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成功する企業はベストコストをつくり込む(36)

6.コストはデザインできるか

6-3 品質にコストがついてくる

● 適正ではない適性コスト
 商品に『あるレベルの品質』をもたせてつくりこむためには、絶対に『あるレベルのコスト』が必要となります。
 ですから、まだ概念に過ぎないベストコストをつくりこむためには、はじめに『品質の水準』を具体化しなければなりません。つまり人々の生産活動において、品質第一主義はゆるぎないからこそ、ある品質レベルにおける市場での適性な販売価格が生まれてくるのです。
 したがって販売活動の側面からみた適性価格の根拠になる適性コストとは、あるレベルの品質を形成するために必要な、いわゆる「世間相場的、現実的」なコストの最低水準を指しているはずです。が、必ずしもそれが、適正コストとはいえません。
 何故ならば『現実的』といっても、単に世間相場というだけでは、まだ観念的な存在であって、それをもって適正コストとはいえないのです。が、ベストコストよりも具体的な数値表現になることに違いはないのです。
 ただ留意すべきは「その品質にしてそのコスト」が、現状において『適性』だと思われていても、時間的、場所的、技術的な諸条件をもってしても、絶対的に「適正なコスト」であると言い切れるわけではないのです。

● 適正コストは相対的な存在に過ぎない
 品質とコストの相関では、図6-6が浮かびます。

 つまりVA概念では、もしもコスト:や価格:が下げられないのなら、機能:や:品質を上げても価値:は大きくなるわけです。
 機能:や:品質が上がることによって、結果的に価値:が上がることはそれで結構ですが、ベストコストの概念はVAの考え方とは違います。あくまでも『特定な品質レベル』における『絶対的にベスト』なコストでなければなりません。
 ですからベストコストは、あるレベルを保つ特定の品質に存在する適正コストよりも、低いレベルに存在するはずです。適性コストは、そのレベルを「適正だ」と感じた時点で固定されてしまいます。
 しかし市場の競争環境は常に変化していますから、適正コストも常に変化しているはずです。要するにコストダウン活動は、いつもこの『変化に追従』して続けられなければならないのです。

● はじめから引き分け狙いはない
 世間相場的な適性コストの達成で満足していたのでは、競争社会で中級レベルに甘んじているのと同じです。たとえばはじめから『引き分け狙い』の勝負では、相手のほうがズッコケでもしないかぎり、絶対に勝てないということです。
 さらに世間では、技術力の向上などによって、一定の適正コストでより高い品質を作り出す、手段なり方法が開発された場合です。
 そうなれば当然、それまでのコストはより高い品質を作り込むための、新しい適性コストに変わります。そのときのベストコストも、新しい適正コストより低いレベルに、依然として存在するはずです。
 もちろん現状の適性コストは、直接コストだけでなくトータルコストです。したがって間接コストが割高のため、特定の品質レベルがトータルの適性コストで『つくりこめない会社』は、競争社会で勝負できません。要するに、他社商品に比べて「品質レベルは勝り」「直接コストも適正なレベル」であったとしても、間接コストが「高ければ負け」になるのです。
 どんな会社でも『適正なトータルコスト』がサバイバル(生き残り戦)の決め手になります。いわば競争社会の基本原理のようなものですが、ベストコストをつくりこむ前提となるのは先ず、品質レベルに対応した世間並の直接コストです。適性コストで一定の品質がつくりこめる前提がなくて、適正コストの水準も掴めないし、もちろんベストコストを目指せるはずがないのです。

● 安くて良い商品だけでは
 ところで「お客様は神様です」という台詞は、たしかに説得力のある格言です。ですからお客様を神様(買い手)と仰ぐ氏子(売り手代表のR&D部門)の方では、コスト決定要因の大半を占める『商品企画』に際し、神様がどんな品質について「お望みになるか」を知ろうとします。が、ご意向は容易につかめません。
 そこで、やれ『市場調査』だの『情勢分析』や『テストマーケティング』だのと、祭事(売り出し)を前に祭壇では、神様への御供えに関し、姦しいことしきりです。

 しかし図表6-7のように、商品企画担当で肝心の氏子が迷っているだけでは、一向にこのドラマの「らち(・・)が開かない」わけです。そこで登場するのが、神様に代わって社内に御告げをする、神主さん(営業部門の方々)だという筋書きです。

 新商品企画に当たっては、神様のお側近くに仕える神主さんを『企画会議』に加えます。ただ、神主さんの腹には「安くて良い商品をお供えしたい」願望が、常にあります。が、『安くて良い商品』と告げられただけでは、氏子の開発部門には「品質無限大、ゼロコストでつくれ」としか聞こえません。「オレ達は、打ち出の小槌をもっちゃいない」といいたいところでしょう。
 しかし安くて良い商品という、一見矛盾するこの要求が、社内で「開発部門を刺激」し「販売員自身を奮い立たせる」のも一面の事実です。売り易い商品ができれば、神主さんのお供え(販売活動)が楽になります。販売員が楽になることは「会社自体が楽になる」ことを意味します。
 それにしても、良い商品が「どのように良い」のか、神主さんの立場から品質水準を具体化できなければ、神様の本当のお告げにならないのです。つまり買い手の真意がわかったことにならないのです。
 安くて良い商品をお供えできればいいことは、氏子なら子供にだってわかっています。品質レベルを示さなければ、安い商品を開発するどころか、安いも高いも何が良い商品になるのか、皆目見当がつきません。当然『普及品なら普及品』の『高級品なら高級品』としての適正コストが「どのレベルにあるか」がわからないというわけです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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