執筆者:佐藤 節夫
小冊子刊行 「円滑な経営承継のための経営革新」
経営承継成功事例 第2回 大塚プラスチック工業様
企業名 大塚プラスチック工業(株)
面談者 大塚輝之代表取締役社長
面談日 平成24年6月18日 経営承継事業部担当名 佐藤 節夫
【ヒアリング項目】
1.現社長の経歴
社長歴 4年(社長就任 平成20年7月 当社2代目)
前社長との関係:長男
社長就任までの職歴 社外:社外職歴なし
社内:21歳の3月入社以来、製造・技術・営業を経験し、
前社長の下、帝王学を学ぶ
2.経営承継時に新たに取り組んだこと、変更したこと
1)社長就任の準備
■実施項目:①社内技術部立ち上げ
②若手経営者塾(群馬工業振興課・プラスチック工業振興協会)
③外部セミナー(機械メーカ主催)
■成果:①仕事の流れ及び社長業の意識醸成
②業界ネットワークの展開
③最新技術情報・動向のキャッチアップ
2)経営ビジョン、経営方針
■実施項目:前社長のやってきたことを踏襲・文書化
■成果:「会社案内」「ホームページ」の刷新
3)経営戦略
■実施項目:承継時は仕事が順調で、受注をこなすので精一杯。
2年ほど前より、新製品開発に取り組む。
■成果:DIP・蒸着の設備を導入し新製品開発し、 全国中小企業団体中央会から、モノづくり中小企業製品開発等支援補助金を獲得した。 何か新しいものをやっているというパフォーマンスの面で、得意先より評価していただけた。
4)人事・労務
■実施項目:①従業員の高齢化に伴い、今後に備え定期新卒の採用
②市場動向の激変に対応するため営業部新設
■成果:①社内が明るく活性化してきた
②新規得意先を開拓するための先兵として,経験者(50歳)2名を中途採用、今後に期待
5)設備投資
■実施項目:①新工場建設計画中止(2008年リーマンショック影響)
②新製品開発に伴う設備(蒸着・DIP・・・・補助金活用)
③成形機更新(受注の変化に対応し小型→中型機)
④3次元CAD導入
■成果:既存製品の受注が激減している中、新製品対応するためには必要な設備投資であり、今後に期待
6)マネジメントシステムの構築
■実施項目:①ISO9001取得(2008年10月)
②電算データ類の分散管理
■成果:①品質管理の切り口のひとつ
②得意先の図面等の管理徹底
3.経営承継時に苦労したこと
■苦労した事項①
●社長業が分からなかった
●哲学とか確固たるものがない
●漠とした不安
●いつまでこの仕事が続くのか
■対応策①
○前社長との併走期間が長い方がいい
○3年ぐらいの期間があった
■ 苦労した事項②
●ヒト・モノ・カネでいえば、「ヒト」
●社長と従業員のモチベーションのギャップ
■対応策②
○どうやって従業員の能力を引き上げようかと力んでいた
○今なら、気負わない・自然体
4.経営承継成功の秘訣
■前社長との意思疎通
■前社長がいつまでも居続けず、手を引き、任せてくれたこと
■時の運、もし今だったら、失敗していたかも・・・
これで万全!経営承継・虎の巻(第46回)
経営承継は中小企業の経営者にとって避けては通れない大きな経営課題です。
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■これで万全!経営承継・Q&A
「企業評価は、どのような方法で行うのですか?」(回答者:佐藤 節夫)
<Question>
私は70歳の印刷加工業の創業者で、75歳で引退しようと考えています。
誰を後継者にするか、悩みに悩んだ末、会社を売ることに決めましたが、いっ
たい会社がいくらで売れるものなのか、よくわかりません。企業の評価はどの
ような方法で行うものなのか、教えてください。
<Answer>
企業評価の方法には、いろいろありますが、一般的に知られているのは次の
3つです。
①ストックに着目した評価方法・・・時価純資産価額法
②フローに着目した評価方法・・・DCF(割引現在価値)法
③マーケットからアプローチする評価方法・・・類似業種比準法
上場会社の企業評価で最も重視されてきているのはDCF法ですが、中小企業
の場合、「時価純資産+営業権」で評価する方法が理解しやすく、一般的で
多用されています。
【時価純資産】とは、貸借対照表の資産・負債を時価に評価し直した場合の差額
のことです。具体的には、
1)売掛債権については、回収不能分はないか、
