地球温暖化防止の切り札として太陽光発電や風力発電が積極的に導入されはじめて20年が経過しようとしています。そろそろ初期に導入した再生可能エネルギー設備の寿命による廃棄や更新が始まっており、2030年頃からは大量廃棄時代を迎えようとしています。再生可能エネルギー設備の廃棄の実情とリサイクル課題を紹介します。
1. 使用済み太陽光パネルの廃棄・リサイクル
FIT制度の下で大量設置した太陽電池モジュールは、2030年以降に大量廃棄時代を迎え、年間50~80万tが排出されると想定されています。2020年の太陽光パネル回収実績はまだ0.7万tですが、66.5%がリユースされ、33.5%がリサイクルされています。
太陽光パネルのリサイクルは、現状では単純破砕処理方式から高度選別方式まで種々あり、より高度なリサイクルとなるべく、各社が検討中です。アルミフレームのリサイクルは容易ですが、重量比率の高いガラス・プラスチック・シリコンのマテリアルリサイクルをどう促進するかが課題です。
2. 風力発電設備の撤去とリサイクル
風力発電所は1990年代以降建設され続け累計2,300基が北海道・東北・三重・西九州等風と土地が豊富な地区に設置されています。20年の寿命を迎えた風力発電機の解体撤去は190基となり、2030年以降は年100基 (1,500t) ペースになると推定されています。風力発電機解体撤去の困難性は、高さ60m・重さ数十トンの巨大さ、主部材の風車ブレード素材はFRPリッチでリサイクル困難、立地が僻地のために輸送コストが高い等にあります。現状では重機で解体した風車ブレードは切断の後に現地の産業廃棄物処理業者が埋立処分しています。
クリーンエネルギー設備の埋立廃棄をなんとか資源循環リサイクルしたいと、宏幸(株)が環境省の補助金を活用して「FRP(繊維強化樹脂)を原料とする風車ブレードリサイクル実証事業」を令和4~5年度に実行中です。これが実現すれば、解体した風車ブレードを粉末加工して他の再生素材とブレンド成型することで、太陽光パネル下敷き地面マット等の再生合成樹脂としてリサイクル社会実装していきます。再生エネルギー設備の循環リサイクルというクリーンサステナビリティが構築できます。遠山は宏幸(株)の顧問として、環境省の実証事業およびリサイクル技術の進展に積極的に関わっています。
3. 再生エネ設備リサイクル専門家会議(環境省・経産省)
政府環境省と経産省は、前記の再生エネルギー設備の廃棄・リサイクル課題の政策検討のために「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」を2023年4月より立ち上げて、4回の会議を開催しています。https://www.env.go.jp/page_00665.html
第4回検討会(2023/7/18)のヒヤリング資料6宏幸(株)阪和興業(株)合同資料「風力発電機解体事業の現状/FRPを原料とする風車ブレードリサイクル実証事業」について、阪和興業:八木部長、宏幸:高谷社長、宏幸顧問:遠山(さいたま総研理事長)が発表しました。https://www.env.go.jp/council/03recycle/page_00024.html
日本の脱炭素とリサイクル技術向上に貢献していきたいと願っています。