ものづくり事業部

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執筆者:yyamada

第58回 商標の不使用取消審判について

1.商標とは
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
その商品やサービスは、ある程度の範囲の塊ごとにグループ(45の区分)に別れてます。さらにそのグループ内での小グループ毎に商標権を取得できます。
但し、出願された商標は、特許庁での審査を経て権利化されます。
但し、例えば、他人の商標と紛らわしい商標は権利化されません。
そして、権利化された商標は10年毎に更新できます。

2.時々他人の商標と紛らわしい商標を使いたいときがあります。そのときどうする?
通常は諦めます。他人の商標を勝手に使えないので、別の商標を考えます。
でも他人の紛らわしい商標を製品等で使用していないときがあります。このときには「不使用取消審判」を特許庁に請求します。
この請求が成功して、他人の商標権が取り消されると、自分が出願した商標が登録されて、自由に使用できます。どうしても権利化したい商標があるが、その商標権を他人が持っている場合には、他人がその商標を直近3年以内に使用していないことをWeb等で確認して、「不使用取消審判」を行うことになります。
使用しない商標権を保有し続けることは、他人が選択できる商標の範囲を狭める。また積極的に使用して業務上の信用維持を計る観点からも、不使用を続けることは好ましくない。そのために「不使用取消審判」の制度があります。

3.商標の不使用取消審判に関連した最近進行中の事例
登録された化粧品の商標Aがあります。
商標Aの権利者は従業員10人以下の企業です。
その商標を使用したい企業が現れました。その企業は世界的日用品メーカーです。世界中で同じブランドを展開しており、新たに展開するブランドがたまたま商標Aでした。
当然のことながら、世界的日用品メーカーは商標Aの使用をWeb等で調査済です。しかし、権利者の企業の事業規模が小さすぎるため、Webでは使用を発見できませんでした。
世界的日用品メーカーは「商標Aは不使用である」と考えて、不使用取消審判を請求しました。
実は商標Aを実施していたので、その証拠を基に争い、結果的に商標Aは取り消されませんでした。
その結果、現在でも世界的日用品メーカーは日本において、そのブランドを展開できていません。
今後、どうなるかは未定です。裁判事件になる可能性もあります。
いずれにしても、知的財産というものは企業規模に関わらず、公平な制度であり、必要に応じて積極的に活用することが望ましいと考えます。

第39回 特許情報を使った開発検討ツール

企業規模を問わず、新製品等を開発するにあたり、開発テーマをどのように決定するかは難しい問題です。ここで、最終的に収益となり、他社に対して製品やサービスを差別化するにはどうのようにしたらよいかの一案を開発検討ツールとして紹介します。以下の事項は経験的であり、人によっては意見が異なると考えます。

1.クライアントにおける研究開発テーマ決定の動機
a.クライアントとの会話によると、顧客から「より○○な特性を向上させた製品が欲しい」という要望を受けることが多い。その要望を実現するように開発が開始される。
b.研究者が、業界、製品、技術等に関する展示会に行くことがあります。そこで仕入れた用途、技術、市場、求められるスペック等の情報を基にして、新規開発テーマを決定することになります。
c.世間一般の動向、例えば現在であれば、プラスチック製ゴミの削減、環境保護等が、当該業種以外にも広く知られた課題です。そのような課題とする世間の動向やニーズを踏まえて、自社独自に開発できる分野等においてテーマを設定します。
d.その他として、コストダウンの要請、新規の規格対応等をきっかけにして開発テーマとします。

2.研究開発における情報の有用性
記の動機により決定したテーマに基づく開発であっても、基本的には依然として技術情報が不足する。そのため、開発者がひたすら努力して過度に試行錯誤して開発を進めることがあります。
これまで、同業他社を含む人が具体的にどのような開発をしてきたのかを確認できれば、過度の試行錯誤を削減できます。そのためには、他社等の情報が非常に重要です。

3.他社の開発情報を特許情報から読む
特許情報とは、これまでの特許出願書類の蓄積のこと。特許情報の中には実験データが多く含まれています。
特許情報から他社の技術を学習し、自社の開発に役立てることは制度上許されます。
特定のクライアントの特定の開発目的の適否を確認するため、また同業他社の開発でも行き届いていない分野を確認するには、特許情報を分析することが最適です。但し、年間30万件も出願されるので、情報の蓄積量は膨大です。その結果として、役立つ形では分析されていませんでした。

4.想定事例(タピオカ開発)
特許情報としては、タピオカ粉は、タピオカミルクティー以外にも、例えばわらび餅、餃子の皮、化粧品、賦形剤(錠剤材料)に使用した開発データがあります。
具体的にタピオカ粉をどのように加工して、それらの用途にするように開発してきたかを確認し、そのときに、タピオカ粉はどのような作用を期待されて使用されたのか等も確認します。これらを表計算ソフト上でマトリックス化すると、タピオカ粉が何を期待して使用されるのか、効果は何であるのか、他のどのような材料と混ぜて、どのように加工されるのかを把握できます。
その結果、同業他社が開発していないアプローチ、用途、効果等の情報が得られます。
このような情報は他のツールでは得られません。

5.実績
私は、既に2テーマにて特許情報の分析を行いました。競争が厳しい分野でも、このようなアプローチが有効であり、この分析結果を基にして、他社の研究の空白を狙い、新規の技術に関する研究が開始されています。

第13回 オープンダイアローグと企業支援シスエム

最近、オープンダイアローグが注目されています。オープンダイアローグとは、フィンランド一部地域にて行われている、急性期の精神病患者に対して、連絡後24時間以内に医師、看護士、カウンセラー等が患者の元に集結し患者を含めて会話をしながら治療するシステムです。すべての会話・検討を患者と共に行うので、このような名前になっています。速やかな対応が良好な結果を残しているそうです。

