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建設業における補助金活用の事例紹介 

はじめに:なぜ今、建設業に補助金が必要なのか 

建設業界は社会基盤を支える重要な産業ですが、直近では「2025年問題」と呼ばれる構造変化に直面しています。団塊世代の大量退職により熟練労働者が一斉に引退し、人手不足が急速に進むことが予想されているためです。技術継承が不十分なまま高齢化が進むことで、現場の人材育成が追いつかず、生産性低下や安全面のリスクにつながる可能性があります。また、工事完了から代金受領までの期間が長く、資金繰りを圧迫するという建設業特有の課題も指摘されています。さらに資材・人件費の高騰が利益率を押し下げ、経営を難しくしている状況です。こうした背景から、DXや省力化を通じて生産性を向上させるための設備投資と、資金繰りを支援するための公的補助制度が求められています。特に中小企業にとって補助金の存在は新規投資への心理的ハードルを下げ、競争力強化のきっかけになります。 

  1. 建設業に補助金が必要な理由

建設業が補助金活用を検討すべき理由は複数あります。まず、上述の通り人手不足と高齢化による技術継承の危機です。現場作業員の高齢化と若年層の入職者不足により、経験とノウハウが途絶えるリスクが高まっています。次に、長期の資金回収サイクルという構造的問題です。受注した工事の代金は着工から完工、検査、請求、支払いまで多くの工程を経るため、他業界に比べ現金化が遅くなりがちで、資金繰りがタイトになります。また、資材や人件費の上昇が利益率を圧迫し、企業体力を弱らせています。 

さらに最近では、建設現場におけるIT活用や省力化設備の導入が急務となっています。測量や設計、施工管理においてデジタルツールを使うことで、作業効率や品質を大幅に向上させることが可能ですが、こうした設備投資には多額の費用が必要です。政府はこの分野を支援すべく複数の補助制度を設けており、企業が自社の課題に合った制度を選択し活用することが重要になっています。次に、主要な補助金制度の概略と、活用事例を紹介します。 

  1. 主要な補助金制度と活用状況

新事業進出補助金 

「新事業進出補助金」は、企業が既存の事業を活かしつつ新分野へ進出する際の設備投資やIT投資を支援する制度です。2025年度第1回公募では、応募3,006件中1,118件が採択され、採択率は約37.2%でした。業種別に見ると、製造業が51.9%と最も高い採択率を誇りますが、建設業も36.5%と平均に近い割合で採択されています。これは建設業が新事業分野への投資意欲を高めている証しであり、既存の施工技術を生かしてリフォームや再生エネルギー設備など新たな分野へ参入する例も増えています。 

省力化投資補助金 

一方、「省力化投資補助金」は、ロボットや自動化設備の導入による省力化を目指す事業者を支援する制度で、2025年度一般型公募では建設業が採択全体の11.3%を占め、業種別で2番目の高さとなりました。この補助金の特徴は、単に機械を導入するのではなく「人手で行っていた作業を機械化・自動化し、労働時間や人員を削減すること」が評価軸となる点です。効果が大きく投資回収が早い計画ほど採択されやすいとされ、省力化による削減人数や工程短縮を数値で示すことが求められます。  

  1. 活用事例の紹介

事例1:鉄骨製造工程の自動化(省力化投資補助金) 

愛媛県のA社は、大型建築用鉄骨の製造を一貫体制で行う企業です。材料の切断、溶接、組み立てなど多くの作業に熟練技能を要しますが、工場内に自動運転の天井クレーンやロボット溶接機を導入することで鉄骨製造工程を大幅に自動化する計画を立て、省力化投資補助金を活用しました。導入後は、クレーンが自動で鋼材を移動し、ロボットが溶接を行うため作業員の移動が減少し、溶接品質のばらつきも抑制されました。結果として従来人手で行っていた工程の多くが機械に置き換えられ、熟練工の負担軽減と生産能力の向上に寄与しています。また、機械化によって溶接不良の再加工が減り、資材の無駄も削減できました。このように、設備投資による工程自動化は職人不足への対策と品質管理の双方に効果を発揮しています。 

事例2:測量・設計業務のDX化(省力化投資補助金) 

