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第3回:契約と調達方式 | 一般競争・随意契約・プロポの使い分け

はじめに:

公共の調達は、民間企業にとって新たなビジネスチャンスです。第1回では「自治体ビジネスとは」を概観し、第2回では自治体ビジネスへ参入するための手続きについて解説しました。第3回の今回は、自治体が契約先を選定する際の主な調達方式である「一般競争入札」「随意契約」「プロポーザル方式」について、それぞれの特徴や使い分け方を分かりやすく説明します。契約方式の違いを理解し、自社に有利な戦略を立てる一助になれば幸いです。

1.公共契約の基本と調達方式の種類

自治体をはじめとする公的機関が何かを発注し契約する際には、いくつかの方式で契約相手を決定します。契約方式とは、平たく言えば「どのように取引相手を選ぶか」です。法律上は大きく分けて一般競争入札、指名競争入札、随意契約の3つが基本とされています。一般競争入札は広く参加者を募る方式、指名競争入札は特定の業者のみを招いて行う入札の方式、随意契約は入札を行わず直接契約先を決める方式です。また近年では、価格だけでなく提案内容で選定するプロポーザル方式(企画競争)も多く利用されています。

なお、一般競争入札と随意契約の中間に位置する指名競争入札については、発注者があらかじめ選定した複数の業者に対して入札を実施する方法で、地域の登録業者から数社のみ指名して入札または見積もり行うものです。今回は主に「一般競争」「随意契約」「プロポーザル」の3つに焦点を当てて解説します。

2.一般競争入札:最もオープンで競争性の高い方式

一般競争入札(いっぱんきょうそうにゅうさつ)は、公告で示された参加資格(例:業種や過去の実績、財務状況など)を満たせば、基本的にどの企業でも入札に参加できる方式です。門戸が広く、透明性・公平性が高いのが特徴で、国の会計法や地方自治体のルールでも「原則は一般競争入札によること」と定められています。

一般競争入札では、複数の企業が入札し、通常は最も低い価格を提示した企業が落札者に決まります(最低価格落札方式)。このため発注者側には多くの提案や価格提示を比較できるメリットがあり、競争原理によって契約金額の節約が期待できます。一方で受注を目指す企業側から見ると、誰でも参加できる分競争が激しくなりやすい点に注意が必要です。特に価格競争は避けられず、落札できても利益が薄くなりがちです。また、入札のための書類準備や手続きにも時間と労力がかかるため、参加コストも考慮しなければなりません。もっとも、一般競争入札は実績のない中小企業にも公平にチャンスがある方式とも言えます。発注者との取引実績がなくても、条件さえ満たせば挑戦できます。したがって、新規参入を狙う中小企業は、まずは各自治体や省庁の入札情報(公告)をこまめに収集し、自社が参加可能な案件を見逃さないようにしましょう。また、参加資格を事前に取得しておくことも必須です。価格面での競争力を高めつつ、仕様書の要求を満たす提案や適正な見積もりを提示できれば、落札の可能性は十分にあります。

3.随意契約:条件付きで認められる直接契約

随意契約(ずいいけいやく)とは、入札手続きを行わず、発注者が任意に選んだ相手と直接契約を結ぶ方式です。本来、公平性の確保やコスト削減の観点から公的機関での随意契約は法律で厳しく制限されています。地方自治法施行令などにより「一定の場合でなければ随意契約は認められない」と規定されており、あくまで例外的な手段です。具体的には、競争入札にそぐわない特殊なケースや、入札を行うと却って不利益が生じる場合などに限定されています。主な例として、以下のようなケースが挙げられます。

 

・技術的な唯一性:特定の業者にしかできない特殊な技術や、特許・著作権などにより他では代替できない業務の場合

・緊急を要する場合:災害対応など時間的余裕がなく、入札手続きを経ると目的達成に支障が出る場合

・現在利用しているものの継続:現在使用中の機器やソフトの保守・部品交換など、他社に切り替えると支障が出たり不経済となる場合

・少額の契約:契約金額が各自治体の条例で定める一定の基準額以下の場合。

 