2)棚卸資産については、滞留品・陳腐化品・不良品がないか、
3)固定資産については、土地・不動産の含み損益はないか、遊休資産はないか、
4)投資有価証券については、相場の動向により評価し、
5)ゴルフ会員権等については、含み損益はないか、
6)買掛金・未払金については、計上漏れはないか、
7)未払法人税等については、計上額は十分か、
8)引当金については、計上不足はないか、積立不足はないか、
等々、精査します。
また、損益計算書については、税法基準の会計処理を修正します。具体的には、
1)役員報酬の過大・過小計上はないか、
2)交際費の使いすぎはないか、
3)減価償却はきちんと計算されているか、
4)一時的な要因で発生した損益はないか、
等々、精査します。
【営業権】とは、会社の様々な経営資源を有効に活用して収益を上げる力のこ
とです。(一般的に理解されている「のれん代」とは異なります)。
例えば、仮に同じ利益を計上していても、そのもとになる経営資源の大きさ、
つまり会社の総資産(有形・無形)によって営業権は変化することになります。
具体的な算定方式としては、「年買法」が一般的で、多用されています。
営業権=税引後利益×年数(会社・業種により異なる)
いずれの評価方法にせよ、中小企業の企業評価は、「相場のないもの」に値段
をつけることに等しく、売り手・買い手双方に納得のいく根拠が求められます。
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これで万全!経営承継・Q&A(第40回)
経営承継は中小企業の経営者にとって避けては通れない大きな経営課題です。
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■これで万全!経営承継・Q&A
「M&Aにおける中小企業の特有な問題」(回答者:佐藤 節夫)
<Question>
新聞などでM&Aの記事をよく見かけますが、その記事は大概が大企業による
M&Aの記事です。中小企業の経営者としては、何か違うなという違和感があり
ます。M&Aによる経営承継について、大企業とは異なる中小企業特有の問題と
か違いがあれば教えてください。
<Answer>
大きな違いの第一は、中小企業は一般的にオーナー経営者によって経営され
ており、いわゆる「所有と経営の分離」がなされていないこと。
次に、オーナー経営者は対外的な信用と従業員の指揮監督責任を一身に背負
っており、中小企業経営者はまさに経営者の属人的な能力に負うところが大で
あること。
さらに、中小企業は一般に株式を上場しておらず、法律で定められた会計監
査を受ける必要がないことから、節税処理に重きを置いた経費処理ならびに会
計処理を行なっていることが多いこと。
以上3点が大企業とは異なる中小企業の特性であり、なかでも「節税に重点
を置いた経費処理・会計処理」がM&Aにおいて大きな問題となる可能性があり
ます。
具体的には、こんなケースがあります。
「当社の経常利益は見た目にはほぼ収支トントンである。しかし、経営者の
報酬や事実上オーナー一族の個人的な用途にまわっていたもの、および削れる
と思われる冗費を除くと、実質的な経常利益は○○千万円以上である。企業価
値を算出する場合には実質的な経常利益で判断してもらわねば・・・」
企業価値を実質的な利益で判断すべきというのは理論的にはその通りです。
しかし、M&A実務の現場に即して理解しておく必要があるのは、本当の冗費が
どこからどこまでなのか、買い手側が客観的に検証するのが難しい場合が多く
あります。
また、経営者の報酬は、金額の大小はあるとしても、経営管理という職務の
対価としての報酬であり、買い手側が新たに経営者を送り込む場合には職務に
見合ったコストが改めて発生します。
さらには、事実上オーナー一族の個人的な用途にまわっていた経費は、買収
後に税務調査が行なわれた結果、役員賞与と認定され、損金性が否認され、修
正申告を求められることもあります。
このように、中小企業のM&Aにおいてよく問題となるのは、「決算上の経常利
益」と「実質的な経常利益」の議論の背景には、実はいろいろなリスクが隠さ
れていることがあり、交渉がうまくいかないケースが多いということです。
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