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新商品と情報 第3章 情報モンスター 3、4

成功する企業には新商品開発がある

3.情報モンスターに挑む  - 新製品開発の幹を構築 -

3-3.能動的な情報活動

〔実際の調査ステップ〕

● 能動的な情報
 情報活動の「中心は調査」です。調査とは「積極的に情報を集めにいく」ことが第一要件です。そして次の調査要件は、収集した大量の情報を整理・分析し、社内で使える情報レベルまで質を高めることです。調査ステップは、常識的ですが図表3-10に示すとおりです。
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● 受動的な情報はない
 仮に何らかの機会に『耳寄りな話』を受けたとしても、自分の関心事でなければ、また「その気になって」聴かないかぎりは、情報になることはありません。 ですから新聞・雑誌の一般的に『受動的な情報』のケースであっても、積極的に受け入れなければ「情報にならない」わけです。
 一般的な調査対象から得られる基本情報は、まったく常識的な図表3-11のようなものです。
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 また、一般的な調査対象としては情報の三要素に類別すると、これも常識的な図表3-12が考えられます。ですから一般的な調査はいずれも、全く常識的な内容になるのですから、調査のもうひとつの要件である整理、分析が加わらないと、調査にならないわけです。
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● 基礎知識とは違う調査テクニック
 ただ、実施段階では調査テクニックが、効率性と調査品質を決めます。調査対象が個別的・専門的な内容であれば、前工程の調査実行で高度なテクニックを要し、一般的、常識的な内容であれば、後工程の整理・分析段階で工夫を求められます。
 それにしても、新商品企画のためと勢い込んだところで「どこかに潜り込んで極秘情報を得る」的な、産業スパイもどきの活動が、調査担当者に要求されるわけがありません。
 また、アップストリームに情報を求めるときは、至極当然ながら調査テクニックよりも『技術的な基礎知識』の方が要求されます。経済的知識がなければ、経済調査ができないのと同じで、これは調査テクニックと違います。

〔調査上の留意点〕

 調査活動の実施方法は、図表3-13に要約します。ここでは、調査の留意点を考えてみることにしましょう。

● まず、アンケート調査です。最近のアンケート調査はDMなど『郵便(メール便)方式』より、電話などの『直接質問方式』に主力が移りつつあります。が、アンケートを装った販促・PRが多く、「受け手の迷惑」を考えれば逆効果になることもあります。
 それはFAXやE-mailも同じで、独自のアンケート設計に工夫を凝らしても「迷惑メールに間違われる」のが落ちです。

● 郵送料金の関係から、やはりPRを兼ねて質問事項を刷り込んだチラシなどをみますが、これもノベルティハンターの餌食になるだけでしょう。
 それよりも、商品に添付される品質保証書と同封された「お買い上げカード」「お得意さまカード」などのアンケートが有効です。アンケート内容の設計次第 では、次期新商品の企画に役立つ情報になるかもしれません。が、いずれにせよ『個人情報保護法』との関係は、慎重に留意する必要があります。

● ヒヤリング調査には、事前に『質問マニアル』を準備します。形式はヒヤリング調査でも、学生アルバイトなどを使うと、アンケート調査と同様の定量分析しかできません。が、専任担当者が行うヒヤリング調査は、情報の定性分析を可能にします。
 『定量分析』、『定性分析』というのは化学分析用語ですが、アンケートの集計・分析のようなケースの表現でも、便利に使える用語です。

● 文献調査の対象は、単行本、雑誌、新聞の類型から情報探査するのが、代表的な方法になるでしょう。が、この前段にインターネット調査などを挟み、浅く広くリサーチを掛けてから、文献で内容を『深堀り』するほうが、トータルの調査エネルギーを有効に使えます。
 そのかぎりにおいては、まったく便利になったものですが、最近は無料のIT情報の丸写しで、調査料を戴こうとする輩がでてきました。
 新聞や一般誌は『記者の目』を通して書かれているので客観性があるのですが、内容が広すぎて容易に目的テーマへ迫れません。その点で専門雑誌は、当事者自身が書いているケースが多いので、いろいろな学問の体系や産業の体系にわたる学際的、業際的調査テーマに迫る場合は、分野別の専門誌を通読するのが有効です。
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● 目的とする『情報が発見』できたら、必ず抄録にまとめることが必須です。調査活動に活用できる電子情報の代表格は、データベースです。近時はデータベースがハードディスクで販売されていたりしますし、インターネットのお蔭で手元のパソコンさえ叩けば無料で利用できるデータベースがずいぶんとあります。
 しかし反面でテータベースの発展は社内の調査マンが、「調査時間の短縮」と引き換えに「調査技術の衰退」「調査経費の高騰」を招く側面もあるわけです。これを乗り越えるため、中小企業支援機構の地域情報センターなど、中小企業向けの各種支援を活用するのが有効です。