上記のような条件に該当する場合に限り随意契約が可能となります。発注者側から見ると信頼できる相手と迅速に契約が結べる利点があります。特に緊急時や予算消化のため早急に契約したい年末時期などでは有効な手段となります。一方で競争を行わないため、価格が割高になるリスクや、特定業者と癒着してしまう懸念もあるため、実施には慎重さが求められます。

受注者側から見ると、競争相手がいない分、契約獲得のハードルは低いように聞こえますが、実際には発注者に選んでもらう必要があります。とりわけ、新規の事業者が随意契約の相手に選定されるのは簡単ではありません。発注者側も「この会社なら安心して任せられる」という判断材料が必要だからです。日頃から自治体に自社PRをしたり、地域で実績を積み上げたりして信頼を得ておくことが重要でしょう。また、随意契約とはいえ多くの場合は見積書の提出が必要であり、適正な価格を提示することは不可欠です。過大な見積もりは敬遠されますし、かといって利益が出ない安値受注では持続的な取引が難しくなります。適正利益を確保しつつ発注者に納得してもらえる価格設定と、契約履行への真摯な姿勢が信用につながります。さらに、一旦契約を結んだら、契約書に定められた納期や仕様をきちんと守ることが大前提です。万が一契約違反となれば、違約金の請求や契約解除といった事態になり、以後その自治体からの受注機会を失う可能性もあります。小さな契約でも誠実に履行し、信頼を積み重ねることが、将来のより大きな仕事につながるでしょう。

4.プロポーザル方式:提案内容で競う新たな調達スタイル

近年、自治体の業務委託などではプロポーザル方式(企画提案競技)も一般的になってきました。プロポーザル方式とは、価格だけでは判断しにくい事業について、参加企業から事業の提案書を提出させ、その内容を評価して契約候補を選ぶ方式です。例えば新しい施設のコンセプト立案や観光PR事業の委託など、創造性や専門性が求められる案件で採用される傾向があります。発注者にとっては、単に一番安い提案ではなく最も質の高い提案を採用できるメリットがあります。

プロポーザルでは提案内容や企業の技術力・経験といった総合的な評価が行われます。評価項目や配点があらかじめ提示され、審査委員会が各社の提案を点数化して順位付けする方式が一般的です。価格も評価項目に含まれますが、配点割合は低めに設定されることが多く、極端な安値で勝負しても必ずしも有利にはなりません。それよりも、発注者のニーズを的確に捉えた提案内容、自社の強みを活かした独自のアイデア、過去の実績に裏打ちされた信頼感などが決め手になります。中小企業にとっても、規模の大小より提案の質で勝負できるチャンスと言えるでしょう。ただし、提案書の作成には時間とコストがかかり、プレゼンテーションや質疑応答など準備すべきことも多くあります。また、求められる専門性が高い案件では、相応の知識やノウハウが必要です。プロポーザルに参加する際は、公募要領や評価基準を熟読し、発注者が求めるポイントを押さえた上で、自社ならではの付加価値を提案に盛り込みましょう。

最近では、自治体によっては書類審査に加えてプレゼンの場を設けるケースや、提案内容について事前に質問を受け付けるケースもあります。いずれにせよ、プロポーザル方式では提案書の内容が勝敗を握ることは間違いありません。

まとめ(シリーズの次回予告):中小企業診断士からのメッセージ

以上、自治体の主な調達・契約方式について、それぞれの特徴とポイントを解説しました。一般競争入札はオープンな競争ゆえに参加しやすい反面、ライバルも多く価格競争になりがちです。随意契約は特別な場合に限られる直接契約で、信頼関係や実績がものを言います。プロポーザル方式は提案力で勝負できるため、中小企業にも大きなチャンスがありますが、入念な準備が不可欠です。自社の状況や得意分野に応じて、どの方式の案件に注力すべきか戦略を考えてみましょう。

次回(第4回)は「プロポーザル評価項目の攻略法 | 土木・ITで点を取る提案書の書き方」をテーマに、プロポーザルで評価される提案を作るためのポイントを詳しく解説します。提案の質が勝敗を分けるからこそ、評価項目の理解や効果的な提案書の構成が重要です。自社の魅力を最大限に伝える提案とは何か、一緒に探っていきましょう。

(文責:H.K) 

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