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アイデア開発 第4章 アイデア開発 3~5

成功する企業には新商品開発がある

4.中心課題アイデア開発  - 新商品の発芽は逞しく -

4-3.発想技法とアイデア開発

〔技法上の共通原理〕

● いろいろな発想法
 アイデアを発掘するための、いわゆる発想技法は30種類以上もあるといわれます。ちなみに、よく知られる着想や発想の技法は、図表4-11-1,2のようなものです。
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● 発想原理への私論
 このように一覧表にして並べてみると、多くの技法や手法には、何となく共通点があることに気付きます。それは発想という人間の思考に関し、多分に心理学的な要素を加味して整理されているからでしょう。その要素は、いわば発想の原理として私論ですが、図表4-12のようにまとめられるのではないでしょうか。
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 発想は『沈着冷静』に考えることも大切ですが、人々の思考を大いに『振動させ』『沸騰させ』る方がいいこともあるようです。つまり個人のヒラメキも大切 ですが、各人のアイデアを「掻き交ぜて反応」させ、新しい「物質を発現」させようとする、いわば化学実験のような原理が言えると思います。
 こんな戯言を『発想の原理』というのは、屁理屈かもしれません。が、誰かの考え方や何らかのツールが、自分の思考に「ヒントを与えた」ことや、記録しなかったばかりに「インスピレーションを逃した」ことなど、どなたも経験しているのではないでしょうか。
 また、せっかく考えたことは、何らかの形で「仕事に活かしたい」と思うのも、ビジネスマンの心情です。ですから発想技法の理解には、それなりの意義があるわけです。
 それにしても人間が発想する過程は、あたかも彫刻を仕上げていく作業のように思いませんか。つまり製品フレーム(骨格)を立て、情報という粘土(アイデアの材料)を練って、アイデア(新商品イメージ)を自由にくっつけていくわけです。
 すると新商品イメージは、時間の経過とともに徐々に「固まってくる」というプロセスです。まさにアイデア開発は、図表4-13のような陶芸と同じ『創造的な作業』であることに違いありません。
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〔ブレーンストーミングの進め方のコツ〕

● 先人の知恵を逸早く
 発想技法がこんなに多くあるのは、こうすれば必ず「グッド・アイデアが生まれる」といった決め手がないからでしょう。しかし『ビジネス上の効率面』から いえば、ただガムシャラに考えるよりも、やはり先人の考えた技法なり手法を逸早く用いて発想するほうが、断然の得策です。
 ただ難しい技法を駆使すれば、グッド・アイデアが保証されるわけではありません。したがってアイデア開発にあたっては、できるだけみんなに知られた、たとえばブレーンストーミング(BS)のような手法を選ぶのが賢明です。この進め方には図表4-14のような、ある種のコツがあるように思えます。
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● 運用のコツが効果を決定付ける
 BSの集中度をあげるためには、あらかじめ討論のテーマを明確にしておきます。できるだけ、関連情報のまとめを添えて、それを事前に提示しておくわけです。
 参加者の情報レベルは、プレBSのような形式で事前に合わせることも、場合によっては必要になるでしょう。が、これには論理的な反論があるかもしれません。
 平素の情報交換はもちろん大切です。が「とにかくやって」みて、だめなら勉強して出直すというのでは、BSという技法自体に失望を感じます。こうなると、やり直しの勉強会をやるとしても、後出しジャンケンのようなもので、事後処置自体がしらけます。
 技法の名称どおり「頭の中に嵐を起こす」ことは、決して「頭の中が空っぽ」であることを要求しているのではないはずです。既成概念を「嵐で吹き飛ばさない」ことには、新しいアイデアが盛り込めないからこのよう表現されるだけです。
 しかし吹き飛ばすべく概念さえなくては、嵐を呼ぶ必要もないでしょう。また、参加者に『情報レベルの格差』があるまま、たとえば上長など特定の嵐に掻き 回されたらどうなりますか。瓦礫の山を築きこそすれ、新しいアイデアの構築など望めるものではありません。ですから実務的な経験上、プレBSの意義を認めるというわけです。

〔発案ローテーション〕

● 一休みするのもコツのうち
 発案は、件数の多いほうがよいといわれます。が、BSの時間が経過すると、はじめは発案件数が伸びるのですが、時間経過とともに急激に減少してきます。ですから発想は「短時間に集中」して行い、一休みして次の機会を待ったほうがいいのです。この一休みは、発想密度をあげる効果があります。
 7~8名以下でBSを行うのであれば、討論は40分~1時間までとし、2~3日後に再度2時間以内の議論を繰り返します。メンバー数は多すぎると、前段の情報レベル合わせも難しく、発言者に偏りがでてきます。逆に、少なすぎると議論が沸きにくく、空白の時間ができてきます。
 ひと休みの空き時間が長すぎると、集中度が落ちます。が、アイデア開発のプロセスでは「商品イメージが固まってきだす」と、逆に一週間ばかり休む方がイ メージの内容を確認する時間がとれます。つまり図表4-13の引例でいえば、固まりかけた彫刻の粘土が本当に乾くには、そこから先の時間がかかるというわ けです。