例えば、このようなシステムを企業支援のシステムに応用することはできないでしょうか?
もちろん、企業は患者ではないですが、対応すべき何らかがある点において共通するかもしれません。
例えば、自社で開発して、製造し、販売すること。これは大変重要ですね。
大変ですが、何といっても達成感があります。
しかし、確認すべき点があります。
特許権等の知財は大丈夫?
自社が出願することは任意ですが、製造する製品に関する特許権等を他社が持っていたとしたら。何となく厄介なことになるかも・・・チョット不安ですね。
しかも、「もうすぐ製造」。販売のメドがつき、いけそうなのに。取引先から知財の点で大丈夫かどうか聞かれることはよくあることです。
そんなとき、場合によっては、大丈夫かどうかを確認する作業が必要です。
そこで、弁理士の仕事(弁理士に限りませんが)の一つとして、権利関係等の調査があります。
製造予定の製品を実際に販売しても、特許権等を基に他社から文句を言われそうかどうかを確認します。
調査結果に問題がなければOK。問題があれば一緒に考えましょう。技術面、資金面、生産管理、製造コスト等も同時に検討しなくてならない可能性もあります。そのときには多くのプロフェッショナルが必要になるかもしれません。この点においてオープンダイアローグ的対応が必要かもしれません。
なんといっても「もうすぐ製造」なので時間がありません。
事業をより円滑に進めるために一緒に考えていきましょう。

なお、私事ですが、平成29年1月より、お茶の水内外特許事務所の所長となりました。よろしくお願いいたします。
事務所の場所は虎ノ門です。この場所にいながら、弊所の会議室の稼働率が低いことに気が付きました。会員の方でもし必要であれば、空いている時間に無料でお貸します。12人程度が囲めるテーブルが一つあります。本当に何のお構いもできませんが、よろしければどうぞご連絡ください。

第2回:新製品を開発するポイント:他人の知恵も活用しよう

今回は、新製品を開発する上での人材育成情報を提供します。

新技術の開発、新商品の開発、既存技術の改良は、ものづくり企業にとって、事業を発展させる上で不可欠の要素であることはいまさら申し上げるまでもありません。現在の技術水準を維持し、新商品の開発を行わなければ、ものづくり企業の明るい未来は望めません。もちろん、企業内において積極的かつ十分に研究開発を行うことができて、結果的に新商品を発売できるのであればよいのですが、大半の企業はそのような体制がないでしょう。おそらく、少数の従業員が暗中模索しつつ、研究開発を行うか、もしくは経営者の経験則、人的ネットワークから得られた情報によって、新技術や新商品の開発を行うことも多いのではないかと思います。

つまり、大企業でもない限り、ものづくり企業が単独に有する技術・知見・資金によって、次世代の技術や商品を開発することは困難です。このような現状は、大きくはないものづくり企業におおよその共通認識とされ、新技術の開発や新商品の開発を半ばあきらめかけることもあると考えます。しかしながら、企業が単独で有する技術や知見に基づき、新技術の開発や新商品の開発を行えないという現状は、小さな企業のみの現状ではありません。実は誰もが知る大企業も、新規分野に進出する際には、社外のリソースを精一杯活用します。大企業ですから資金と人材は豊富ですが、外部の技術情報及び外部の人材を活用するという点においては、企業規模は関係ありません。

さて、ものづくり企業が外部の技術情報を活用するために必要なのは、どのようにして外部の技術情報にアクセスするかです。もちろん展示会等に行き、出展企業の担当者から聞くことも有益でしょうが、より多くの企業からより深く技術情報を得る手段として、特許情報にアクセスすることが挙げられます。

現在、特許情報サービスは多くありますが、唯一無料のデータベースが特許庁のデータベースです。このデータベースには100年以上前に特許制度ができた時からの特許情報が収録されています。特許制度の目的は、最初に開発した技術を登録した人は一定期間独占的にその技術を使用できること、及びその代償として他人に技術を公開して利用を促すことによって、相互に影響し合いながら技術を発展させることにあります。
正にこの特許制度の目的に沿って、このデータベースにアクセスをし、場合によっては他社の技術を利用すればよいのです。

ものづくり企業の人はその分野において第一線で働き、技術的な知見が十分にあるでしょう。ぜひ、データベースにアクセスをして技術的知見をフル活用しながら、これまでの同業他社の技術情報を読んで欲しいと思います。いわゆる「特許調査」として、他社の情報を確認して、これを基に自社の技術開発や新商品の開発に活用すればよいのです。場合によっては、そのまま真似することも可能です。自社のみで一から開発するよりも、効率良く開発することができる点において極めて有益でしょう。まずは、データベースをいじっ
てみることから始めてみて下さい。データベースは、特許庁のサイト内「特許情報プラットフォーム」にあります。最初は解りにくいですが、まずは使ってみて下さい。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
「特許情報プラットフォーム」のトップページ>特許・実用新案>特許・実用新案テキスト検索、の頁からいじるのが良いかも知れません。同業他社の会社名、大学の先生名等で検索も可能です。なお、データベースを使用することが、最初は難しいようであれば、弁理士の中には使用できる人もいます。相談していただくのも一手です。社員の多くがこのような技術情報に詳しくなり、活用されることを願っています。

最後に注意点ですが、他社の技術を採用するときに、20年より前の特許出願のものであればどんなに真似しても構いません。20年前以降の特許出願のものであれば、他社の特許権が最初から無いか、消滅していることを確認して下さい。そうでないと、特許権を侵害していると言われる可能性があります。

弁理士:山田 泰之

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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