営学者ではありません。しかし、人材育成とはどのようにするべきなのかという課題のヒントにはなると言えます。

4.イノベーション(革新)を起こす
中小企業は、大企業に立ち向かうのではなく、いかにして、大企業と戦わずに勝利をおさめるかということを常に考えていなくてはなりません。人、モノ、金、情報である経営資源が乏しい中小企業は、競争市場の中で戦っていくためにさまざまな工夫が必要となってきます。
戦っていく武器のひとつにイノベーション(革新)を起こすという考え方があります。この革新は、人の頭の中からしか生まれてこないのが特徴です。どこに問題点があるのかをいつも考える習慣が、人の頭の中にないとこの革新という発想は決して生れ出てきません。どんなに多くの人間がいても駄目です。
多能工化している中小企業では、このチャンスに恵まれていると考えることができます。「人をつくる」ということは、重要であると再認識できます。
小さな工夫をするということは、革新を起こすことに他ならないのです。人材を育成するということは、この革新を生み出すために必要なことであると言い切ることができます。モノ作りを極めるためにも、人材を育成することはイノベーションを起こすために重要なことなのです。

第19回 中小企業も「第四次産業革命」の流れに乗って再成長!(その3)

中小ものづくり企業の「第四次産業革命」への処方箋

前回は第四次産業革命における産学官の、主に大企業の取組み状況に付いて述べてきました。それでは中小企業はどの様に取り組めばよろしいのでしょうか?
一つの答えが、前回少し触れました官民戦略プロジェクト10の7番目、「中堅・中小企業・小規模事業者の革新」に有ります。まず7-1) 地域未来投資促進事業(中小企業のIoT・BD・AI利用、経営力向上当の支援を図る)は、予算処置として「平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」があります。この中で「第四次産業革命型」として補助上限を3,000万円まで拡大し、要件はその名の通りIoT+AIかIoT+ロボットです。「中小企業はこうあって欲しい」との政府からのメッセージですが、相当レベルが高いと踏んだのか、公募申請書の中に初歩的な「IT化に取組む企業に付いて」と言う加点項目も入っています。最後に中小製造業向けの模式図を示しながら説明します。

昨年度の「平成27年度補正ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」に、補助上限を3,000万円まで拡大した「高度生産性向上型」に、「IoTを用いた設備投資」が有りました。重要なポイントなので詳しく見ますと、
その要件は「設備投資を行うことで、
・単に従来から行われている単独機械の自動化や工程内の生産管理ソフトの導入にとどまらず、
・複数の機械等がネットワーク環境に接続され、
・そこから収集される各種の情報・データを活用して、
1 監視(モニタリング)、
2 保守(メンテナンスサービス)、
3 制御(コントロール)、
4 分析(アナライズ)の、いずれかを行うことをいいます」とあります。

ここでの「IoT」は、平成27年版情報通信白書からの引用で定義されており、『IoTのコンセプトは、自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというものである。これにより、製品の販売に留まらず、製品を使ってサービスを提供する、いわゆるモノのサービス化の進展にも寄与するものである。』とあり、かなり閾が高い印象だったのを今でも覚えています。

さらに7-2) ロボット導入促進のためのシステムインテグレータ育成は、従来の「ロボット導入実証事業」通称「ロボット補助金」に関係があり、その事業目的を下記します。
A 労働生産性の向上
B 過酷作業、熟練技能の代替・支援
C 複雑・困難な作業のロボット化
D 三品産業におけるロボット活用
E サービスのバックヤード等におけるロボット活用
F 日常空間におけるロボット活用
G ロボットによる新たなサービスの実現
H システムインテグレータの機能強化(⇒ソフトが大事)
ものづくりだけではなく、多様な産業でのロボット導入を意図していることがわかります。

