成功する企業には新商品開発がある連載にあたって
● 企業が成功するには訳がある
新製品開発や新サービス創造、つまり企業の販売対象たる新商品の開発や開拓は、成功する企業の『その訳』として、最も大きな事業でしょう。この事実は、いま成功している企業でも、磐石の経済基盤を有する大企業でも同じです。
ただ、経営革新のリーディングファームたる当、協同組合さいたま総合研究所(以下、さいたま総研)としては、未だ成功から遠く、日々の事業に追われっ放しの中小企業にこそ、この『成功の訳』をご理解いただきたいところです。
この新商品開発シリーズは、平成19年11月から平成21年12月まで25回にわたって、『さいたま総研』のメルマガに併設して連載してきました。今回はそれに加筆・修正を加え、サイトにて公開いたします。
● この連載のカテゴリーと筆者のかかわり
実は、このブログ連載のカテゴリーと筆者の関わりは、18年も前に『新製品の企画開発術-その創造力のすべて-』(発行元:ぎょうせい)を上梓し たことに始まります。さらにその後、ビデオ『新製品開発力アップ対策』(発行元:シュビキ)の監修や『新商品開発の正しい実務手順(発想から企画書作り・ 売り方まで)』の執筆がありました。
次の『売れる新商品の開発手順が見える本』(発行元:中経出版)は、日刊工業新聞の平成11年1月5日号の書評にも取り上げられたものですが約11年が 経ち、さすがに廃刊されてしまいました。ご興味の方は次のURLで、のぼる経営のサイトを覗いてみていただければ、筆者の著述の全容がわかります。
もしもここでリンクがとれない場合は、検索エンジン【Google】【Yahoo! 】【msn】いずれにも【のぼる経営】と邦文で入力されると、筆頭にでてきます。この『ワークス』『◆著作』の項に詳述しています。
● 紙の次代はネットの活用
それはともかく、経営環境の変化が激しい時代です。特に、企業経営のリーディングファームとして、インターネットの普及は筆者などの経営コンサル タントにとって、これ以上ない大きな変化要因です。おかげで23年間も続いた旬刊誌『中堅企業の経営相談室』も、平成14年10月には廃刊の止むなきに至 る皮肉です。
しかし反面インターネットでは、企業家の方々に直接語りかけることができ、ご質問でもご意見でも即座にお聞きできるという経営の支援環境が到来したことになります。筆者が現役のうちに、ネット上に執筆できる時代が来ようとは、夢にも思わなかった変化です。
もしも筆者に、ご意見などをお寄せいただけるなら、お手数でもこのブログの中ではなく、上記のぼる経営からE-mailにていただければ幸いです。
● はじめが肝心
さて中小企業経営において、製品やサービスの新商品が容易に生まれない訳は、技術者がいなかったり、お金がなかったりと、先に経営資源の限界を考 えがちです。その点では、最終出版依頼11年経ってもあまり変わっていません。が、経営資源は決して与えられたものだけではないのです。
ここで素晴らしい新商品や新サービスが考えられるなら、その獲得に「必要な資源を何とか工面」するのが企業経営というものです。
だとすると「なにを開発するか」という、はじめの考えが大切です。間違った考え方をして、それに貴重な資源を注ぎ込むと、やがて企業は立ち行かなくなり ます。したがって「こんな新製品はどうだろう」とか「あんなサービスもあるな」と、はじめに考えるところが新商品開発の極意です。これはまさに『成功する 企業の訳』の始まりです。
● 誰にでもできる
だからといって、ひたすら慎重に考えさえすれば、新商品の獲得、新サービスの創生が約束されるわけではありません。
一体に新商品開発や開拓は、まず「アイデアを練り上げ」て、ハードやソフトの「研究、設計、試作、試行を展開」し、製品として製造・生産し、もしくは サービスとして実施・提供できなければ、実現しないものです。さらに開発された新商品は、売れて利益が上がらなければ、企業経営にとって無用です。
経営が『成功する訳』は「何がつくれるか、やれるか」ではなく、「何をつくるか、やるか」ですから「何が売れるか」を考えて「それをつくり」「そうやる」ことを意味します。
ただ、ものごとを考えるにはその方向や手順が、効率性や結果の成功率の決定要因となるものです。それはアイデア開発だけでなく、R&Dも生産も、販売促進にも共通していえることでしょう。ですからここでは、これらのプロセスすべてを考えていくことにします。
それさえマスターできれば、喉から手が出るくらいに欲しい新商品を、だれでも手にすることができるわけです。誰でもですから当然、中小企業にも新商品開発ができるというわけです。
● 理論より実務
このような考え方を筆者は、企業経営の実務体験と企業支援の現場において会得しました。それを述べようとするこのコラムは、企業家の方々が実際に『新商品を開発』し、『企業を成功』させていく実務面で、きっとお役立ていただけると確信いたします。
やや長丁場になりますが、次に挙げるのは各章の予告ですから、お気付きの点がありましたら、それこそインターネットの双方向性を活用し、ご質問ご意見を賜れれば幸いです。
とりあえず、シリーズの内容予告です
● 新商品は企画から - 新商品をものにする土壌づくりのはなし -
[基本]売れる新商品・新サービスはこうして創る
新商品は『どのようにつくるか』ではなく『なにをつくるか』です。この創造性の基本は、商品企画を『いかにうまくやるか』にかかってきます。では一体、企画とは何でしょうか。それをここで説くというわけです。
