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すぐ効く脱炭素施策11選:省エネ・エネ転換・運用改善でCO2削減とコスト削減を両立

前回の記事「中小企業が今すぐ始めるべき脱炭素経営7つのステップ」では、
脱炭素経営を経営課題としてどう捉え、どの順番で進めるべきかという全体像を整理しました。

とはいえ、
「方向性は分かったが、具体的に何から手を付ければいいのか分からない」
「現場で実行できるレベルまで落とし込みたい」
と感じた方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、CO2削減とコスト削減を同時に狙えるすぐ効く脱炭素施策11選を紹介します。

中小企業の脱炭素は、必ずしも大規模な設備投資から始める必要はありません。
電力・燃料の使用量が多い設備や、ムダが発生しやすい運用を見直すだけでも、短期間で効果が見えるケースは少なくありません。

1,空調・ボイラー・コンプレッサーの省エネ

空調・ボイラー・コンプレッサーは、エネルギー多消費設備の代表格です。
運用改善としては、設定温度の適正化、稼働時間の見直し、フィルター清掃、配管の保温、ドレン管理、圧力設定の最適化などが効果的です。
コンプレッサーは漏れエア対策だけでも削減余地が大きく、点検の習慣化がコスト削減に直結します。
設備更新では、高効率機への更新やインバータ制御、台数制御の導入が候補になります。
ボイラーは燃料使用量がScope1に直結するため、効率改善や熱回収、場合によっては電化(ヒートポンプ等)も検討対象です。
まずは現状の稼働データ(時間・負荷・圧力・温度)を取り、ムダがどこで発生しているかを見える化すると、投資の優先順位が付けやすくなります。

2,照明LED化と制御システム導入

LED化は、初期投資に対して効果が分かりやすく、補助金対象にもなりやすい定番施策です。
単純な器具交換だけでなく、人感センサー、明るさセンサー、タイマー、ゾーニング(エリア別制御)を組み合わせると、点けっぱなしのムダを減らせます。
倉庫・通路・トイレ・更衣室など、稼働が断続的な場所ほど制御の効果が出ます。
また、照明の改善は作業環境の向上や安全性にも寄与し、現場の納得を得やすいのが利点です。
見える化の観点では、分電盤単位での電力計測や、簡易な電力モニタリングを導入すると、照明以外のムダも見つかりやすくなります。
「LEDにしたのに効果が見えない」を防ぐため、導入前後で使用時間や点灯ルールを合わせて比較することが重要です。

3,生産設備の高効率化

生産設備の省エネは、効果が大きい一方で、品質・生産性への影響を慎重に見極める必要があります。
モーター負荷が大きい設備(ポンプ、ファン、搬送、攪拌など)は、インバータ導入や高効率モーターへの更新で削減が期待できます。
また、待機電力やアイドリング時間の削減、段取り改善による稼働率最適化も、投資を抑えつつ効果を出しやすい領域です。
検討のコツは、設備ごとに「稼働時間」「負荷率」「停止できる時間帯」を整理し、削減余地が大きい順に手を付けることです。
更新投資は、故障リスク低減や保守費削減、歩留まり改善などの副次効果も含めて回収を評価すると、社内稟議が通りやすくなります。
補助金を使う場合は、導入前後のエネルギー削減根拠が求められるため、現状データの取得を先に進めておくと申請がスムーズです。

4,電力契約の見直し

電力契約の見直しは、設備投資なしで効果が出る可能性がある施策です。
基本料金は契約電力や最大需要電力(デマンド)に影響されるため、ピークカット(稼働時間の分散、同時稼働の抑制)とセットで検討すると削減余地が広がります。
また、小売電気事業者や大手電力(例:東京電力エリアの各メニュー)には、価格重視型から環境配慮型(再エネ比率を高めたプラン等)まで複数の選択肢があります。
取引先要請でScope2削減が急務の場合、再エネメニューへの切替が「短期で説明できる対策」になり得ます。
一方で、契約条件(解約金、単価変動、燃料費調整、需給調整)を理解せずに切り替えると、コストが想定以上に増えることがあります。
比較の際は、直近12か月の使用量・最大需要・料金内訳を揃え、同条件で試算することが重要です。

5,再エネ電力・FIT電気の活用と注意点

再エネ電力の活用は、Scope2削減の即効性がある一方で、取引先が重視する論点を押さえる必要があります。
代表的な注意点が「追加性」です。
追加性とは、その再エネ調達が新たな再エネ導入を後押ししているか、という考え方で、取引先によっては追加性の高い電源を求める場合があります。
また、FIT電気(固定価格買取制度由来の電気)は、環境価値の扱いが契約形態によって異なるため、証明書の有無や表示方法を確認することが重要です。
契約時は、再エネ比率、非化石証書の付与、トラッキングの可否、証明書発行、契約期間・解約条件をチェックし、取引先提出に耐える形に整えます。
「再エネにした」と言っても、証明が出せないとアンケートで評価されにくいことがあるため、提出書類の形式まで含めて選定するのが実務です。

6,非化石証書・環境価値の購入

非化石証書は、電力そのものではなく「環境価値」を証書として購入し、使用電力の排出を実質的に下げる手段です。
設備更新が間に合わない、拠点が賃貸で太陽光が載せられない、といった制約がある企業でも取り組みやすいのが利点です。
一方で、証書には種類や属性があり、取引先が求める要件(トラッキング付き、電源種、年度、量の整合)に合わないと評価されないことがあります。
提出のポイントは、①対象期間、②対象電力量(kWh)と証書量、③証書の種類、④証明書(購入証跡)の提示、⑤Scope2算定での反映方法を明確にすることです。
また、証書は「削減努力の代替」ではなく、削減と並行して使うのが望ましいとされるため、省エネ計画とセットで説明すると信頼性が上がります。

