ものづくり事業部

事業部トップ>執筆者:矢内 直人

執筆者:nyanai

第71回 銀行審査の裏側を覗く

銀行はなぜ審査をするのか?
経営者の人柄、考え方をみて「与信」を見定めるためです。実は、雑談の中からすでに審査は始まっています。例えば、相手の身なり、服装、話題の中から品定めをしています。
「第一印象」はとても大事です。私の経験では、「何か引っかかる」と思った先は融資手続きに時間が掛かったり、倒産したりと問題となりました。
<ヒト・モノ・カネ>をみる
この3つが揃っていないと融資で失敗します。これはどこの銀行でも新人時代にくり返し教えられることです。

ヒトの審査とは
この社長にお金を貸してちゃんと返ってくるか、融資のお金を有効活用してくれるか、長く付き合っていける先か等です。会社が儲かっていないのに高級外車に乗っている、社長の自宅がやけに豪華、身なりが派手、遊びが派手、愛人がいるというケースはヒトの審査で落ちてしまいます。また、意外に節税の好きな社長・税理士は実は銀行は好きではありません。それは、なぜかというと、
・返済能力が減る=融資可能額が減る
・自己資本が積みあがらない
・節税する=お金が出て行く
・本来の収支が分からなくなる
からです。
保険料を使った節税がはやりましたが、実は審査という点ではマイナスだと思います。

モノの審査とは
これは、事業に強みや将来性があるか、融資で伸びる可能性があるかといった銀行に収益をもたらすかどうかという観点で見ています。

カネの審査とは
これは、決算書で判断します。「会社には銀行用、税務署用、取引先用の3つの決算書があると言われる」銀行は提出された決算書が正しいかどうか、粉飾がないかどうかを調べます。粉飾を見つけるようになれると一人前と言われました。
簡単な粉飾は、勘定科目を3期~5期並べてみると科目の推移に異常があれば浮かび上がってきます。

1.決算書はどこから見るか
皆さんは決算書をどこから見るでしょうか?
一般的には、利益がどれだけ出ている会社かということでP/Lから見るのではないでしょうか?
実は、銀行員は、貸借対照表(B/S)から最初にみます。それも、利益剰余金をその会社の業歴で割り、過去の平均利益を計算します。
そして、当期利益と見比べ、最近儲かるようになった企業か、昔はよかったがじり貧になってきた企業かを判別します。儲かっていた企業が連続で赤字を出し始めると立ち直るのはなかなか難しいと経験則で言われています。

2.融資を引き出すには銀行をファンにする
銀行は「晴れている時には傘を貸すが雨が降ったら貸してくれない」とよく言われます。
業績のいい時にお金を借りると、実は銀行と良好な関係が作れるようになります。預金が多い企業には、銀行の決算が近づくと先方から好条件で融資の話を持ってきます。資金に余裕を持つことで社長が金策に走る必要がなくなり、業績が拡大し始めます。
実は無借金会社が融資を申し込んできたときには断ることが多いと言われます。これまでお金があるから借りないと言っていたのにお金が必要になる、すなわち「自分の会社の業績が悪い」と言っているようなものです。

実際コロナで倒産した会社のなかには無借金会社だったところが意外とあります。
低金利の時代、節税をするのであれば借入をして手持ち預金を増やし1年ぐらいは売上がなくてもやっていけるぐらいの会社にする方がこれからの時代はいいかと思います。金利は経費です。将来の業績悪化の時に備えた保険と思えば決して高いものではありません。

3.資金繰り表を出すとポイントがあがる
決算書は過去のものです。これに対し、資金繰り表は会社の未来を示したものです。意外と税理士の先生でも資金繰り表が作れない方がいます。
銀行は資金繰り表を作って毎月出してくれる会社を高く評価します。
また、資金繰り表を作っておけば、入金が遅れることが事前に分かった場合の対応が素早くできます。手形のように絶対払わなければならないもの、社会保険料や税金など一時的に支払いを延ばせるものなど支払の順番を変えることで凌げることもあります。
資金繰り表作成のポイント、経常収支、経常外収支、財務収支に分けることです。一時的な経費、税金支払いは経常外に月末が休日だと試算表の残高と合わなくなるので注意してください。財務収支も面倒でも銀行ごとに記入し提出すると他行の状況もわかり融資が出やすくなります。

