ものづくり事業部

月別アーカイブ:2023年 4月

第71回 銀行審査の裏側を覗く

銀行はなぜ審査をするのか?
経営者の人柄、考え方をみて「与信」を見定めるためです。実は、雑談の中からすでに審査は始まっています。例えば、相手の身なり、服装、話題の中から品定めをしています。
「第一印象」はとても大事です。私の経験では、「何か引っかかる」と思った先は融資手続きに時間が掛かったり、倒産したりと問題となりました。
<ヒト・モノ・カネ>をみる
この3つが揃っていないと融資で失敗します。これはどこの銀行でも新人時代にくり返し教えられることです。

ヒトの審査とは
この社長にお金を貸してちゃんと返ってくるか、融資のお金を有効活用してくれるか、長く付き合っていける先か等です。会社が儲かっていないのに高級外車に乗っている、社長の自宅がやけに豪華、身なりが派手、遊びが派手、愛人がいるというケースはヒトの審査で落ちてしまいます。また、意外に節税の好きな社長・税理士は実は銀行は好きではありません。それは、なぜかというと、
・返済能力が減る=融資可能額が減る
・自己資本が積みあがらない
・節税する=お金が出て行く
・本来の収支が分からなくなる
からです。
保険料を使った節税がはやりましたが、実は審査という点ではマイナスだと思います。

モノの審査とは
これは、事業に強みや将来性があるか、融資で伸びる可能性があるかといった銀行に収益をもたらすかどうかという観点で見ています。

カネの審査とは
これは、決算書で判断します。「会社には銀行用、税務署用、取引先用の3つの決算書があると言われる」銀行は提出された決算書が正しいかどうか、粉飾がないかどうかを調べます。粉飾を見つけるようになれると一人前と言われました。
簡単な粉飾は、勘定科目を3期~5期並べてみると科目の推移に異常があれば浮かび上がってきます。

1.決算書はどこから見るか
皆さんは決算書をどこから見るでしょうか?
一般的には、利益がどれだけ出ている会社かということでP/Lから見るのではないでしょうか?
実は、銀行員は、貸借対照表(B/S)から最初にみます。それも、利益剰余金をその会社の業歴で割り、過去の平均利益を計算します。
そして、当期利益と見比べ、最近儲かるようになった企業か、昔はよかったがじり貧になってきた企業かを判別します。儲かっていた企業が連続で赤字を出し始めると立ち直るのはなかなか難しいと経験則で言われています。

2.融資を引き出すには銀行をファンにする
銀行は「晴れている時には傘を貸すが雨が降ったら貸してくれない」とよく言われます。
業績のいい時にお金を借りると、実は銀行と良好な関係が作れるようになります。預金が多い企業には、銀行の決算が近づくと先方から好条件で融資の話を持ってきます。資金に余裕を持つことで社長が金策に走る必要がなくなり、業績が拡大し始めます。
実は無借金会社が融資を申し込んできたときには断ることが多いと言われます。これまでお金があるから借りないと言っていたのにお金が必要になる、すなわち「自分の会社の業績が悪い」と言っているようなものです。

実際コロナで倒産した会社のなかには無借金会社だったところが意外とあります。
低金利の時代、節税をするのであれば借入をして手持ち預金を増やし1年ぐらいは売上がなくてもやっていけるぐらいの会社にする方がこれからの時代はいいかと思います。金利は経費です。将来の業績悪化の時に備えた保険と思えば決して高いものではありません。

3.資金繰り表を出すとポイントがあがる
決算書は過去のものです。これに対し、資金繰り表は会社の未来を示したものです。意外と税理士の先生でも資金繰り表が作れない方がいます。
銀行は資金繰り表を作って毎月出してくれる会社を高く評価します。
また、資金繰り表を作っておけば、入金が遅れることが事前に分かった場合の対応が素早くできます。手形のように絶対払わなければならないもの、社会保険料や税金など一時的に支払いを延ばせるものなど支払の順番を変えることで凌げることもあります。
資金繰り表作成のポイント、経常収支、経常外収支、財務収支に分けることです。一時的な経費、税金支払いは経常外に月末が休日だと試算表の残高と合わなくなるので注意してください。財務収支も面倒でも銀行ごとに記入し提出すると他行の状況もわかり融資が出やすくなります。

4.銀行には、いい時も悪い時も情報の早期開示をする
銀行に試算表を翌月には提出すると評価は変わります。最近は会計ソフトで作れますので早いところは翌月の5日には出来上がるといったところも珍しくなくなりました。
いいことも悪いことも早く伝えることが会社の信用となります。経営計画発表会を行う企業へは銀行も融資をしたくなります。

5.士業に求められる銀行との関係強化
国は、銀行に事業性評価による伴走支援を求めています。しかし、融資以外の商品も売らなくてはいけないうえに、残業をすることができず、時間がないのが実情です。
中小企業の経営者もコロナの次は円安での物価高、賃上げにどう対処すればいいかで時間がないと思います。補助金以外にもゼロゼロコロナ融資の借換え支援をしてもらいたい企業がこれから増えるかと思います。銀行審査の裏側を知ることで、銀行との関係強化を図り、銀行担当者が稟議を書きやすい資料を提出できれば、銀行との関係強化が図られます。頼りになる存在として経営改善計画書等の作成依頼もあるかもしれません。

第70回 先端設備等導入計画や経営力向上計画の認定により税制支援が受けられます(令和5年4月改正版)

国は、中小企業の設備投資を後押しするため、様々な施策を用意しています。本稿では、令和5年4月に改正された情報を基に、先端設備等導入計画の認定で受けられる固定資産税の特例と経営力向上計画の認定で受けられる法人税の特例についてご紹介します。

1.先端設備等導入計画と固定資産税の特例について

先端設備等導入計画とは、中小企業者が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。認定された事業者は、生産性を高めるための設備を取得した場合、固定資産税の軽減措置(3年間1/2に軽減。賃上げ方針を従業員に表明した場合は1/3に軽減)を受けることができます。例えば、耐用年数8年、1億円の機械装置を購入するにあたり、事前に先端設備等導入計画の認定を受けていれば、3年間の節税見込額は約140万円です(1/2軽減の場合)。

2.経営力向上計画と法人税の特例について

経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。認定された事業者は、計画に基づき一定の設備を新規取得して指定事業の用に供した場合、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。

例えば、1億円の機械装置を購入する場合を考えます。設備取得年度の税負担軽減目的なら即時償却を選択し、長期の法人税額合計を減少させる目的なら税額控除を選択します。10%税額控除なら、最大1,000万円の税額控除となります。但し、税額控除額は、その事業年度の法人税額の20%が上限となりますので、法人税額が1,000万円であれば税額控除限度額は200万円です(税額控除の限度額を超える金額については、翌事業年度に1年間繰り越すことができます)。なお、補助金を受給して圧縮記帳の適用を受ける場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額となります。

3.まとめ

先端設備等導入計画や経営力向上計画の認定による税制支援は令和7年3月31日までの時限措置です。計画認定を受けるためには、設備投資によって労働生産性を一定程度向上させる事業計画を策定しなければなりません。加えて、先端設備等導入計画では投資計画書の作成、経営力向上計画では工業会証明書の取得または投資計画書の作成が必要です。設備投資を予定されている事業者様におかれましては、補助金の利用と併せてこれらの計画認定をご検討されることをお勧めします。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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