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執筆者:kwatanabe

第63回 コロナ禍での中小企業の生存戦略

中小企業の経営者の皆さま、コロナ禍中企業の存続をかけてたいへんな思いをされていることと存じます。この2年余り、TOKYO2020の無観客開催、史上空前の世界的金融緩和、デルタ、オミクロンと続く変異株の世界的蔓延等未曽有の事態に見舞われています。将来も地球温暖化の影響でパンデミックが起こると予想されています。一方、近年、AIとバイオ、ロボットと医療等異なるテクノロジーが加速度的に融合し、予期できない程の進化を見せています。市場経済はテーパリングの解消と有利子化でボラタリティが急速に高まり不安定になっています。このような変動する社会経済に中小企業はどう対応すべきでしょうか。座して救いを待つのではなく自主・自立の手立てを実行し、企業の生き残りを図らねばなりません。

〈コロナ禍の影響〉
2020年2月日経平均は18,000円台に暴落しました。その後、今日まで丸2年、株価は28,000円台近辺に回復しました。しかし、実体経済は急速な円安、消費の停滞、石油高騰等で低迷を続けています。世界の経済活動は、ビックデーターの活用、自動化・ロボット化・リモート化による生産革命へとパラダイムシフトが起きています。この2年の苦難は中小企業にとっても変貌するチャンスです。どのようにチャンスをつかみ革新的な経営を実現するかが、いま試されています。

〈コロナ緊急融資活用〉
新型コロナウイルス感染症特別貸付および危機対応融資等に特別利子補給制度を併用することで実質的な無利子化を実現できます。個人保証や物的担保によらずとも一律金利とし、融資後の3年間まで0.9パーセントの金利引き下げが実施されています。設備資金の貸付期間は20年以内、運転資金は15年以内です。中小企業向けの融資額は別枠で6億円まで、このチャンスに手元資金を潤沢にして資金繰りに費やす時間を経営革新に専念しませんか。

〈令和4年度コロナ関連予算規模〉
令和4年度予算は、「令和3年度補正予算と一体となって、新型コロナ対策に万全を期しつつ、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を図るための予算」との歌い込みで成立しています。予算規模107兆5964億円(10年連続で過去最大を更新)です。補助金は、経産省だけでなく、環境省、農水省等省庁だけでなく各地方自治体の補助金もあります。
貴社の事業の将来計画を後押しする補助金はないか、ご一緒に探索し、相応しい補助金・助成金申請にチャレンジしてみませんか。

〈コロナ禍からの再生を図る事業再構築補助金活用〉
令和3年補正予算、令和4年予算に中小企業等事業再構築促進事業補助金が織り込まれました。新分野展開・業態転換・業種転換・事業再編等による革新的な取組みを国が支援する補助金です。課題解決や政策効果を反映した事業計画の実現性が高い評価を得ます。
昨年の第3次までで21,223者の中小事業者が採択されています。コロナ禍を転じて福とする、新しい時代に即した事業再編のチャンスです。企業は時代の波に抗するのではなく乗り切っていく姿勢が大切です。投資資金がない中での変革は大変ですが、必要な投資の相当額(通常枠で100万円から従業員数に応じて8,000万円)を受ければ、思い切った改革に取り組めます。
事業再構築補助金は、コロナ禍で売上が減少した企業の構造改革を促し支援する補助金です。新分野展開・業態転換・業種転換等の類型は、製品製造や商品・サービスの一定程度の構造改革の取組が該当します。事業再編は、会社法上の組織再編行為である「合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡」等を行い、新分野展開・業態転換・業種転換を実施する取組です。事業再編行為をどのように使って事業再構築を図るのか、また、大企業等を目指す企業、海外直接投資、海外市場開拓等に取り組まれる企業には別に強力な支援措置があります。事業計画の策定には専門的な知識が必要です。ご一緒に貴社の思いを具体化しましょう。ご相談いただければ貴社の戦略的なステージの再確認をお手伝いします。