3-4.調査報告書をつくろう

〔記録を残す意義〕

● 自身のためにも要る
 調査者には、報告義務があります。社内の調査マンといえども、資金と時間を費やして調査したのですから、義務があるのは当然といえば当然です。誰に報告するかは、それぞれのケースがあるでしょうが、報告の形式には、口頭報告と書面報告とがあります。
 調査者自身のための調査なら、口頭報告は要らないようなものですが、「調査書だけは不可欠」です。さらに調査の依頼者がいる場合は、口頭報告と調査書の両者をミックスしなければなりません。
 しかし自身が必要とする調査でも、パソコンのメモリーや紙に残す形式はともかく、調査書は作っておくべきです。つまり結果は、調査ニーズがどこであろうが、会社の「みんなが共通」に活用すべき情報だということです。

● 報告書の様式
 調査報告書は、依頼者を意識して作らなければならないのですが、報告のために調査書に『一定の形式』をもたせておけば、調査結果が社内の共有情報になり、将来の再活用にも適します。
 また中小企業などの例で、仮に社長自身が調査し、他に報告する先がないとしても、せっかく調べたことは何らかの決まった形式で残しておき、企業の共有情報と自分自身の備忘録にしなければなりません。
 共有情報にするためには、「本人しか知らないパソコンの中」より、多少時間と経費がかかっても「誰でも何時でも見られる紙に書き残す」べきです。パソコンの中なら、サマリー(抄録)だけでもプリントアウトしてファイルに綴ります。
 特定の依頼者があるときは、『中間報告』、『定期報告』、『最終報告』というように調査時間の経過とともに、報告の形態が変わってくるものです。問題に よっては、情報を得た時点でとりあえず口頭報告し、急遽「対応策をとる」こともあるでしょう。しかし調査はあくまでも、最終報告書によるまとめをもって 終了とすべきです。

〔調査書の整理方法〕

● ISO9000Sに習えば
 調査報告書の蓄積は、社内の貴重なプライベート・データベースになります。これは最終報告書だけでなく、調査過程で得た細かな諸情報を書き留めたメモでさえ、残しておくべきデータベースの一枚です。
 ISO9000Sの要求事項は、紙に書かれたドキュメント(記録)類を残すことが必須です。その内容は、『研究開発部門』の実験記録や『設計・製造部 門』の設計図、作業手順書、『検査部門』のデータ集、販売部門の業務日誌、サービス・メンテナンス記録など、あらゆる文書類が対象になります。
 欧米的合理主義、形式主義が理念のISOが要求する文書管理方式は、調査情報の整理にも役立ちます。そのポイントは、共通化されたフォーマット(書式)の『統一性』と『継続性』です。また整理方法は、この理念に習えばいいのです。

● データベースの類型
 調査報告書の場合データベースの分類に習えば、小さなメモまで全部まとめたファイルは、課題別のファクト・データベースです。報告書の形式は『文献抄 録』や『実験データ集』などと同じ要領で、図表3-14のような書式にまとめます。調査結果の欄が狭ければ、1~2枚のレポートを作って下に入れます。
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● 目次の効用
 ファイルの中身の方は、メモまで含めるとファクト部分が膨大になるでしょうから、目次を作ります。しかしファクトデータが増大する過程で目次を作ると、何度も作りなおさなければならないので、インデックスを張り付けるのが実用的かもしれません。が、とにかく細大漏らさず収録することです。
 次は情報の一元管理です。図表の左下の部分にファイル記号・番号欄を設けましたが、これを『付けるためのルール』を決めておきます。いわばこれは、社内データベースの大分類コードに相当するわけです。
 小さな組織では、特定の情報は「社内の誰々に聞けばわかるか」ことになっています。知っているのが社長であれば、そのことを社長に聞けばいいのです。 が、大きな組織でも分類のルールとともに、この件は「誰々が知っている」ことが、みんなに認識されていれば便利です。ただ便利なだけに、面倒な分類ルール の整備を忘れてしまいます。

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