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成功する企業はベストコストをつくり込む(48)

7.ベストコストづくりを考える

7-7 固有の間接費を回収する経済計算

● 間接費らしきコスト
 図表7-7ワーク・シート(’15.06.18掲載)最後の固有の間接費には、若干の説明を加える必要があります。
 一般に『製造間接費』でも『販売費』や『一般管理費』などの間接費は、全社もしくは事業部に『共通の固定費』として把握され、各商品に『生産数量』や個別の『直接原価額』または『販売価格の算定係数』などの形式で配布されます。
 しかし『新開発製品』や『受注生産製品』などでは、特定の対象製品に『材料費』や『直接労務費』などの直接原価以外に、それだけに間接費“らしきコスト”が発生することがあります。
 会計制度上の経費の仕分け規程によって解釈がまちまちになりますが、なたとえば『機器のレンタル料』や『出張旅費』『手数料』『技術指導料』『販売促進費』などは、一般的な会計処理では間接経費として把握されます。
 ですが、特定の開発製品や受注生産だけが必要とする『この種の間接費』は、一般経費として各商品に分割して回収すべきコストではないはずです。まさにこれこそが固有の間接費としてはっきりと区別できます。
 ですから、その対象商品の「販売価格から回収」しなければならないコストとして認識するわけです。 

● 開発手間賃の無視では行き詰まる
 この図表7-7ワーク・シートに示した事例では、開発投資として1,870時間の『開発要員の工数』と『治工具の製作費』40万円が、この開発に固有の間接費のだと解釈できます。したがってワーク・シートでは、これが当該新製品の発売「後3ヶ年分の限界利益で回収」できるか否かを、チェックしようとしているのです。
 計算によると、今後のコストダウンによって、-5.3%の原価差異が埋められれば、回収率が1.19倍となります。つまり19%の余裕をもって、回収は3ヶ年以内に可能であることがわかります。
 なぜ、このような確認が要るかといえば、とかく直接コストだけに着目した限界利益総額だけで、新製品開発や受注生産が行われがちだからです。とかく原価意識の低い経営レベルでは「価格競争に勝ちたい」あまり、徹夜で頑張ったのにその開発費の回収は無視するケースがみられます。
 ですから、その「新製品開発を行うか」この「特注品を受注するか」の意思決定をする場合は、トータル・コストの回収状況がわかる経済計算のもとに、なされなければなりません。

● 実体把握と政策価格は別もの
 受注生産が一回限りであるなら、その特注品の生産だけで『固有の間接費』を回収しなければ、経営は成り立っていきません。ベストコストを目指すとき、コスト自体の意義、性質を理解してかからなければ、何のためのレビューか分からなくなるでしょう。
 企業経営には、いわゆる「肉を切らせて骨を切る」戦略がたしかにあります。が、実体コストが「いくらかかっているか」しらないで、いつも「肉を切らせる」政策価格ばかり設定していると、とても「骨を切る」チャンスなどあるわけがないでしょう。
 たしかに新製品開発の場合は、回収の目処を、事例のように3ヶ年とするか、もっと厳しく1ヶ年とするかは、会社のいろいろな事情によるでしょう。
 その判断基準としては、製品ライフサイクルなどを勘案して決めておけば、CR(コストレビュー)参加者のレベルで容易に評価ができます。経済計算の計数要因は、常に変化しています。
 また経営には、長い将来を見越した戦略的な開発への取り組みがあるものです。ですからCRの結果を踏まえた判断は、最終的にはもちろんトップが下すのです。コストレビューはトップの判断に「情報を与える」作業でもあるのです。
 なお新製品開発は、企業のトップ・シークレットですが、コストに関するあらゆる情報も、重要な企業秘密の事項です。したがって、多くのCR参加者に配布する『原価見積』や『ワークシート』は、絶対に「社外秘扱い」にすることはいうまでもありません。

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