〈経営指標としての貸借対照表〉
繰越損失を解消しないと新たな借り入れは困難です。売上の回復が見えない中なかなか儲けどころか損失を抑えることもままなりません。しかし繰越損失のある決算に通常の融資はおりません。
繰越損失のある決算で役員借入金等がある場合ではその範囲で債権を放棄すればその分の繰越損失は解消します。繰越損失を超える分の債権は現物出資をすることも可能です。
このほか、役員貸付金のある会社は清算しないとその分自己資本の評価が下がり、公庫借入の道が困難になります。中小企業で貸借対照表の改善を試みる経営者は稀です。課税の問題や複雑な手続きがあるので慎重に検討する必要はありますが、3期分の決算書をお持ちくださればご相談に応じます。

〈経営指標としての損益計算書〉
損益計算書における利益は、税務申告や報告のため、売上高から経費を除いた差額を利益として示したもので、儲けではありません。「勘定合って銭足らず」で黒字倒産が半数を占めるのはこのせいです。計算の結果でしかない利益ではなく、粗利益から経費を除いた儲けを生みだしているかで日々の経営判断をしないと事業を誤ります。では、日々の集計からどのように粗利益と儲けを算出し日々の経営に生かすのか、その方法と実践の仕方を貴社の経営に取り入れてみませんか。

〈ご相談〉
次の表はコロナ禍での生存戦略例です。
〈ご参考資料:下記URL〉
https://drive.google.com/file/d/1vawNDTQwY-vUacdYKaRbOA163tprzH3e/view?usp=sharing
請書、事業計画書、議事録、各種証拠書類の作成等ご相談は下記にて承ります。
わたなべ経営法務事務所(認定経営革新等支援機関) ℡04-2006-1314(10:00~17:00)
https://office-watanabe.tokyo/

第41回 「中小企業を革新に導くイシューの共有(企業の宝探し)」の勧め

失われた30年と言われる平成が終わりました。この間、我々は何をしてきたのでしょうか。負の遺産を積み上げ、バブル経済に酔い、幻の高度成長を追いかけてきたような気がします。
中小企業は日本の経済に大きな役割を担ってきました。中小企業向きの仕事も十分にありました。しかし、今ではかつてのように下請けの仕事は降って湧いてきません。中小企業には今の時代を生き残るために必要な経営革新による成長が求められます。

経営内容の優れた中小企業は、事業の小さな変化を見逃さず将来の発展につなげていく絶えざる創意を凝らしています。
本稿では、中小企業を支援するコンサルタント(コンサル)に求められる、創意を促し、持続可能な「中小企業を革新に導くイシューの共有(企業の宝探し)」を提言してみたいと思います。

「いままでうまくやってきたのだから多少苦しくても現状どおりやっていた方が間違いない。」「それだけの投資もしてきたし現状を変えるのは嫌だ。」行動経済学では、このような現状維持が良いと感じてしまう心理を、現状維持バイアスとか、サンクコストバイアスと想定しています。
中小企業の経営者には苦労して会社を軌道に乗せた人が多く、現状の経営を変えることには心理的に抵抗があるようにみえます。心理的な意思決定のバイアスが解かれて革新的な経営が展開されるなら中小企業をはじめとする日本経済はもっと元気が出て、活力が生まれます。

コンサルは、クライアント企業に革新を起こすきっかけ作りとして、当該企業の存続発展のために取り組まなければならない問題、すなわち、イシュー(Issue)は何なのかを、経営者とともに突き詰めて考えてみることです。換言すれば、当該企業が潜在的に持っている宝探しのお手伝いをするのです。

現代社会は、VOCA(ヴーカ)ワールドといわれています。VOCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を集めたものです。世界中がインターネットでつながり複雑で多様な情報が錯綜しています。また、政治、宗教、気象変動など企業を取り巻く環境は変転として予測不能な状況にあります。
当該企業のIssueの認識は、置かれている状況を疑ってみることからスタートすべきです。昔の常識・理論は通用しない社会になっているからです。コンサルは客観的な情報を伝えられる有利な立場にあります。

人は様々ですからいろんな考えがあります。しかし、空理空論をもてあそぶコンサルでは、Issueの認識は進みません。まずは、仮説思考(アブダクション)をとってみて、創発(アイデア)の検証をサポートしてみませんか。
「想像できないものは創造できない。」といいます。次の時代にあり続けるための事業を想像できない企業はいずれ淘汰されます。企業を成長路線に乗せるためには、社員が共有できる企業理念や事業目標が明確でなければなりません。Issueの共有認識は、企業の存続に関わる次の事業目標の達成に向かって事業活動の生産性を高めるために不可欠なことです。

