「この会議、何のため?」
「この会議って、何のためにやっているのだろうか?」
会議室やオンライン画面の前で、そのような疑問を抱いた経験はないでしょうか。
しかし、そう感じながらも、誰も疑問を口にしないことがあります。その背景にあるのが、「今までやっていたから」という前例踏襲です。
日本企業では、定例会議が慣習として長年続いているケースが少なくありません。目的や成果を再定義しないまま、「月曜日だから」「毎月第一週だから」という理由で開催されています。一見すると安定的に見えますが、実は大きな機会損失を生んでいる可能性があります。
近年、「生産性向上」は日本企業にとって重要なテーマです。特に中小企業では、限られた人材で成果を上げることが喫緊の課題とされています。
一方で、米国の調査会社アトラシアンのレポートによれば、ビジネスパーソンは週平均31時間を会議に費やし、そのうち半分近くを「非生産的」と感じていると報告されています。国内でも、パーソル総合研究所の調査において「会議が長い・多いことが生産性を下げている」と回答した人が多数を占めています。
やること自体が目的化した会議は、時間という貴重な資源を奪います。しかしその一方で、コミュニケーション不足によるミスや認識のズレも発生しています。
会議は不要なのでしょうか。
それとも不可欠なのでしょうか。
答えは、「目的次第」です。
会議は手段。まずゴールを定める
第一のポイントは、「会議は手段である」と認識することです。
その会議が終わったとき、何が決まっていれば成功なのでしょうか。意思決定でしょうか。課題の洗い出しでしょうか。それとも情報共有でしょうか。
ハーバード・ビジネス・レビューでも、成果を上げる会議の条件として「明確な目的設定」と「アジェンダの事前共有」が重要であると指摘されています。ゴールが曖昧なまま集まれば、議論は拡散し、結論は先送りになってしまいます。
もし目的が情報共有のみであれば、メールやチャットツールで十分な場合もあります。マッキンゼーの報告では、社内コミュニケーションの約30%はデジタルツールで代替可能とされています。
一方で、複数の選択肢から何かを決定する場合は、事前準備が重要です。論点の整理、選択肢の明示、判断基準の共有を行うことで、議論は建設的になります。また、進行役(ファシリテーター)を明確にすることで、時間内にゴールへ到達しやすくなります。
オンライン会議の光と影
コロナ禍を経て、オンライン会議は一般的なものとなりました。移動時間の削減という観点から、生産性向上に寄与していることは事実です。総務省の調査でも、テレワーク導入企業の多くが「移動時間の削減による効率化」を効果として挙げています。
しかし、オンライン会議は万能ではありません。
心理学者アルバート・メラビアンの研究では、感情や態度の伝達において非言語情報が大きな影響を持つことが示されています。対面であれば表情や場の空気感から読み取れる微妙なニュアンスが、オンラインでは伝わりにくいことがあります。
特に、意見が対立しやすいテーマや、参加者間の関係性が十分に構築されていない場合、オンラインでは本音が出にくい傾向があります。発言のタイミングもつかみにくく、沈黙が同意なのか迷いなのか判断しづらいこともあります。
そのため、会議のテーマや参加者の関係性を踏まえ、「対面」「オンライン」「非同期コミュニケーション(メール・チャット等)」のどれが最適かを選択することが重要になります。
満足度を高めるファシリテーション
時間内にゴールへ到達することは重要ですが、それだけでは十分ではありません。
参加者が「この会議に参加してよかった」と思えることが、真の成功といえます。
心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソンは、発言しやすい環境がチームの成果を高めると指摘しています。
・全員に発言の機会があること
・言いたいことが言える雰囲気があること
これらが満たされてこそ、納得感が生まれます。
そのためには、ファシリテーターの役割が重要です。最初に短い雑談を取り入れて場を温めます。発言の少ない方にさりげなく問いかけます。声の大きい人だけで議論が進まないよう配慮します。
自分の意見が採用されなかったとしても、「きちんと受け止めてもらえた」と感じられれば、人は結論に納得できます。
会議は決して悪いものではありません。しかし、目的のない会議は組織の力を確実に奪います。
「その会議、本当に必要ですか?」
この問いを持ち続けることが、生産性向上への第一歩です。会議を“習慣”ではなく“戦略”へと変えていく姿勢こそ、これからの組織に求められています。
文責:K.K
