企業名 小原歯車工業株式会社
面談者 代表取締役社長 小原 敏治様
面談日時 2012年 8 月 3 日
経営承継事業部担当者 長谷川 勇


ヒアリング項目
1.現社長の経歴
社長歴 12 年(社長就任 2001 年 8 月 当社 4 代目)
前社長との関係: 長兄
社長就任までの職歴
社外: アメリカの得意先で約1年間研修
社内: 大阪営業所勤務 2年間
製造部 生産管理課勤務 4年間
営業本部長 5年間 (取締役)
常務取締役 3年間
2.経営承継時(承継後)に新たに取り組んだこと
社長就任の準備
実施項目:
・創業者の初孫としてかわいがられて育てられ、自然に後継者を意識し
て成長した。
・社長の誕生日に創業者がなくなられ、創業者の生まれ変わりを意識し、
後継者としての運命を自覚した。
・大学卒業後、1年間イギリスに語学留学をして、国際感覚を磨いた。
・入社後、アメリカの得意先で1年間海外研修をして、海外業務にも
従事し、国際ビジネスマンとして磨きをかけた。
・帰国後、大阪営業所、生産管理課、営業本部長、常務取締役と社内
の主要業務を経験した。
成果:
グローバル化が真剣に議論される以前に、先を読んで1年間のイギ
リスへの語学研修や、入社後直ちにアメリカの得意先での海外研修
に従事することで、その後の海外展開の原動力になった。現在の海
外取引先は26社に達し、海外売上比率は12%である。平成15年
に、関東経済産業局より、国際化貢献企業として表彰された。
経営ビジョン、経営方針
実施項目:
代表取締役就任を機に、経営理念と経営方針を策定した。
経営理念:信頼のマーク 「KHK」
経営方針:信頼と満足の提供
KHKグループは、歯車を主体とした物作りとサービスを通じて、
皆様に信頼と満足を提供し、社会貢献いたします。
成果:
経営方針実現の一環として、ISO9001(品質)とISO
14001を全関連会社で取得し、信頼される品質の製品作りと
環境影響を配慮した活動を行い、総合技術力の高度化に取組んで
いる。
経営戦略
実施項目:
「歯車工房」(追加工システム)の稼動。標準歯車を、お客様の要望
に沿って追加工し完成品としてお届けする受注システムである。設計
コストの削減とリードタイム短縮を実現した。
成果:
145品目、9300種の標準歯車を常時在庫して、注文に応じて追加工
することで、①約束した日に必ずお届けする、②完成品としてお届
けする、③すぐ使えるという安心をお届けする をすることで、設計
コストの削減と製造期間の短縮を実現している。多品種・少量・短
納期生産システムを確立した。
人事・労務
実施項目:
組織的経営に移行した。外部環境要因は管理不可能要因であるが、
内部環境要因は企業にとり管理可能要因である。経営方針とポリシー
を明示することで、各組織は各自コントロールする。
成果:
経営者が示した経営方針とポリシーに従った各組織の決定事項を
尊重することで、各組織は自律的に経営に参画している。
設備投資
実施項目:
社長就任に際して、歯車工房(追加工システム)稼動させ、
そのための旋盤加工機や穴あけ加工機、キーみぞ加工機を導入
した。
成果:
歯車工房の稼動により、設計コストの削減や製造期間の短縮が
可能となり、直ぐに使える完成品を約束の納期に必ずお届けする
仕組みが完成し、当社の強みとなっている。
マネジメントシステムの構築
実施項目:
関連会社全社で、ISO9001(品質)とISO14001(環境)を取得
している。
成果:
ISO9001とISO14001は、統合マネジメントシステムとして運用
している。マネジメントシステムのための経営方針(信頼と満足
の提供)ではなく、経営方針を実現するためのシステムづくりと
してISOを運用し、強い組織づくり活用している。
3.経営承継時(あるいは承継後)に苦労したこと
苦労した事項: 特に無い。
4.経営承継成功の秘訣・アドバイス
経営承継時の環境は、100社100色であり、成功の秘訣として伝えることは
ない。よく質問を受けるテーマではあるが、各社は各社の経営環境に応じて
100様の対応策から、自社の適した方法の選択が求められる。
後継者として入社し、営業・製造・海外市場開拓などに従事し、現場での
経験、人と人とのふれあい、研修や勉強会などを通して自身の経営観を築い
てきた。
社長就任と同時に、自身の経営観を経営理念と経営方針として打ち出した。
経営理念である「信頼のマークKHK」は、社会に信頼され社会貢献のでき
る企業を目指している。「会社は私的なものではなく、社会貢献する義務が
ある」ことを意味し、企業見学やインターンシップを数多く受入れている。
経営方針の「信頼と満足の提供」は、コンプライアンス経営と、CS(顧
客満足)・ES(従業員満足)・SS(社会満足)を意味し、全従業員に定
着させている。
「心技体」のうち、「心」を最も重視している。誠意を持って仕事をし、
製品やサービスを売るに際し、礼儀正しい姿勢を最も大切にしている。
国際化の時代、海外でのビジネス経験は経営者にとり必須の時代である。
大学卒業後のイギリスへの1年間の語学研修や、入社直後のアメリカの得意先
での実務研修は、海外市場開拓成功の基礎になっている。