製品にしてもサービスにしても、ヒット商品提供の原動力となるには、まず企画の『立て方』が大切です。成功する企業に必要な新商品を開発し、利益を生む企業体質へ転換するまでを見通した、土台づくりや屋台骨の組立が、この[基本]のポイントです。
● 新商品コンセプトの樹立 -新商品の根っ子の部分をしっかりと-
[ターゲット] -新商品のターゲットを絞り込む-
いかに新商品が欲しくても、何でもいいというわけにいきません。そこには自から自社にあった『新商品コンセプト』が存在し、そのフレーム・ワークの中で考えなければ、欲しい新商品は手にできないのです。
アイデアをどのような形に具体化するか。最終的な市場をふまえ、自社がこれまで培った経験・得意技術などの経営資源を以って、他社との差別化を図りながら新商品のトータルコンセプトを自社のフレームの中で固めていくのです。つまり新商品企画の方向性が[ターゲット]として絞り込まれなければならないわけです。
● 情報モンスターに挑む - 新商品開発の幹を構築-
[情報]生きた情報が商品を育てる
新商品開発には情報が不可欠ですが、ターゲットを絞り込んでいなければ、必要な情報に集中できません。フレームが固まった次は、情報収集のテクニックについて述べましょう。
売れる新商品に育て上げる企画には、基本となる考え方に情報を媒介とした市場の洗礼を受ける必要があります。企画を『一人前にさせる』ために有用な情報 とはなにか。その集め方、分析手法、そして活用方法を全社員に共通して身につけさせ、いわば「新商品企画に命を吹き込む」ための[情報]の基本はどのように考えるかといったところです。
● 中心課題アイデア開発 -新商品の発芽は逞しく -
[着想]企画力を強める方法はこんなにある
素のアイデアが、ちょっとした思い付き程度では、そのまま新商品になりません。アイデアという『人々の思考』を実際の商品にする、つまり頭の中に描いただけのものを現実に形づくるには、それなりの手法があるものです。ここではその手法について考えます。
商品に関する『思いつき』や『ひらめき』など、いろいろな形態の思考は、新商品として具体化できる『アイデアのレベル』まで高めなければなりません。さ らにその思考は会社のみんなが、工業製品やサービスに形づくるため、関係者の『誰もが認識』できるようにしなければなりません。
それが『新商品企画』です。つまり新商品企画には、アイデアの出しやすい環境づくりから、発想技法の活用や企画書への具体化があるわけで、要するに[着想]を活かすためのコツやノウハウがいろいろあるというわけです。
● アイデア評価は企画書で- 新商品には優れた苗だけを -
[企画書]説得力のある企画書をつくる
経営にとってリスキーな新商品開発では当然、アイデアを企画書に示し、トップの評価を受ける必要があるわけです。と同時に、提案者側の仕事の遣り甲斐も、確実にこの段階から始まります。
企業経営にとっては大変リスキーな新商品開発は、アイデアをまとめてトップの承認を得てからの業務でなければなりません。したがってまずここでは、トップにわかりやすく効果的に伝えられる[企画書]の作り方を示します。それとともに今度は、提示された[企画書]をもとにしたトップ側の、評価手法を紹介していきましょう。
● 開発管理の要点 - 新商品の果実を結ぶ -
[開発]開発管理のコツをつかもう
開発管理は重要な経営機能です。が、技術がわからない管理者側にとって『新商品開発のマネジメント』は、開発者の自主管理に「任せてしまいたい」と思いたくなるくらいに、厄介に思えるのではないでしょうか。
しかし、開発自体はたしかに技術行為ですが、開発業務も企業経営の一端であるに違いないのです。そのかぎりにおいては、経営の管理対象から新商品開発を抜きにしたり、開発者任せにしたりするわけにはいきません。
『情報収集』にはじまり、『アイデア開発』に基づく『新商品企画』を実際の商品にするまでには、『開発環境』を整備し、『開発プロセス』をコントロールし、ときには『開発計画に修正』を加えることでさえ必要になります。
また開発が完了した時点では、商品自体に販売力が宿るように仕向けなければなりません。そのためには、理想的な開発のP-D-C-Aサイクルを築いていけるように、会社の総力を商品開発に注いでいくのが[開発]という管理対象の特性です。
● 販売ルートの考え方 - 新商品の収穫を得る -
[販売] 販売ルートとのつながりを強めよう
新商品開発に関する読本などでは技術偏重になるためか、新商品の流通ルート活用法など販売に関しては、あまり問題とされません。が、ここでは筆者自身の体験に基づいて、新商品の販売に固有のルートがもつ特性から順に、説きほぐしていくことにしましょう。
新商品は当然、消費者や最終ユーザーに向けて開発されます。開発者は必然的に想定する消費者や最終ユーザーの『ニーズに適合』する、商品への意識が強く なります。この意識が強過ぎるあまり、情報収集、商品企画、開発など、どの段階においても消費者や最終ユーザーと自分との中間にいるはずの販売ルートへの 意識が、弱まる傾向があるのです。
しかし新商品販売の各段階において、『最初の顧客』でもある流通ルートに対しては、新商品の魅力を「いかに伝えるか」そしてルートから「逆に何を学ぶか」など、ルート販売固有の課題があるわけです。
これは開発者から、消費者やユーザーに製品を『直販』する企業であっても、『生産・即・消費』に直結しているサービス創造の企業であっても、経済社会の 商流の仕組みとして意識しなければならないことです。つまりルート販売固有の課題を認識することは、とりもなおさず新商品[販売]に不可欠の新商品開発の最終段階になるわけです。