当該中小企業がIssueは何なのか組織として認識する方法としてSTPDの実践を次に提言したいと思います。
☑当該企業のIssue、すなわち何が問題なのか現状認識を分解し(See)、どのように解決できるか考え(Think)、スト-リーだてしてみる(Plan)。ストーリーが納得いくものか、事業コンセプトを言葉に表してみる。
☑ストーリーを、順序だてて図表にしてみて、図表にしたアイテムを一つずつその可能性を検証し、実行してみる(Do)。

なお、中小企業が社員とIssueを共有し、STPDを実践する過程で、信頼できる経営コンサルの支援を仰ぐことは有効です。自己満足な計画倒れに陥らないようにするためです。

事業の再構築、M&A、事業承継、新分野開拓、新製品開発等をお考えの事業者様、貴社のIssueを議論するなかで、貴社に眠っている宝探しをご一緒にいたしませんか。

【ご参考】
創発力を高めれば、企業を持続的に成長させることができるhttps://drive.google.com/file/d/1i88Q88MKSz3t6RG0fFsJjr3g5HOL7gWY/view?usp=sharing

第23回 「農業未来年表」

信頼できる人口予測によれば、2100年、日本の人口は明治維新の頃の3300万人に限りなく近づき、高齢化率は40%を超え、東洋の小国に逆戻りする。一方、インド15億人、アルジェリア8億人と人口爆発し、移民の国米国は4億人、美・食・愛の国フランスは7000万人に拡大する。中国は3億人減少して10億人規模となる。
地球温暖化は進行しており、2℃上昇すると、インド、アフリカ、中国等、砂漠化が拡がり、干ばつによる食糧危機が起こるとみられる。

さて、近未来の日本の農業について述べてみよう。農家数は、現在の3分の1以下、42万戸程度に減ると推測した。

農家数推移予測農業産出額は、2014年8.4兆円、1984年11.7兆円、生産農業所得は、2014年2.8兆円で、1984年4.5兆円と、大きく低下している。現在の状況としては、助成金、補助金等政策的な拠出金は、4兆円近くになる。食料自給率はカロリーベースで39%と、日本の基本穀物の生産高は、途上国に輸出できる状態ではない。   

現在就農者の平均年齢は67歳になっている。先進国のフランス、ドイツ、米国等の農業経営者の平均年齢は40、50代半ばで、農産物市場は開放されており、商品開発がしっかりしている。しかし、日本の40、50代層は、青年期に消費社会を迎え、就農するより会社員生活を選んだ。都市近郊農家では多くが兼業農家になった。
おそらく、10年後には就農者数は激減し、このままでは農業産出額は国民の需要を満たせなくなるほど低下してしまう。将来の日本は、食料輸入がひっ迫し、戦後のような食糧危機の再来が懸念される。

今、日本農業は転換期、イノベーションが必要とされている。しかし十分対応できていない。
45歳までの新規就農支援制度で、農業に取り組みやすくなった。3年間の所得補償、低利の貸付等、農業に参入する環境は整っている。しかし、途中で離農する者も多い。定着するのは1万人程度である。
農業は、新しい仕組みを取り入れ、脱皮しなければならない。大規模化、六次化、生産性向上といった農業改革に迫られている。新しい時代の農業は、家業から農業ビジネスに転換しなければ成り立たない。様々な農業ビジネスモデルが生まれると予想できる。その萌芽として、二つの事例を紹介する。

一つ目は、、イオンアグリに代表される。全国に圃場や次世代園芸施設を有し、生産から販売まで一貫したリテール型(製造小売)農業モデルを展開している。似たモデルとして、ワタミ、カゴメがある。どのような農産物がいつどれくらい必要なのか、そのためにどうするのかといった基本的なことがビジネスモデルに組み込まれ、農業ビジネスとして、さらに進化しつつある。
二つ目は、 地産地消六次産業型農業で、各地に、特徴的な成功事例が続出している。地域の生産者が、その地域に適した農産物、伝統的に作ってきた農産物を、その地域の消費者に適した商品として提供するビジネスモデルで、新鮮さや風土になじんだ美味しさが、地域還流の経済にも適している。地域ごとに、お金が落ちて、地域の中で回る経済が、地域の活性化にも貢献している。
以上、二つのモデルは、マーケティングを主流にしたビジネスモデルで、大きくとらえれば、これからは顧客志向型農業をめざすべきといえる。以上、将来の主流となる農業のモデルを示した。