次に、中小ものづくり企業の第四次産業革命対応を、筆者の支援事例で説明します。

自動車部品下請A社の例
設立:1955年

社長:当時68歳(二代目)
資本金:3200万円
従業員:38名
主要製品:自動車部品の金属加工
事業形態:Tier3下請け
カーメーカーのコストカット要請で、系列内の大幅な価格低下が起きた。当社は引き続き系列に留まれたが、人員削減の結果、外観不良の品質問題が解消していない。現場管理も不十分となり、3期連続赤字となっていた。
従来、外観工程検査は、200%検査のダブルチェックを行っていたが、人員削減で実質シングルチェックとなかった。見逃し防止を目的に、外観検査の機械化を行った。具体的には、検査用カメラを導入して画像比較により、キズや打痕が有るものをはねる様にした。この方策で、外観不良が大幅に削減できた。
また本気の5S活動と現場管理教育で、業績も次第に回復し、黒字転換を図れた。

金属加工下請B社の例
創業:1960年

社長:64歳(二代目)
資本金:1000万円
従業員:18名
主要製品:金属加工挽物
事業形態:産業機械用部品下請け
産業機械製造業の元請けは労務費の安い海外に工場を展開したが、当社は企業体力から海外には行けなかった。また、台湾や中国勢の台頭で元請けの競争力も徐々に弱まり、受注単価の低下が続いている。それゆえ当社業績は赤字が続き、BSが棄損して借入もままならず、古い設備の置換え投資も行えない状況であった。
老朽化の進む設備で他社と同等品質の製品を提供できているのは、指でμ単位の寸法差を感じて加工できる技能、ワークの形状に合わせた設備の微調整を行えるスキル、と言った「匠の技」が当社の「強み」であることが判明した。
この「匠の技のデジタル化」を訴求して、ものづくり補助金の交付を受け、並行して経営革新計画により新規借入を実現して、最新鋭設備を導入できた。併せて、ベテランから若手への「技術技能の伝承」にもはずみを付けた。

A社の例は今から思えば、センサーである複数のカメラにより、外観の画像と言うBig Dataを集めて、良品データとの比較で不良を検出する、一種のIoT+AIと言えます。
B社の例である「匠の技のデジタル化」は、「第四次産業革命」の初期段階と言って差し支えないと思います。

中小企業を含むものづくり現場での第四次産業革命を、筆者が「IoT・AI・ロボット+匠の技・カイゼン=スマートものづくり」と題して、以下の模式図にして見ました。スマートものづくり日本の古くからの中小ものづくり企業には、匠の技、固有の技術、自律的な現場力、カイゼン力、チームワークと言った「知的な無形資産」、言いかえれば「暗黙知・経験知」を必ず持っておられます。「第四次産業革命」ではそれらを「デジタル化」、即ち「形式知化」して集めて(=IoT)、分析し(=AI)、Robotで繋いで、生産性向上や品質向上、原価低減に役立てることが「日本のものづくり再興」にとても重要だと思っています。

それとともに、サプライチェーンの縦の繋がりに留まらず、業種内、異業種間の横の繋がりを追究して行くことが、中小ものづくり企業の持続的な成長の鍵です。どんな中小零細企業でも、単独ではなく「繋がれば、新しい付加価値を生むことが可能」と思っています。

【結言】
1)「IoT+AI」は余り難しく考えず、情報量の多い画像や音声データにより、生産性と品質を劇的に向上可能です。例えば、画像検査装置による自動外観検査が該当します。
2)ロボットは、工程間の複数の装置に同期させる搬送ロボットの導入により、人手不足対策と生産性向上が図れます。他にも、上記ロボット補助金のA~Hもご参照下さい。
3)IoTやAIは無縁とおっしゃる小規模事業者様の場合、まずはIT導入、例えば会計システムや生産管理システムの導入(に留まらず)利活用することから始めるのが良いと思います。利活用で顕在化する課題が、IoTやAIにつながりますゆえ。

 <最後に>
IoT、BigData、AIの対象は、ものづくりだけでは有りません。日本ではサービス業の生産性が欧米に比べて約半分と言われており、IoTやAI導入が期待されています。例えば、金融関係のFinTechや介護サービス、病院の患者ケア等、応用範囲は極めて広いと言えます。一人当り消費×人口がGDPの6割強を占めますので、先進国で最も人口減少が激しく、断トツに借金が深刻な日本では、再成長は容易ではありません。しかしGDP600兆円(100兆増)を「先進国生き残り目標」と考え、第四次産業革命を革新的な生産性向上の手段とすべく、ものづくり事業部は中小企業様を支援して参ります。

