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執筆者:戸崎 洋平

第75回 経営判断の基準作りについて

自社の経営判断をしていく上で、様々な経営指標を定量的な数値として把握することは重要です。その数値を基準に現状の改善に取り組むことや、その数値の業界標準値に近づけることを目標とする等できるようになります。

一般的に、「財務会計」と呼ばれる基準に従った決算書の数値をもとに、過去と比較したり、専門機関がまとめているデータの平均値と比較することは、一定の参考にはなりますが、より精度の高い経営判断に活かすのはどうしても難しくなってしまいます。

自社の事業特性に合わせた「管理会計」を取り入れ、基準値や目標値を作り、経営判断をしていくことが望ましいですが、初めて取り組む中小企業・小規模事業者においては、どのように進めていくべきかわからないということがあると思います。

例えば、いくつかの部門があり、売上高は製品ごとや顧客ごとに分けて把握はしているが、経費はまとめて管理しているため、「どの部門がどれくらい利益を出しているのか、わかりにくい」ということがあります。

また、「経営陣や経理、総務といった本社部門の費用は適正なのか」という判断が悩ましい。ということもあります。このような場合、原価と経費を変動費・固定費に分けた上で、部門ごとにかかっている費用を明確に分けて損益を管理することは、全社への貢献度を把握するには有効な手段の一つです。本社経費などの共通費についても各部門に按分し、共通費を賄う収益が出せているかが把握できます。もちろん、どのように配賦するかは事業形態に合わせて設計する必要があります。

次のステップとしては、製品・サービスごとに原価を算出する「原価計算」に取り組むことも重要となります。

1つの製品を1単位作るのにどのくらい費用がかかるのか、どのくらいの単価で販売しないと利益が出ないのか、どのくらいの量を生産しないと固定費を賄えないのか等が見えてきます。

製造にかかる間接費をどのように配賦するかについては、製品を1単位作るのにかかる時間などで基準を作ることが検討できます。

上の図表ように、事業の特性に合わせて自社基準を作ることで、「どの部門に力を入れるのか」「この単価で良いのか」「もっと生産性を上げないといけないのか」「無駄なコストがあるのではないか」といった経営判断の精度を高めることができ、環境変化の激しい現代において柔軟な対応を取ることができます。

この数値は、各部門に従事する担当者の評価や目標として活用できる一方で、部門間に差ができてしまう場合は、モチベーションの低下などに気をつけなければなりません。また、基準の種類が増えすぎたり、複雑化しすぎて理解が難しくなったりすることにも注意が必要です。最大の目的は、経営判断に活かせる有効な基準を設計し、全社が一丸となって目標に向かって取り組める環境を作ることになります。

さいたま総合研究所には、このようなサポートができる中小企業診断士などの資格を有した専門家が多数在籍しています。自社の経営判断のための基準づくりを検討の際は、是非ご相談ください。

第52回 外国人起業家の支援について

現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、訪日する外国人は激減している状況ですが、直近の数年間においては右肩上がりに上昇しており、さらに日本で起業する際に必要となる「経営・管理ビザ」の取得者も多くなっていました。この「経営・管理ビザ」を取得するには現行制度上、入国の際に事務所の開設に加え、常勤2名以上の雇用又は500万円以上の国内での投資等の要件を満たしている必要があり、外国人が国内のパートナーなしに一人で創業することはなかなか難しいという状況となっています。

これに対して、東京都を始めとした国家戦略特区の中には、外国人創業人材の受け入れを促進する支援スキームを用意する自治体があるなど、外国人の起業を促す取り組みを推進しています。いまだ感染症の状況は先行きが見えませんが、いずれ収束した際には外国人起業家の受け入れも改めて促進していくものと考えられます。

このように今後も高まるニーズに合わせて、我々のような経営コンサルタントにも外国人起業家からの支援依頼が増えてくるものと予測されます。

当方が支援した事例として、「日本で起業したばかりだが、融資を受けたい」という外国人のご相談がありました。日本では日本政策金融公庫や自治体の制度融資など創業者向けの融資が多く用意されていますが、基本的には日本語での対応(書類作成やコミュニケーション)が求められるため、外国人にとってはハードルの高いものとなります。また、日本の文化に慣れていない外国人にとっては、「なぜ、このような書類がいるのか?」など、手続き面でも理解を頂く必要があります。

当方からは、金融機関が納得できるような、しっかりとした事業計画を立案するサポートをさせて頂きました。まずは英語でご自身の起業に対する熱い思いや日本で成し遂げたいことを書き出して頂き、そこから事業のコンセプトを明確化、そして実現可能な損益計画・資金繰り計画を立案します。もちろん最後は日本語に翻訳するのですが、審査する側が読んでわかりやすいものに修正しながら作りあげることも重要です。結果的に、無事に運転資金を好条件で借り入れすることができました。

 

 

 

 

 

 

外国人起業家にとって、日本での資金調達は大きな課題です。我々のような中小企業支援の専門家においても、柔軟なコミュニケーションで外国人に寄り添い、頼れるパートナーとなることが求められていると言えるでしょう。

第33回 マーケットイン型の商品開発における成功要因

ものづくり企業では「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という考え方のもと、商品開発を進めていくことがあります。聞いたことがあるという方も多いかと思いますが、改めてご説明しますと、一般的に「マーケットイン」というのは、顧客や市場が欲しいと思うものや求められているものを開発しようとする考え方で、「プロダクトアウト」というのは、自社の持つ技術や設備など提供する側の発想から商品を開発しようする考え方と言えます。

一時は「顧客ニーズに合わせたものづくり」として、徹底したマーケットイン型の商品開発が支持されたこともありましたが、やはり顧客の声だけでは画期的なイノベーションは生まれず、プロダクトアウトの思考で開発することも重要だと再認識されています。この二つはどちらが良い悪いではなく、自社のコア技術や主力製品、自社と取り巻く環境やマーケットに合わせて、柔軟にその対応を変えていく必要があります。

私の知っている企業で、「マーケットイン型の商品開発」に取り組み、ヒット商品を開発した部署がありました。営業・マーケティング部門の徹底した調査・現場からの情報収集、それに対応する素材研究や設計に対応した開発部門、さらに外注に頼ることなく、自社のコア技術で製造できるラインを構築した製造部門。まさに三位一体の取り組みにより、メーカー側では検討もしなかった製品ができあがったのです。

しかし、この成功に至るにはさまざまな障壁がありました。顧客のニーズに対して、「こんなものが売れるのか」「作るのが難しい」「在庫が残ったらどうするんだ」など、部門間のコンフリクトが発生しました。これに対して、部署を牽引するマネージャーは3部門がうまく情報を共有することができるようリーダーシップを発揮し、各部門のモチベーション維持を図りながらプロジェクトを統率しました。

戸崎図表

 ヒット商品の開発において、いずれのアプローチにしても開発・製造・営業の各部門が一体となって取り組まなければ成功はありません。自社のコア技術を中心に部署のリーダーが各部門をマネジメントし、ひとつの目標に向かって互いの情報を共有しながら進めていくことは、マーケットイン型商品開発の成功要因の一つと言えるでしょう。

 

 

 

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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