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成功する企業はベストコストをつくり込む(1)

★ このシリーズの連載にあたって

 以前、協同組合さいたま総合研究所(さいたま総研)のメンバーが『成功する企業には訳がある』というタイトルの著書を出しました。
 これが余程気に入ったのか、当時のウエブ・デザイナーは、さいたま総研のホームページ(HP)のタイトルに、このフレーズを使ったものでした。
 かく言う筆者もそれに触発され、このHPにリンクしたブログに『成功する企業には新商品開発がある』を連載してきました。(このHPのアーカイブ2010年12月ご参照)
 さらにこの度、さいたま総研ものづくり事業部独自のHPを立ち上げるにつき、筆者のもの書き魂がムラムラと燃え上がって『成功する企業はベストコストをつくり込む』を再び踏襲することになりました。

 ★ ベストコストという造語から

 もう古い話になりますが、1995年(平成7年) 2月号 (Vol.41 No.2)、日刊工業新聞社の『月刊工場管理』誌に『低コスト体質を身に付け“ベストコスト”をつくり込む』というシリーズを寄稿しました。つまりベストコストは、このとき初めて使った筆者の造語だというわけです。
 その後、ベストコストをつくり込む実務的な試行は、2000年(平成127年) 11月に(株)かんき出版から『コストデザインの構築と実践』を上梓させることになります。
 この本は、会計系でも生産管理系でもない、コストダウンの実務者たる筆者の書き下ろしです。つまり日常的な活動の範囲内では、もう凝り固まってしまったコストがあります。それでもなおダウンが要求される市場ニーズです。
 そんなコストダウン活動が、限界の壁に突き当たったとき「製品化の初めからベストコストをデザインする手法」の開発までを披露している本なのです。
 たしかにコストダウンは、成功する企業の訳に違いありません。この真実は、書籍出版がインターネット旋風に押しやられても、変わる訳ではないのです。ならばこの真実を今度はインターネットに載せてやろうじゃあないかとなりました。

 

1.コストは人によってつくられる

1-1 コストは品質とともに造り込む

● ベスト品質なら知っている
 ものづくりの『品質管理』では、よく「工程で品質を造り込む」といった表現が用いられます。たしかにものづくりの『検査工程』では、品質のチェックはできます。が、検査段階になってしまっては、もうチェックされた結果以上の品質を造り込めません。
 ですから品質は検査工程以外の『ものづくり諸工程で造り込むもの』という意味は正解です。つまりものづくり事業において、品質維持を目的として活動する品質管理分野では、製造品質を意識的に「造り込む」といったような表現が自然にでるのでしょう。
 とすれば当然、ものづくり事業の一面である『原価管理』や『コストコストダウン活動』においても、この「工程で造り込む」というフレーズが使えると思います。
 いわゆる『ものの品質』には、『設計品質』『製造品質』『市場品質』の三つの側面があります。商品として肝心の市場品質は、不良、欠陥、障害等の不具合がないベストの状態が『研究』『企画』『開発』『設計』『加工・製造』『流通』『アフターサービス』といった、供給プロセス全体を通して実現した結果に違いありません。
 供給業者としては、開発・設計工程による設計品質と、生産工程による製造品質において、商品やサービスの「不良・不具合がゼロ」であるように造り込めれば、管理結果においても「目標どおり」のベスト品質になるわけです。 

● こんな造語を使うわけ
 ところがものづくり企業が、お客様からいただく商品やサービスの『お代』に含まれているコストは、単に工程においてのみ形成されるものではありません。会社の全般的な経営活動や、あるいはもっと広く社会現象全般の状況において決まってくるのです。

 しかし『もののコスト』は、絶対にものづくり工程で『なりゆき的』に決まってしまってはいけません。もちろん「コストがゼロ」ではものづくりができません。
 経営活動としてのコストダウンでは、ゼロ・コストを目指すわけにはいかないのですが、より『ベストな状況のコスト』を造り込み創り込んでいくことは、絶対的なコストダウン目標になるのです。
 そこで筆者は、ベストコストという用語を使うわけです。品質と違って『コストを造り込む』というと「お金を十分につぎ込んで、贅沢品を造り上げる」といったイメージに転じかねません。これではベストコストが「不必要なくらい」に「十分なお金をかけた商品づくり」のような感じになってしまいます。バブル経済時代の造語でから、コストはベストという用語が、現在では余計に馴染まないのかもしれません。
 しかしコストダウンの意識からは「コストが下がった」のではなく、絶対に意図的に「下げる」ことによって「つくりこんだ」ものにしたいわけです。この意思は、あれから20年以上も経った現在でも変わりません。
 当然、ベストコストは「なし得る限り最高にコストダウンされたコスト」という概念です。ですから『成功する企業』なら、ベストコストは不況の続く今こそ、じっくりと「つくりこむ」ことにしたいというのです。 

● ファジイーな管理目標
 生産管理手法の中には、ZD(Zero Defect)といった『無欠点運動』があります。では品質目標の「不良ゼロ」というように「ベストコストを数値目標で示せ」となると、これが容易なことではありません。

 原理的に、コストは「ゼロにならない」からです。かといって、いろいろな要因で決まるコストは「これくらいまで下がればいい」という数値で示せるレベルを「的確に探す」ことも難しいのです。コストダウンには、活動の結果に対する満足水準があってはいけません。
 なぜならものづくりされた後で、本当は「もっと他にコストダウンできる余地があった」とか、「生産条件が変わったから実際原価はもっと下がったはずだ」などというケースは、実務の世界にはいくらでもあるからです。
 しかし人々の共同作業共同行為には、誰もが認識できる共通目標があった方が、やはりいいのです。そこで曖昧模糊とした実にファジイーな『観念的目標』であってもいいのです。いわばスローガンのように、目指すべきベストコストの概念があった方が、ベストコストを造り込むために不可欠だというわけです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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