 

 

 

 

 

第18回 中小企業も「第四次産業革命」の流れに乗って再成長(その2)

日本のものづくりと第四次産業革命の現状

前回は、第四次産業革命に至る過程とその中身に付いて説明しましたが、今回は日本のものづくりの現状も含めて、現実を直視したいと思います。

まず、世界における日本のものづくりの競争力を下図に示します。元データの出展は日本機械輸出組合で、キャノンがグラフ化したものに筆者が少し加筆しました。
競争力の定義は「利益率×シェア」としてあり、北米、欧州、アジアと日本の、主要企業平均を比較したものです。北米企業がずっとトップを走り、2000年初頭までは日本が2位だったものが、2008年のリーマンショック以降、欧州は勿論のこと、アジアの企業にも遅れを取りビリが続いています。思えば対象の17業界の内、家電、情報通信機器、半導体、液晶等々は、かつては日本が断トツの競争力を誇っていたものが、今は見る影もない業界もあります。図1ここでは日本のものづくりで世界的に存在感が大きい、自動車および自動車部品に注目したいと思います(素材産業や軽薄短小電子部品といった上流製造業も存在感あり)。
日本の自動車産業は、何故、競争力を持ち続けられているのでしょうか?
筆者は自動車部品メーカーにも籍を置いたことが有りますので、そのポイントを以下に纏め、日本のものづくり再興のヒントにしたいと思います。
1)カーメーカー、Tier1, 2・・・と、業界で「強固なサプライチェーン」が構築されている
2)設計開発や工程設計含め、確実で迅速な「情報伝達共有の仕組み」があり動きが早い
) メカ系の加工に特長があり、微妙な寸法誤差を吸収する「すり合わせ技術」に優れる
4)農耕民族特有の、チームで行う自律的自発的な「改善活動」が定着している

ドイツの自動車産業との比較では、上記1), 2)は日本と同様ですが3)は若干異なる様です。すり合わせ技術より図面に忠実な高精度加工が、ドイツの自動車メカ部品の特長と言われています。日本の工作機械は世界一と思っている方も多いのですが、初期精度は同等でも耐久性や繰り返し再現性等はドイツ製に分がある様で、ものづくり補助金でドイツの工作機械を購入した中小企業様も少なからず目にしました。ドイツの機械加工マイスターは装置の保守にもめっぽう強いとJIMTOF(後述します)で伺いました。4) は従来、日本特有の企業文化でしたが、今や世界の製造業がトヨタをお手本にしています。

 これら自動車産業の強みは、パソコンやケータイの様なオープン化とモジュール化がベースとなる電気自動車に置き換わると必要性が低くなり、電子産業のあとを追って衰退する可能性もあります。対応策は、基幹部品の先行技術開発とソフトウェアのプラットフォーム化であり、米国が先行する後者が日本の課題となります。現状は、各カーメーカーが独自で開発していますが、「官からの口出ししない出資」が望まれているそうです。

さて、日本の第四次産業革命の詳細を、日本再興戦略2016から確認しましょう。
経産省の第四次産業革命の内容は(日本再興戦略2016から)
1-1) 人工知能に関するグローバル研究拠点の整備(人工知能とものづくり技術の融合に向けた国際的な産学連携)
 1-2) 最先端AIデータの生成・利活用促進による技術開発・社会実装
1-3) 介護ロボットの導入推進(効率化・負担軽減効果を実証検証し、効率的なサービス提供に資する基準の緩和や、効率的・効果的な職員配置につなげる)
 1-4) ICTを活用した建設現場の生産性革命(iConstructionの推進)
 1-5) データ利活用のための環境整備の促進 とあります。
さらに、官民戦略プロジェクト10の7番目、「中堅・中小企業・小規模事業者の革新」は、我々の事業者様に関係の深い政策です。
7-1) 地域未来投資促進事業(中⼩企業のIoT・BD・AI利⽤、経営⼒向上等の⽀援を図る)
7-2) ロボット導⼊促進のためのシステムインテグレータ育成
7-3) 賃⾦を引上げた中⼩企業・⼩規模事業者に対する助成・⽀援(⇒本件のみ異質)

