ものづくり事業部

事業部トップ>コラム>成功する企業はベストコストをつくり込む>成功する企業はベストコストをつくり込む(41)

成功する企業はベストコストをつくり込む(41)

6.コストはデザインできるか

6-9 許容原価はベストコストにあらず

● 産業類別による制約
 たしかに原価企画の考え方は、素晴らしく思えます。また現実に原価企画を採用し、コストダウンの成果をあげた事例は、多く発表されています。が、ここまでの説明からお気付きのように、原価企画は『組立加工型産業』に有効な論理だといえます。
 多くの『素材装置型産業』のケースでは、仮に「原価を企画した」としても、許容原価の製品別割付をすることや、その割付を実践するには論理的な無理があるのです。
 たとえば「原油価格が上がる」ことによるコスト高は「商品の値上げ」以外の手段や方法で取り返せない『石油精製業』などの立場になってみればわかります。つまり原価企画というコストダウン手法は、業種や業態によって『理論の適用』に制約があるということです。
 しかしコストダウン技法として『ジャスト・イン・タイム』のTPSNPSにしてもそうですが、適用範囲に制約がある考え方は、他にいくらでもあることです。およそ技法というものは、特定の業種に「大きなインパクト」を与える方が、その業種にとっては真に効果的で、むしろ高く評価されることに違いありません。

● 導入事例のある企業と無理な企業
 では『組立加工型産業』であれば、どんな企業でも「原価企画が導入できるか」となると、必ずしもそうではありません。そこでもうすこし突っ込んで、導入企業と問題がある企業の共通点を考えると、図表6-14のように整理できるでしょう。

 表の中の『導入が無理な企業』にみられるような企業には、原価企画を「導入したければ」設計・生産条件の仕組み自体を「変更しろ」とはいえません。 しかし日本で生まれた原価企画は、Cost Planning ではなく Target Costing と命名される先生がおられるように、標的を『絞り込んで』責める積極的なコストダウン技法であることに変わりはないのです。したがって、設計・生産条件の仕組みは変えずに、この考え方を応用した手法の手直しができないかと考えてみることにしました。

● 単に管理者用のツールなのか
 さらにもうひとつ原価企画は、考え方の基本的な部分において『筆者の主張』に合致しない点があります。それは、許容原価ベストコストは違うということです。
 原価企画では、許容原価内に入れられるように「原価を企画」したうえで生産現場がそれを追及していきます。したがって『好況時』とか、『高利益率の商品』がある会社では、許容原価そのものが甘くなります。
 許容原価を追求する現場では「いまは好況ではない」とか「許容原価に納めるだけで精一杯」というのが実情でしょう。が、コストダウンの絶対性からいえば、やはり許容原価はベストコストではないのです。
 その点を考慮しない現場活動があるとすれば、やはり原価企画は管理者が行う経営計画の『予算を組むための方法』であっても、コストダウン技法ではなくなります。

● 生産現場からみた原価企画
 事実、筆者がヒヤリングした社の事例でも、原価企画導入の動機は、OEM製品の納入先に「厳しい価格を突き付けられた」からでした。つまり一定の利益を確保しながら、その『取引を継続』するためには、どうしても許容原価の中に「コストを納めること」が生き残りの必要事項だったのです。
 しかし社で『原価企画を導入』し『厳しく原価管理』されていたのは、特定のOEM製品の生産部門だけだったのです。つまり原価企画という手法のもとに、管理部門が旗を振り、そのもとで汗をかいたのは特定現場だけで、全社が一体となってコストダウンに取り組めていたわけではないのです。
 その理由は、図表6-14に示した「導入を躊躇する」事情をもった特定の部門が、社内にもあるというわけです。このような社内の部門別事情は、どこの会社にもあるでしょう。
 また原価企画は『直接製造コスト』の企画手法です。可能性のある部門・部署から、段階的に導入するのでは、間接コスト負担率において部門別の公平性が保てません。
 その意味でも原価企画法は、小規模企業でさえも現場実務者の間で部門別『不公平感が残り』全社統一のベストコスト追求手法になり難いのです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

詳細はこちら >

執筆者

月別アーカイブ

このページの先頭へ