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成功する企業はベストコストをつくり込む(21)

4.人の知恵にみる標準化

4-11.共通化推進に必要な仕掛け

● 社内情報の潤滑が一番
 生産要素それぞれは『新規設計』や『設計変更』など、製品が変わるときこそ共通化を図る好機です。標準は製品の開発・設計にかかわりなく、まず制度を確立することが前提ですから、単独で標準化制度づくりに取り組めます。つまり共通化のような、技術高度化などのきっかけが要りません。
 共通化は、本質的に『強制的な制度』ではないのです。かといって、現場当事者の意識に「任せっきり」で「成り行き次第」というのでは、会社として統制のとれた共通化になりません。 

 ですから標準化のような『トップダウンの制度』でなくても、トップ・サイドでは『ボトムを集結』させる仕掛けが必要になるわけです。
 共通化を推進させる仕掛けは、第一にやはり情報です。まず先行者が見つけた共通化対象は、現状においてベストであることが、確かめられる情報を必要とします。
 したがって共通化したい対象と手段は、図表4-11の真ん中に示すようなデータベースに整理されるでしょう。さらに最新情報は、社内関係者の誰にでも提供されることが共通化の大前提になるのです。
● 第二、第三の仕掛けは
 次に『後続する者』が『先駆者』の採用を追従できる「ここに」「こんな先例」があるという情報が知れ渡るよう、後続設計者の誰にも的確に認識させられるようでなければなりません。
 会社の中には、既存の『素材』『材料』『部品』『加工品』などの生産対象や、『機械設備』などの生産手段がいっぱいあるものです。また生産主体たる作業者も沢山います。ですから常識的なことですが、社内情報が厳重に管理された企業秘密事項でありながら『届くべきところ』には、的確に届くようになっていることが第一です。
 特に生産対象の標準化については、組立加工型産業だと中小規模企業の小型製品でさえ、取り扱う部品の種類が、合計一万種を越えるのはざらにあるでしょう。
 そして仕掛けの第二は、設計者に共通化すべき生産要素の選択基準を与えることです。もちろん設計者への提供データベースの『整理方法』と、この『選択基準』はマッチングしなければなりません。
 たとえば『常用部品一覧表』だとすると、表の『配列』やデータの『配布系統』などの『取扱規定』のような社内ルールが、体系的に決められていなければなりません。
 また一覧表は、部品名別に構成され『性能』『規格』『単価』『購入先』『年間購入量』などの項目別の諸情報が盛り込まれていることです。そしてこの項目は、使用部品を選択するときの基準項目と合致しなければなりません。
 これらの情報体系は、現場への支援システムです。設計者や作業者が、これを活用すると「自分の仕事が楽に進む」とばかり、自主的に競って利用するような利便性が、常用部品一覧表に与えられれば、第一、第二の仕掛けは成功です。

● 何を何によってどれ程共通化するか
 さて、第三の仕掛けは少し変わって、共通化のチェック体制です。標準化でも、設計者に「生産部門が請けない」という、嫌らしい『村八分戦術』のほかに、なお『懐柔策』や『厳罰に処すほど』の強制力がなければ、容易に進まないものです。
 それに対し共通化は、制度でなく各人の認識だとすると、新しい設計がどれほど共通化されているか、客観的にチェックする必要があります。
 そこでいわばチェックリストの一例として図表4-12のような、共通化率なるものを算出するガイドラインを考えました。つまりある設計に当たり、採用した「先例がない部品・材料」を新しく使用する点数が多ければ、共通化率は低いという概念です。
 設計者は基準をみながら、使用実績のある部品を「どれほど活用したか」自分で新しい部品を「どれだけ探したか」といったようにセルフチェックができます。それによって、共通化への認識が高まるだろうということです。
 しかし設計者が真剣に考えているときは、そんなことに全く無頓着です。ですから、会社にとって大切な想像的設計を阻害しないため、共通化率のレベルは単なる目安とし、審査といっても合否の判定は付けないのです。また共通化率のチェックといった、想像的設計からいえばムダな仕事は、生産管理担当など第三者の手に委ねるのも良案です。
 ただ図表4-12を基にしたチェックによって、設計評価の水準がわかります。共通化基準から設計対象と共通化率の水準によっては「どの程度の緻密さ」でチェックをしなければならないかということが想定できます。類似設計でありながら、共通化率が低いと「なぜそうなるのか」新製品のスペックから、設計者に事情聴取し、再検討を促すこともできるというものです。

● 共通化推進責任者という存在
 設計評価のようなチェックは、責任者による検図制度があるから不用といった程度の機能ではありません。設計者は、製品の『性能』や『品質』『スペック』をいかによくするか、またはいかに『部品点数』を少なくして『高機能化』するかといった課題に夢中です。
 そんな状況の中で責任者による検図は、設計の狙いどころが「間違いなくできているか」をチェックするのがせいぜいです。
 共通化率は、できれば第三者的立場で確認します。コンピュータの部品マスターが完備していれば、既に常用部品がありながら「新しい部品を使っている」状況は、直ぐにわかるはずです。したがって、共通化推進責任者のような第三者的な専従役職者でなくても、容易にチェックできるというわけです。
 出荷商品の品質に関しては、品質保証責任者が『出荷停止』を求めるような、強い権限が与えられる場合があります。同様に共通化推進責任者には、共通化に関して不十分が過ぎれば「設計変更を求める」くらいの権限を付与し、図表4-13に示すような職務を推進させるのです。
 もちろん共通化推進責任者は、特定の生産対象や生産手段を共通化することの可否について、技術的評価を下せるだけの資質が求められます。
 しかし『設計変更を求める』くらいの権限さえ持つほどの職務が、満足に遂行できる資質は「社内にいない」というでしょう。また『新規設計』や『設計変更』の頻度を考えると「専従者を張り付けるのはもったいない」という会社があるでしょう。
 だけど技術系の『定年退職者』などは、このスタッフに適任です。そしてスタッフの助言を得て、社長自身が権限を発するのです。共通化は、専従責任者を設置しなければならないほど重要な、ベストコストに接近できる基盤だということです。

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