4.銀行には、いい時も悪い時も情報の早期開示をする
銀行に試算表を翌月には提出すると評価は変わります。最近は会計ソフトで作れますので早いところは翌月の5日には出来上がるといったところも珍しくなくなりました。
いいことも悪いことも早く伝えることが会社の信用となります。経営計画発表会を行う企業へは銀行も融資をしたくなります。

5.士業に求められる銀行との関係強化
国は、銀行に事業性評価による伴走支援を求めています。しかし、融資以外の商品も売らなくてはいけないうえに、残業をすることができず、時間がないのが実情です。
中小企業の経営者もコロナの次は円安での物価高、賃上げにどう対処すればいいかで時間がないと思います。補助金以外にもゼロゼロコロナ融資の借換え支援をしてもらいたい企業がこれから増えるかと思います。銀行審査の裏側を知ることで、銀行との関係強化を図り、銀行担当者が稟議を書きやすい資料を提出できれば、銀行との関係強化が図られます。頼りになる存在として経営改善計画書等の作成依頼もあるかもしれません。

第62回 新型コロナ禍で見えてきた資金調達支援

新型コロナウイルスが世の中の状況を一変させた。とりわけ、東京オリンピック開催やインバウンド需要の拡大を見越して投資を拡大してきた、飲食業、ホテル旅館にとっては大打撃となった。
しかし、リーマンショックに比べると失業者が巷にあふれ、治安が悪化するといった状況もなく世の中が回っている。その背景には、国がとったコロナ対策の緊急融資制度と雇用調整助成金による雇用対策が経済面では功を奏していることは間違いないようである。

1 公庫のコロナ対応融資の状況
コロナ特別融資は現在も公庫と商工中金で実質無利子の融資が取り扱われている。昨年4月に開始された当初は、申し込みが殺到し休日返上で職員が対応に追われた。
公庫のホームページを見ると、コロナ特別融資は令和2年9月時点で665,150 件、11兆3957億円の融資決定がなされている。
グラフで見ても分かる通り3月~7月までの件数の伸びが大きく、コロナに感染する職員が出る中でも1日も店を閉めることなく対応を行った。

 

 

 

 

(出所:公庫HPより)

2 民間銀行への保証引き受け業務
公庫は、各都道府県の信用保証協会の信用保証の再引き受けを行っている。昨年5月からは都道府県の制度融資を通じた資金の供給だけではなく、6月からは民間金融機関の貸し出し保証も100%引き受けることで公庫や商工中金だけではなく、民間金融機関を通じて実質無利子の資金提供が行われた。
その結果、令和2年度の公庫の保険引き受けは前年度の83,243億円から約4倍の332,106億円となった。

 

 

 

(出所:公庫HPより)

3 銀行とは信用の貯蓄するところ
「銀行は晴れた日に傘して雨の日には取り上げられる」とよく言われる。これは、銀行だけに限ったことではなく、通常の商取引になかでも赤字企業には売らない、与信管理を行っている企業は多いかと思われる。
銀行はどんなところかと聞いたら、たぶん多くの方は「貯金をするところ」と答えるのではないか?
しかし、企業経営者には「銀行は信用の貯蓄をするところ」と答えてもらいたい。
銀行は貸したお金を無事返した回数でその企業の信用度合いを判断する。いくら資産を持っていても、いくら預金をもっていても銀行は貸してくれない。
特に、無借金の会社が融資を申込んだ場合には、まず赤字を疑う。現にコロナ禍では無借金経営の飲食店が赤字となった。本来なら、貸してもらえない状況でもコロナ融資という制度がこれを救ってくれた

4 これからの中小企業の経営指導に求められること
コロナで借りた融資もそろそろ返済が始まる。赤字が続く企業にとっては返すどころか追加融資をしてもらいたいのが実情ではないだろうか?
公庫の国民事業では、コロナ融資でヒアリングや提出した計画と実績が違う、これでは返済力がないので追加融資ができないと断られるケースも出てきそうである。
今の銀行員は現場を見て企業審査を学ぶ教育を受けていない。投資信託や生保商品も売れと言われ稟議書をじっくり書いている時間がないのが実情である。
ぜひとも士業やコンサルの先生には事業計画書、資金繰り計画書を一緒に作成して、潤沢な資金調達ができるように支援をお願いしたいところである。

 

 

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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