7,自家消費型太陽光・蓄電池の導入

自家消費型太陽光は、電力購入量を減らし、Scope2削減と電気代の抑制を同時に狙える施策です。
日中稼働が多い工場・倉庫・店舗ほど相性が良く、ピーク電力の抑制にも寄与します。
蓄電池は、太陽光の自家消費率を高めたり、ピークカットやBCP(停電対策)に活用できる一方、投資額が大きく回収が長くなりやすい点に注意が必要です。
投資判断では、屋根強度・防水・影の影響、電力使用パターン、系統連系の条件、保守費、補助金の有無を整理し、複数社で試算比較するのが基本です。
PPA(第三者所有)モデルを使えば初期費用ゼロで導入できる場合もありますが、契約期間や中途解約、設備撤去条件を確認しないと将来の制約になります。
制度は年度で変わるため、自治体補助や国の補助金の公募時期に合わせて準備することが成功の鍵です。

8,燃料転換(化石電化・低炭素燃料)

Scope1削減の本丸は、燃料転換です。
ボイラーや加熱工程、社用車・フォークリフトなどで化石燃料を使っている場合、電化(ヒートポンプ、電気炉等)や低炭素燃料への切替が選択肢になります。
ただし、燃料転換は設備更新だけでなく、電力容量の増強、工程条件の変更、品質影響、保守体制の変更など、事業への影響が大きくなりやすい点が課題です。
そのため、いきなり全面転換ではなく、更新タイミングに合わせた段階導入や、対象工程を絞った実証から始めるのが現実的です。
また、電化するとScope1は減ってもScope2が増えるため、再エネ調達と組み合わせて全体最適を図る必要があります。
取引先への説明では「いつ・どの設備を・どの程度転換するか」をロードマップとして示すと、長期的な改善姿勢が伝わります。

9,物流・移動の最適化(配送改善、EV/FCV検討)

Scope3の中でも、物流・移動は比較的手を付けやすい領域です。
配送ルートの見直し、積載率の改善、共同配送、納品頻度の調整、梱包の最適化などは、CO2削減と物流コスト削減の両方に効く可能性があります。
自社便がある場合は、アイドリングストップ、適正空気圧、急加速抑制などの運転改善だけでも燃費が改善します。
EV/FCVは将来的な選択肢ですが、車両価格、航続距離、充電設備、運用ルートとの適合、補助金の有無を踏まえた段階導入が現実的です。
取引先からScope3の情報提供を求められた場合、まずは輸送距離・便数・燃料使用量など、把握できるデータから提示し、精度を年々上げる方針を示すと対応しやすくなります。
物流は社外パートナーが関与するため、契約条件や協力体制の整備も同時に進めることが重要です。

10,サプライヤー連携でサプライチェーン全体の排出削減

取引先からの要請に応えるだけでなく、自社が発注する側としてサプライヤーと連携すると、Scope3の改善が進みます。
ただし、いきなり厳しい要求を出すと反発が起きるため、コツは「段階的な依頼」と「回答しやすいフォーマット」です。
例えば、最初は電力使用量や再エネ比率など簡易項目から始め、次年度以降に算定範囲を広げる設計にします。
また、排出係数や算定ルールを統一しないと、集計しても比較できないため、テンプレートを配布してルールを明示することが重要です。
サプライヤーにとっても、取引先対応の負担が減る形(共同の説明会、支援窓口の紹介、補助金情報の共有)を用意すると協力が得やすくなります。
結果として、自社の取引先への説明力が上がり、サプライチェーン全体での信頼獲得につながります。

11,社内ルール化(KPI、教育、経営のコミット)で取り組みを継続・促進

脱炭素が続かない最大の原因は、担当者任せで仕組みになっていないことです。
継続のためには、KPI(例:電力原単位、燃料使用量、再エネ比率、CO2排出量)を決め、月次または四半期で確認するルールを作ります。
現場にとっては「なぜやるのか」が重要なので、取引先要請やコスト削減効果をセットで説明し、教育・周知を行うと協力が得やすくなります。
また、経営がコミットし、目標と責任者を明確にすることで、設備投資や運用変更の意思決定が早くなります。
小さく始めるなら、エネルギー使用量の共有、節電ルール、点検チェックリストの運用からでも十分です。
「測る→減らす→報告する」を定常業務に落とし込めれば、取引先アンケート対応も毎年の更新作業になり、負担が大きく下がります。

まとめ

脱炭素経営は、特別な企業だけが取り組むものではなく、
日々の設備運用や契約、業務の見直しを積み重ねていくことから始まります。

本記事で紹介した11の施策は、
すべてを一度に実行する必要はありません。
重要なのは、自社のエネルギー使用実態を把握し、効果が出やすい順に着手することです。

まずは、

  • 電力・燃料を多く使っている設備はどこか
  • 運用改善だけで減らせるムダはないか
  • 取引先から求められているScopeや証明は何か

といった点を整理し、
「測る → 減らす → 説明できる」状態を少しずつ作っていくことが、
中小企業にとって現実的で継続可能な脱炭素経営につながります。

まずは一つ、
「これは今すぐできそうだ」と思える施策から着手してみてください。
その小さな一歩が、将来の取引継続や競争力強化につながっていきます。

(文責:F.S.) 

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