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第66回 組織開発の現場より

最近関わったある組織を通じて再認識したことについて、振り返ってみたいと思います。

「色々と対策を講じても事故がなくならない。どうやらその理由は、所員同士がお互いに関心を持っていないからではないか?」という事業所長さんの見立てにより私に相談が持ち込まれた、というのが、その組織に関わる契機でした。

予めお断りしておきますが、「事故が無くならない」ことの根本的な原因は、半年関わる中である程度見立てができたものの、現時点ではまだ解決に至っていません。

相談を受けた私は、アンケートデータを元に組織状態を見立てて、打ち手のご提案を行いました。

事業所は5つの班に分かれているのですが、その班ごとにチームビルディング(各班全4回・各回3時間のセッション)を行うことになりました。各班は4~6名程度のメンバー構成です。

チームビルディングで主に使った手法は、「システム・コーチング🄬」と言い、チームや組織を対象としたコーチングです。システム=組織・チームを表します。

最近は、個人向けのコーチング(パーソナル・コーチング)の認知度が飛躍的に高まり、かなり市民権を得てきたように思いますが、組織を対象としたコーチングは、まだよく知られていません。

パーソナル・コーチングは、クライアントがコーチとの対話により自身の内面と深く向き合っていくプロセスです。そこから、自身の課題が見えてきたり、本当にやりたい事が明確になったりします。コーチとの対話で潜在的なものが表面に現れることもあるでしょうし、もともと顕在化しているが見て見ぬふりをしていたことを突きつけられる、ということもあるでしょう。

システム・コーチングは、端的に言うと、このプロセスをコーチとチームで行う、ということになります。チームはメンバー同士の関係性で成り立っています。そして、チームは共通の目的を持っています。メンバー同士の関係性が良好でないとチームの目的が達成できない事も多いため、システム・コーチングは「チームの関係性」に焦点を当てて進めていきます。また、コーチングをご存知の方はすんなりと理解ができることと思いますが、システム・コーチングでも、コーチは「こうしなさい」とチームに指示をすることはありません。チームが主体的に何かを決めたり行動したりする、という状態を目指して、意図的に関わっていきます。

さて、先ほどの事業所の話題に戻りましょう。

5つの班に対して、それぞれチームビルディングセッションを行ったのですが、チームの状態はすべて異なっていました。今回は、その中でも、5班で起こったことについてご紹介します。

5班は、20代女子・30代後半男子・50代後半男子2名というメンバー構成で、和やかな雰囲気を持っていました。一見和やかなのですが、セッションを始めてみると、誰も話さないのです。

とにかく、口が重い。何を問うても、誰に問うても、とにかく、話し始めるまでに長い沈黙があり、そこからぼそぼそと短く答えて終わり。チームやメンバーが何を考えているのか、どう感じているのかが、まったく見えてこないのです。

3回目のセッションではこんなこともありました。皆で1つの物を協力して造り上げる、というゲームをやった後で、振り返りを行っていたのですが、1人のメンバーはその振り返りに参加せず、そこにある道具を使って一人でゲームの続きをやりだしたのです。

3回目のセッションが終わって、私たちは途方に暮れました。このチームは、一体どうしたいのか?
「チームとしての意志」が全く見えてこないからです。また、こうした「場」自体への(消極的な)反発があることも感じていました。

最終回の4回目をどうしようか、いっそのことやめてしまおうか、と散々悩む中で、私はある仮説に思い至りました。

それは、彼らには、「癒されない現状」があるのではないか、ということです。

現状がきちんと肯定されないと次のステップには進めない、というセオリーがあります。

自分達の現状には課題も多くあります。しかし、課題もあるし欠点もあるけれど、現在の自分(自分達)をしっかりと認知・承認してあげないと、次の壁を乗り越えよう・頑張ろうというエネルギーは湧いてこないのです。

もしかしたら、彼らは今、そういう状態にあるのではないか?と感じたのです。

最終回では、チームメンバー1人1人を対象に、その人がどんな人なのか、どんな素晴らしいところがあるのかを徹底的に掘り下げる、ということを行いました。

どんな小さなことでも構わないので、とにかく、自分から見てその相手がどのような人に見えているか、を言葉で表現してもらったのです。想像以上にたくさん、出てきました。

そして、自分のことを言われている間、みんな照れくさそうにしていましたが、とても嬉しそうでした。最後の感想でも、「自分のことをそんな風に見てくれているとは知らなかった。嬉しかった」「皆が期待してくれている自分になるためにもう少し頑張ってみようと思った」等、それまでとは別人のような感想が出てきたのです。その場の雰囲気も、今までにないほど温かいものでした。

人間はいくつになっても、どれだけ人生経験を積もうと、自分のことを知ってもらえたり認められると嬉しいし頑張ろうと思える生き物なのだ、ということを再認識した、今回の経験でした。

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