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成功する企業はベストコストをつくり込む(50)

7.ベストコストづくりを考える

7-9 コストレビューは開発効率の阻害要因か

● 開発者のブーイング
 ベストコスト追求の一環としてコストデザイン構想を固め、その実施手順書を関係者に示したとき、現業の開発・設計部門から「CRコストレビュー)みたいなことをしていたら、新商品の開発期間がますます長くなる」というブーイングを耳にしました。
 たしかに近時は、どんなケースでも開発期間が『伸びる傾向』にあり、かつ開発スケジュールが『遅れる』ことがしばしばです。この傾向は、どこの会社のどんな開発業務にも共通していえます。
 この現象を常識的に受け止めるなら、商品やサービスの高度化かつ複雑化によって開発対象が「難しくなったから」となるでしょう。であれば、コストデザインの「こんなことをする」のは、開発期間が伸びる理由でなくなるはずです。
 現に『開発スケジュールが遅れる』要因分析を試みたところ、この理由はそれほど単純ではなかったのです。図表7-9に整理した要因は、上段がオフィシャルな『たてまえ』であり、下段が現場の『本音』のように整理することができました。

 要因分析の中で当事者の意識では、第3章間接費低減(’12.08.23掲載)でみたように、開発・設計者が「雑用に手を取られる」ことがクローズアップされます。ですからコストレビューなどの手続きは、開発業務の中の雑用だと受け止めるならば、コストデザイン過程を「全部避けたい」という気持ちになるのでしょう。

● 開発現場の実態をみる
 開発・設計の当事者は、必ずしも「何が雑用なのか」さえ認識していないことがあります。しかし実質的には、基本的技術的な『試行錯誤過程』に、思わぬ時間が消費されているのが、やはり現場の実態でした。
 つまり基本設計の前の調査研究が、予想外の時間をとります。それはとりも直さず、新商品の技術的な「難しさを証明」しているのでしょう。つまり、新商品開発のR&Dが高度化したのですから、むしろこれは開発業務の本来的な姿だということです。
 反面で開発・設計段階の本音は、目標となる「仕様が決まらない」ために、着手不能に陥ったり再調査を余儀なくされたりします。さらに「仕様変更による」データの取り直しや設計のやり直しに、無駄な時間が費やされているのです。
 要するに本来業務よりも、前・後工程のあいまいな状態によって、開発が振り回されてしまいます。しかもそのあいまいさは、意外と「未知の分野に挑戦する」ような、かっこいい理由からではありません。新商品企画がしっかりしていない、といった『泥臭い原因』による場合が多いのです。

● 開発者のコスト意識は十分
 もちろんこんな状態では、コンカレントエンジニアリングなど望めないので、開発期間はますます長くなるでしょう。CRコストレビュー)、DRデザインレビュー)のステップを着実に踏むことが、開発ステップの『区切り』となって、このあいまいさを取り除きます。むしろ、急がば回れというわけで、これもコストデザインの『プロセスを進行』してみて実感したところです。
 仕事の進め方については、多くの開発・設計技術者にヒヤリングしました。それによるとほとんどの技術者は、課題として与えられた性能を、新商品につくりだすための試行錯誤の段階では「コストをいとわず可能な限りの投入を図る」というのです。しかし『品質設計にめど』がつけば、次には必ず「これをもっとうまくできないか」とばかり、生産技術者と化し『ものづくりを考える』と断言します。
 つまり多少時間的なずれがあっても、技術者の意識の中では、常に『品質とコストが平行』したウエイトで存在するのです。もちろんこの意識は、多分に開発・設計期間内での『たてまえ』もあります。が、品質とコストのつくりこみが、自分達の仕事であるとの認識は、企業人であれば「当然だ」といえば「当然ながら」明確にあるものです。

● 手順の入れ替えでも効果
 ただ、品質とコストの設計内容をドキュメントに移し、CRやDRで他者評価が受けられるように『準備』することが、疎ましいのです。が、ドキュメント類はいずれ作らなければ、開発が終了にならないことも、意識の中にちゃんとあります。
 製造資料などのドキュメントは、設計が終了してから最終的に『まとまったものだけ』を整理して清書する方が『やり直しがなく』て、より効率的だと思うのでしょう。要するに、あせる気持ちと目新しい手順に対する従来の『完成後につくる』概念との違いが邪魔するわけです。
 CR・DRのステップで段階別に使用してきたドキュメントを徐々に肉付けし、最終段階では新商品と同時に製造資料が出来上がるようにすれば、結果として効率的になるはずですが。
 開発業務からみれば、雑用と思えるドキュメントの整理こそ、実はベストコストへのベースになるわけです。生産の立ち上がりも早め、マーケティング優位のベースにもなるのです。関係者に対するこの説得と、コストデザインを進めた体験が、コストデザイン・プロセスの理解を得るのに役立ったというわけです。

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