ものづくり企業では「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という考え方のもと、商品開発を進めていくことがあります。聞いたことがあるという方も多いかと思いますが、改めてご説明しますと、一般的に「マーケットイン」というのは、顧客や市場が欲しいと思うものや求められているものを開発しようとする考え方で、「プロダクトアウト」というのは、自社の持つ技術や設備など提供する側の発想から商品を開発しようする考え方と言えます。
一時は「顧客ニーズに合わせたものづくり」として、徹底したマーケットイン型の商品開発が支持されたこともありましたが、やはり顧客の声だけでは画期的なイノベーションは生まれず、プロダクトアウトの思考で開発することも重要だと再認識されています。この二つはどちらが良い悪いではなく、自社のコア技術や主力製品、自社と取り巻く環境やマーケットに合わせて、柔軟にその対応を変えていく必要があります。
私の知っている企業で、「マーケットイン型の商品開発」に取り組み、ヒット商品を開発した部署がありました。営業・マーケティング部門の徹底した調査・現場からの情報収集、それに対応する素材研究や設計に対応した開発部門、さらに外注に頼ることなく、自社のコア技術で製造できるラインを構築した製造部門。まさに三位一体の取り組みにより、メーカー側では検討もしなかった製品ができあがったのです。
しかし、この成功に至るにはさまざまな障壁がありました。顧客のニーズに対して、「こんなものが売れるのか」「作るのが難しい」「在庫が残ったらどうするんだ」など、部門間のコンフリクトが発生しました。これに対して、部署を牽引するマネージャーは3部門がうまく情報を共有することができるようリーダーシップを発揮し、各部門のモチベーション維持を図りながらプロジェクトを統率しました。
ヒット商品の開発において、いずれのアプローチにしても開発・製造・営業の各部門が一体となって取り組まなければ成功はありません。自社のコア技術を中心に部署のリーダーが各部門をマネジメントし、ひとつの目標に向かって互いの情報を共有しながら進めていくことは、マーケットイン型商品開発の成功要因の一つと言えるでしょう。