このうち、ものづくりに関係するものは1-1),1-2)で、ノウハウを如何に数値化して高度化に役立てるかがポイントと思われます。1-3)のロボットは介護が例示されていますが、製造業の工程間の繋ぎにロボットが使われる例が増えています。7-1),7-2)では、中堅・中小・小規模事業者にも、IoT・BD・AI・ロボットの利用促進を図る内容です。
また1-4)は例が建築業ですが、製造業でも生産管理にICTを使っていない中小企業が多く見られます。1-5)は前回述べました、業界で横串的に適用可能なプラットフォームの整備を指します。
この様に見ますと第四次産業革命は、やはり、ものづくりが最も密接に関係する成長戦略と捉えて良いと思いますし、日本の「産業の将来像」への試金石でもあると言えます。

次に、ドイツで見られた工作機械メーカーのものづくり革新への取組みに対して、日本の工作機械メーカーの状況を、工作機械見本市であるJIMTOF2016でヒヤリングを行いました。質問の前提条件は、
IoT:工作機械毎の製品別の、加工進捗、品質特性等の情報をBig Dataとして集める
AI:集めたBig DataをQCDが最適化される様に分析を行って、工作機械に指示するとして、前回述べましたドイツの特徴である製造業での水平連携の内容としました。

ヒヤリング結果を下表に示します。IoTでデータを統合的に集めることは既にでき始めている様ですが、AIで最適生産解を導いて指示することまでは、FAの世界のリーダであるファナック様でも「将来課題」との答えでした。ポイントは二つあり、第一はIoT+AIで何をするのか(目的)、第二は繋ぐためのプラットフォーム構築(手段)でした。

図2

またヒヤリングでは「学」との連携も話題となり、ドイツは「産学官」での全方位的な取組みに対し、経産省の取組みは「官民」戦略プロジェクトとなっています。しかし実際には、IVI(Industrial Value Initiative)では法政大学の西岡靖之教授がリーダーとなって、「産学」で「つながる工場」をプラットフォーム構築含めて推進され、IoTデータ流通では慶応大学の村井純教授がリーダーとなって「産学」で推進するなど、むしろ「官」より「学」が深く関与しています。ドイツとアメリカに出遅れた本分野で「官」に期待したい政策は、個人的には「第四次産業革命減税」ではないかと思います。新興国のハイテク産業立ち上げ期には、ほぼ例外なく法人税等の減税処置が寄与していますし、補助金は将来世代への借金を増やし、国の口出し介入(研究会でお聞きした意見)が懸念されるからです。

次回は、中小ものづくり企業の「第四次産業革命」への処方箋、に付いて述べます。

第17回 中小企業も「第四次産業革命」の流れに乗って再成長!

アベノミクスの旧三本の矢「成長戦略」が、政権発足以来長らく不発でした。実は昨年度、ものづくりに深く関係する成長戦略が体系化されました。「日本再興戦略2016」における「官民戦略プロジェクト10」の一番目「第四次産業革命」です(名前は前年度に初出)。
経済対策を通じた『日本再興戦略2016』の実施の加速について
日本再興戦略2016

今回のコラムは「ものづくり再興」を志して診断士の資格を取った筆者が、三回シリーズ、1)第四次産業革命/Industry 4.0とは、2)日本のものづくりと第四次産業革命の現状、3)中小ものづくり企業の第四次産業革命への処方箋、の順でお届けします。中小企業様が「第四次産業革命」の流れに乗るための情報と取り組み方法をお示しします。

尚、旧三本の矢の「異次元金融緩和」は、副次的な円安で輸出増という大きな効果を上げましたが、本来目的の脱デフレには届きませんでした。「財政出動」は日本では常態化されて波及効果も少なくなり、国の借金増加と自助努力が削がれることが心配です。また2015年秋に発表された新三本の矢、「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」は、目標としては重要です。お金を余り使わない規制緩和等具体策の早期実行が待たれます。