第8回 中小製造企業とIT(渡邉勝次)

中小企業白書でITの活用が取り上げられてから久しい。ITの活用というと、電子メールや自社ホームページの開設、インターネットバンキング、自社サイトでの製品販売などがイメージされます。ここでは中小製造企業とITの関連で、ものづくり支援補助金事業の事業類型にあるIoTとは一体どのようなものを想定しているのかを考えてみました。

 中小企業庁は平成27年度ものづくり補助事業の対象として、「IoT等の技術を用いて生産性向上を図る設備投資等を支援。」と説明しています。例として「あらたに航空機部品を作ろうとする中小企業が、既存の職人的技能をデータ化するとともに、データを用いて製造できる装置を配置。」としています。
昔から普及しているNC装置や自動機械の導入でも「IoT等の技術」に含まれる幅広い内容で、国の施策としては、実に寛大な定義であると思えます。
施策の背景には、中小企業の人手不足と設備の老朽化がすすんでいることが考えられます。中小企業の設備年齢は、1993年のデータと比べて2倍近く老朽化しています。実際、設備投資額の推移をみると、円高や海外進出も加わりリーマン・ショック前の水準くらべかなり落ち込んでいます。リ-マン・ショックから7年近くたちますが、この間、休廃業・解散中小企業数は増加傾向が止まりません。

 IoTと重なる用語に「インダストリー4.0」があります。蒸気、電気、電子に続くITを第4次産業革命に位置づけたドイツでの官民一体となったプロジェクトを指しています。ドイツでは、主要な企業がテストベッド(模擬工場)を設けて、生産コストを極小化するスマート工場の実現をめざしています。
IoTは、米国ではすでにあたりまえのシステムになっていて、ますます進化しています。例えば、GEのジャック・ウエルチに続くジェフ・イメルトは、IoTを、「インダストリアル・インターネット」と名付け、GEという巨艦をけん引しています。一例ですが、GEのエンジンを搭載した旅客機(ハードウエア)にはすべてセンサーが取り付けられ、世界中から刻々と集まるデータをソフトウエアで処理し、メンテナンスや航空会社向けの営業サービスに活かしています。これによって参入障壁を築くとともに売上の増大を図っています。
インダストリー4.0は、工場内のIoTと理解して間違いありません。ドイツは、極限までコストをカットすることで米国や日本に対抗できる製造業をめざしています。日本がものづくり技術で遅れているわけではないのですが、「見える化」、「5S」等による工場内の合理化だけでは、人件費の増加をカバーするだけの製造コストのカットは限界が見えてきています。日本の中小製造企業にも部分最適でない全体最適のものづくり情報武装化のムーブメントが来ることを願っています。

 では、中小製造企業でIoTは合理化対策になるのでしょうか。まだ、明確な答えはないように思えます。
どういうシステムを導入すれば、どのくらい生産性が向上するのか、といった基本的なデータがありません。国内には、IoTを開発し、提供している企業はありますが、中小企業には、それを評価し、導入システムを組める人材はいません。そもそもFAメーカーが提供する標準的なIoTが中小企業にそのまま役立つとは思えません。中小製造企業は、あまりにも人手に依存した仕組みのなかでなりたっているからです。
大企業ではERPやFMSなどはすでに導入されています。IoTは考え方次第で導入にさほどの困難はないように思えます。
一方、中小製造企業がIoTで合理化を進める解は、発注先企業との連携システムや同じ中小企業同士の生産の同期化システムといった、システム結合による効率化に見出せるような気がします。内部のモノのインターネットは、標準システムのカスタマイズが欠かせません。外部とのモノのインターネットの構築のほうがシステムを構築するリスクが少ないと思われます。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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