北海道のB社は、測量や設計を手がける企業で、従来は現地測量から図面作成まで多くの工程をアナログで行っていました。省力化投資補助金を活用して、UAV(ドローン)や3Dレーザースキャナーを導入し、高精度測量と3Dモデル化を同時に実現しました。これにより、従来数日を要していた測量が数時間で完了し、3次元データをクラウド上で共有して設計・施工に活用することが可能になりました。さらに、データを活用したシミュレーションや合意形成がスムーズになり、顧客への提案力も向上しています。省力化によって削減された人員や時間は、新規受注への営業活動や高度な解析業務に再配置され、企業全体の生産性向上につながりました。 

  1. 補助金活用のポイントと注意点

補助金を有効に活用するには、次の点を意識する必要があります。 

  • 省力化の定義を理解する:省力化投資補助金では「これまで人手で行っていた工程を機械化・自動化し、労働時間や作業人数を削減すること」が評価の対象となります。単に新しい機械を入れるだけでなく、具体的な削減効果を示すことが重要です。 
  • 効果を定量化する:補助金申請時には、工程短縮率や削減人数などの効果を数値で説明し、投資回収がどれくらいで実現するかを明確にする必要があります。 
  • 再配置計画を盛り込む:省力化で生まれた余剰人員をどのように活用するかを事前に計画し、経営全体の生産性向上につなげる構想を盛り込むことが重要です。例えば現場の安全管理や新規事業開拓への配置転換など、人的資源を有効活用する計画が求められます。 
  • 適切な制度を選択する:補助金にはそれぞれ対象経費や要件があり、利用できる枠も異なります。自社の課題や投資内容に合致する制度を選び、最新情報を確認しながら申請準備を進めることが成功への近道です。 
  • 早めの準備:公募期間は限られており、申請書類には事業計画や財務データなど多くの書類が必要です。専門家の支援を早めに受けることで、スムーズな申請につながります。 
  1. 補助金申請プロセス

補助金を申請する際の主な進め方は次の通りです。 

  1. 現状課題の特定:自社の課題(人手不足、資金繰り悪化、業務の非効率など)を明確にし、どのような投資が必要か整理します。
  2. 適用可能な補助金の検索:国や自治体の公募情報を調べ、自社の課題に合った補助制度を選択します。複数の補助制度を組み合わせることも検討します。
  3. 事業計画の策定:投資目的と効果を数値で示し、補助対象経費や投資回収の見込みを盛り込んだ事業計画書を作成します。省力化効果の定量化や人的再配置計画が重要です。
  4. 申請書類の作成・提出:必要書類(履歴事項全部証明書、決算書、見積書など)を揃え、募集期間内に申請します。電子申請が主流となっているため、オンライン手続きに慣れておくと良いでしょう。
  5. 採択後の実行と報告:採択通知を受けたら計画どおりに設備導入やシステム構築を進めます。補助金は事後精算が多く、完了後に実績報告書や支払証憑を提出する必要があります。効果測定を行い、次回以降の投資計画に反映させましょう。

おわりに:中小企業診断士からのメッセージ 

現場の声を聞いていて最も多く挙がるのが、「人がいない」「仕事はあるが体制が整わない」といった声です。中小企業診断士として日々建設業の経営者と対話する中で、この課題が深刻化しているのを実感しています。こうした課題に対して、補助金は単なる一時的な資金援助ではなく、企業が新しい技術やビジネスモデルに挑戦するための“攻めの投資”を後押しするツールです。特に省力化投資補助金や新事業進出補助金では、労働力を補完しながら新分野へ進出する企業を積極的に支援しています。本稿で紹介した採択率のデータや事例からも、建設業が補助金を活用して生産性向上と事業拡大を実現していることがわかります。 

中小企業診断士として強調したいのは、補助金を活用するためには「自社の課題と目的を明確にし、投資効果を定量的に示す」準備が不可欠であるという点です。公募が始まってから動き出しても間に合わないことが多いため、平時から現場の課題を洗い出し、どの補助制度が活用できるかを検討しておくことをおすすめします。また、採択後の実行・報告プロセスを通じて、現場にデータ収集と改善の文化を根付かせることが次の成長の土台となります。補助金申請や投資計画で不明な点があれば、ぜひ専門家に相談してください。さいたま総研では、建設業の実情に即した支援や申請サポートを行っています。補助金を活用し、DXと省力化を推進することで、未来に向けた競争力を一緒に高めていきましょう。 

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