一方、支援中の中小企業様へのヒヤリングでは、大企業の好業績が末端の中小企業に滴り落ちるトリクルダウンに関し、「売価は上がらず、実感がない」との意見が大半でした。市場縮小の中、国の支援策は世界でも類をみない充実度ですが、経営の自律化を阻む側面もあります。我々も「上げ善据え膳」は考えもので、人と組織の成長を目指して参る所存です。

1)第四次産業革命/Industry 4.0とは

第四次産業革命はドイツのIndustry 4.0(英語)に端を発し、起源は2008年リーマンショック後の工作機械メーカーのシステム化と言われています。メルケル首相が2011年に未来プロジェクトの高度技術戦略として取上げ、国内の自動車産業を始めとする、ものづくり高度化を産学官挙げて取組むIndustrie 4.0(独語)として体系化されました。

IoTの名称発祥の地、米国でも同様の動きは勿論有りました。GEのIndustrial Internetがその代表格ですが、こちらは民間主導です。

日本の第四次産業革命は、端緒は日本が得意なロボット革命イニシャティブでしたが、経産省の内容を見る限りドイツと余り変わらないとの印象ですので、旧三本の矢の成長戦略に当初から据えて欲しかったと思います。
中身に入る前に、念のために過去の産業革命をおさらいしておきましょう。

  • 18世紀末の蒸気機関と製鉄産業がもたらした「第一次産業革命」
  • 19世紀末の石油利用の化学新素材とガソリン自動車の「第二次産業革命」
  • 20世紀後半の半導体の進歩によるIT革命とも呼ばれる「第三次産業革命」
  • 今回のIoT、BigData、AI、Robotによる「第四次産業革命」

第四次産業革命でどの様な未来を描けるか見えない部分もありますので、過去の3つに比べ小振り感もありますが、「破壊的イノベーション」には違いありません。また、初期には産業革命の間隔は1世紀を要しましたが、今回は半世紀程度とスピードが速くなっています。

さて、本論に入ります。ものづくりは従来「サプライチェーン」に代表される、垂直的な連携による生産の仕組み高度化が行われて来ました。しかしIndustry 4.0ではIoT、AI、Robot等で下図に示す様な、主に水平的な連携を目指しています。またITとの区別から、CPS(Cyber Physical System)とも呼ばれています。

Horizontal Value Network
“Horizontal Value Network” Source: Industrie 4.0 Final report P22

では、日本でも古くから行われてきたFA(Factory Automation)との違いは何でしょうか?またFAで使われているM2M(Machine to Machine)とIoTは、何が違うのでしょうか?
FAとM2Mは社内ローカル接続のClosed Drainで、IoTはInternet環境のOpen Domainの違いと言われていますが、むしろシステムのClose/Openがポイントだと筆者は思います。

 第四次産業革命では、IoTで収集したBig DataをAIで分析して、装置間の横連携、Robotを介しての装置間の縦連携、輸送手段による工場間の連携、更には最適在庫を目指した顧客との受注出荷連携等、なるべく人手を介しないで生産の最適化、高度化を行う全体システム、と位置付けて良いと思われます。このことから、企業間、業種間にまたがる、共通プラットフォームの構築が鍵となります。

尚、ドイツでは装置(もの)から発したのに対し、米国のIndustrial InternetはIT(Internet)が源であり、クラウド上にものづくりに必要な情報を集め、企業間連携もクラウド上で行うもので、原則、基幹企業がシステムの提供を行うケースが多いようです。

 この様な「IoTで繋がるものづくり」において、人はどの様な役割を果たすのでしょうか?実はここが一番大事な部分で、集めたデータをどの様に分析するか、その尺度は、最適化するための手法は、等々、ものづくりに必要なノウハウが密接に関係します。その意味で、第四次産業革命は、システム全体は開発投資も含めて大企業マターですが、個別のものづくり最適化は、中小企業が持っている「暗黙知」や「経験知」をアルゴリズムに落し込むことが必要となってきます。これは第3回で詳細を述べる予定です。

 以上、ものづくりに密接に関係する第四次産業革命の起源、およびドイツと米国の状況を見て来ました。第二回では、日本のものづくりと第四次産業革命の現状に付いて述べます。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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