ものづくり企業はとかく「生産力」に注力しがちですが、企業成長には「商品力」と「販売力」、
そして「経営力」が欠かせません。
ものづくり事業部の専門家がリレー連載して「ものづくり経営革新への道」と題して、
各種人材育成情報を提供していきます。
第1回は「商品力強化のツボ:商品化コーディネーターを育成しよう」です。
昨今世界中でキックススターターやファンドから融資を受けた「ものづくりベンチャー企業」が続々と
新開発商品を上市(販売開始)しています。
彼らは自ら強みである商品企画と開発設計にのみ注力して、その他の機能をアウトソースすることで
商品化の実現力とスピードを確保しています。経営資源の少ないものづくり中小企業が、
魅力ある新商品を上市するには、この「ものづくりベンチャー企業」方式を採用すると良いでしょう。
しかし不足する機能をアウトソースすると言っても、そもそも商品化には何が必要で
どこにアウトソースすれば良いのかわからなければプロジェクトは遅延・迷走・失敗します。
そこで「商品化コーディネーター」が、新商品のゴールである商品販売に漕ぎ着ける計画と実行を担います。
「商品化コーディネーター」は何をするのか?
商品化(新商品の企画・設計・生産~販売開始)の主な機能と業務は下記のようになります。
- 商品企画 :商品企画・市場調査・設計構想・商標登録
- 技術開発・知財:要素技術開発・特許取得・特許調査
- 基本設計 :メカ設計・回路設計・ソフト設計・要素部品設計
- 周辺設計 :金型・プリント基板・パッケージデザイン・タグデザイン・取扱説明書・生産工程設計
- 試作 :原理試作・二次試作・量産試作
- 試験・評価 :評価試験・デザインレビュー(DR)
- 品質保証 :信頼性・安全規格認証・フィールドテスト・リスクアセスメント
- 販売準備 :カタログ・Web広告・メディア広報・展示会・販売チャネル
- 間接業務 :アウトソース契約書・OEM先選定・輸出入管理・アフターサービス
これらの機能や業務の中で、自社にないもしくは弱いものはアウトソースすればよいのです。
しかしこれらの必要な機能を理解して、契約作成・日程管理・品質確認しない限り、
プロジェクト(商品化)の成功は望めません。
「商品化コーディネーター」が、商品化プロジェクト全体のガントチャートを作成し、
進捗管理を行うことでゴール達成をナビゲートします。
この「商品化コーディネーター」(プロダクトマネージャーから人事権・損益責任を取り除いた
機能横断スタッフ)が、商品化の成否をかなり左右します。
「商品化コーディネーター」経験専門家の支援を受けながら、
自社の「商品化コーディネーター」を育成していくことが、ものづくり企業の「商品力」を上げるポイントです。
なおものづくり部品メーカーの方は、「商品化」機能は必要ないとお考えの場合が多いようですが、
違います!
少なくとも設計機能を有するものづくり企業の全てが、商品化の質を上げる為に
「商品化コーディネーター」を育成することを推奨します。
中小企業診断士:遠山純夫