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成功する企業はベストコストをつくり込む(46)

7.ベストコストづくりを考える

7-5 コストレビューの進め方

● コスト構想というスタート点
 最初に樹立したコスト構想は、ベストコストつくり込みの単なるスタート点に過ぎません。コストに関係する新しい知識やアイデアは、各種の実験などを経てより深められます。
 開発・設計のステップが進み、やがて試作品が完成することによって『紙上の構想』が品質コストも、より具体的な『新製品の姿』をみせてきます。
 コストレビューすなわちCR(Cost Review)は、これから開発という『未知の世界』に向かって実行する『大きな投資』に当たって『リスクを最小限』にするための処置です。つまり生産体制が固まってしまう前に『設計されたコスト』を評価するのです。 要するにCRは、開発・設計のステップに合わせてレビューを『深める行為』だというわけです。CRの『段階的な実施』は、図表6-16(’14.12.29掲載)に示した新商品開発プロセスに重ねると、図表7-6のようなタイミングになります。
         
● 後戻りは愚の骨頂

 この図では、CRを三段階に設定しています。完成品を構成する部分機能の規模によっては、それぞれの段階で部分機能別にレビューを行ってもよいのです。が、少なくとも試作品を前にして行う『第二回目レビュー』の位置付けだけは、しっかりさせておきたいところです。
 なぜならば開発ステップがこれ以上進み、詳細設計が終了してしまうと、コスト要素が『固まってしまう』からです。こうなると、大幅な設計変更でもしない限り後戻りできなくなります。
 新製品開発が品質第一主義であるかぎり、開発・設計者が常に念頭におかなければならないのは『設計品質の達成度』です。ですからデザインレビューすなわちDR(Design Review)は、設計終了後に変更を要します。DRはそんな非効率を避けるための『必須事項』だといえます。
 DRは目標品質が「つくり込めたか」「否か」が、開発ステップに沿って評価されます。ですから『慣れているDR』を基準において、CRは必ず「DRの二週間以前に行うこと」としました。この順を逆にすると、開発スケジュールに追われている当事者達は、DR後の『慣れないCR』が、ほぼ確実に省略されてしまうでしょう。

● 参加者をどうする
 レビューの進め方を周知させるために、筆者は開催時期参加者に関する『コストレビュー実施規定』を設定しました。開催時期は上記のとおり、3段階に分けます。ですから規定には、参加者のほうを明記しなければなりません。
 まず従来からの慣れで、デザインレビュー(DR)は『開発』『設計』『販売』『サービス』部門の関係者として再確認しました。そしてコストレビュー(CR)のほうは、新たに『開発』『設計』『生産技術』部門の関係者としたことです。
 その理由は、各々の部門意識がはたらいて、DRでは生産部門が、CRでは販売・サービス部門が、自部門の『利害を主張』する混乱を懸念しました。これはCRを先行し、その後にDRを置く関係からも、配慮しなければならなかったのです。
 つまり『設計品質の範囲内』でベストコストを目指すCRに際し、販売・サービス部門の関係者は、コスト意識よりも『盛り沢山』の過剰品質を求める傾向があります。また一方で品質第一主義でなければならないDRに際し、生産部門の関係者は「こんな造り難い設計はダメだ」と言いかねないのです。いかに『造り良く』するかは、生産技術部門の本分なのに、こんな社内ニーズが専横すると、開発・設計者は落ち着いて『業務に専念』できません。
 この人選は、筆者自身の経験に基づくものでしたから、意外に異論がなかったのです。が、開催時期については「DRで仕様変更を要求」されると、先にやったCRは「やり直しになり、二度手間になる」からという言い分もありました。つまりCRは「DRと一緒にやれば十分ではないか」との異論がでたものです。
 しかし新製品開発の企画段階から、みんなのコンセンサスを得て『品質目標が先行』してきたのです。その目標品質に基づくベストコストづくりです。むしろ先行させたCRで開発されたVAアイデアが、DRへ反映できるのだから「この手順で行こう」と説得したものです。

● 節目に実施する意味
 仕様変更がCRの前提として当たり前になると、いつまで経っても適性コストの水準さえ掴めなくなります。これではコスト見積りの見通しが立たず、開発ステップの『節目に行うCR』の意味がなくなります。
 またそればかりか、DR自体も節目を失ってきます。開発者や販売員が、早く上げて「売上に貢献したい」と思う気持ちはわかります。が、CRもDRも設計が固まってからやる意味は全くありません。
 節目のない開発の結果が、顕著に現れるのは『開発期間の延長』です。仕様変更とDRが鬼ごっこをしていては、はじめから開発スケジュールが無いようなものです。当然、開発費はその期間に比例して膨張し、タイミングのよい発売も期待できません。ここは絶対に『急がば回れ』になるわけです。
 新商品スペックで表示された開発目標は、よほどの状況変化がないかぎり、安易に変えてはいけません。スペックが直ぐに変わってしまうのでは、その新商品が『売れるか』『ヒットするか』の前に、そもそも新商品企画が失敗だということです。
 大きな状況変化があって、このままのスペックでは「競争に勝てない」と判断するときは、開発を中止して企画をはじめから『やり直す』こと必要があるのです。

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