● 紙に書くことの意味
 『連想の度合い』をあげるために、発言者の意見は大きな「紙に書いて面前に提示」します。ただ現在では、電子黒板という便利な文明の利器もありますし、パソコンに整理してプロジェクターで皆が見られるようになりました。
 近代の利器を活用するのは、業務効率上たしかに有効です。ただアイデア開発の面からいえば、この際『書記の効率』よりも『発想の効率』を考えなければなりません。
 つまり視聴覚で捉えた情報をもとに、頭の中で描くいろいろな思考を浮沈させていかなければなりません。手の触覚をはたらかせて「書き」、「まとめて」いく過程でも、まだまだ発想は続いているのです。
 その点は、電子黒板でもパソコン上でも「手を動かしながら考えている」といえるかもしれません。が、電車の中でメールを作文している若者は、反射神経の 世界に浸っていてとても深い思考の境地にいるとは思えません。電子黒板を開発した沖電気工業の方々は、BSをやりながら電子黒板の着想を生んだのでしょう か。
 それはともかく第2回目のBSは、第1回目の記録も並べて提示し、第1回目と同じメンバーで繰り返します。またある程度、具体的な商品イメージが描けるまでは、交替要員でなく同一メンバーでやることです。

4-4.アイデア創出の阻害要因

〔制約条件を与えない〕

● 悲観論が跋扈する
 「自由奔放に思考する」ことは発想の原則ですが、事前に思考に対する制約条件を与えると、この原則が基本から破れます。たとえば、わが社には「技術がないのだから」「設備がない状態で」または「その市場を知らないのに」といった制約条件は、強い『現状への悲観論』となって発想への大きな障害になります。
 このように後ろ向きな、考えを上司に念押しされると「そんな発案はできっこない」から「考えても無駄だ」と後で言われるだろうと、発案者に覚られます。発想する前に、こんなプロダクトアウト思考を条件付けるような職場では、現状をブレークスルーする新しいアイデアなど、生まれるはずがありません。
 ところが多くのケースでは「わが社の現状の中で考える」ことが、より「現実的な発想」だと勘違いするのです。
 アイデア開発は「無から有を創造しよう」とするのです。ですから発想自体は、本来が『非現実的な行為』です。現実と離れるために『異分野の人』が加わって、『頭の中に嵐』を起こします。
 したがって制約条件は、「大いに夢を描け」といっておきながら、描くべき思考のキャンパスを狭めます。あたかも、図表4-15のごとくです。
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● アイデア開発と評価
 トップが制約条件を付けたがる理由は、アイデア開発アイデア評価を混同するからです。さらに過去にもこういった体験があると、開発と評価の混同が発想者側に意識されます。
 つまり「前にこんなことを提案したとき、にべもなく断られた」ならまだいい方で「何とつまらない提案をするものだ」と叱られたとなると、現実的なアイデアどころではなく、アイデアそのものが生まれてくる雰囲気ではありません。
 ところが、こんな常識的なことが意外に多くあるものです。『新商品開発』にかぎらず『作業改善』でも『販売政策』の樹立でも、第一線の『現業者のアイデア』が必要な場面は一杯あります。
 だのにアイデアを産まれ難くする雰囲気は、いわば『企業風土』のようになって定着しています。こんな雰囲気は外部コンサルタントの立場からみて、異常であっても当事者たる経営トップはそう感じないのです。

〔結果責任はトップにあり〕

● 励まし方が違う
 アイデア開発とアイデア評価は、厳然と区別します。評価するのは経営者にかぎらず、該当する組織のトップです。が、評価者側発案者に「結果責任を押し付け」ようとする例をたまにみます。
 たとえば「君が考えたことだから仕方なく採用する」が、「やってみた後の責任はあくまでも君がとる」つもりで「仕事に励んでくれ」といった調子です。ところが、評価者つまりトップのこのような態度は、発案者にとって無用のプレッシャーになっても、決して励ましにはなりません。

● 評価後のアイデアはトップのもの
 一体に結果責任は、発案者に取れないものです。業務の遂行責任は、業務遂行を託された『開発』『製造』『販売』『サービス』の現業者側にあります。
 しかし発掘されたアイデアの発案者と、業務遂行者は『全く別の立場』です。評価を受けた後のアイデアは、既に「発案者個人のもの」ではないからです。つ まり『特許権の帰属』などと同じで、発想段階のアイデアは個人のものであったとしても、アイデアは「評価後に会社のもの」ひいては評価者たる「トップのも の」になるのです。
 また発想者の側からみても、開発や仕入れ・生産・販売業務など「一部のプロセスを執行」するひとりの業務遂行者にすぎません。しかし、中小・零細企業であってもアイデアの実行は、開発・仕入れ・生産・販売すべての業務を総合して結果がでるのです。

● マスコミ報道の誤解
 ときに『特許権益の争い』で、発明者が「何十億円の利益請求を主張した」などとマスコミを騒がせます。
 しかしいくら優れた発明であっても、経営の『勇気ある意思決定』と『最適な生産設備』の確保、さらに多くの『生産・販売担当者の努力』があってこそ、「何十億円もの利益」があがるのです。その考案だけで、利益が生まれるはずはないのです。
 仮に「トップの反対を押し切って時間外にコッソリやった開発」の結果「大ヒット商品になった」といったエピソードもあります。
 しかし組織による新商品開発は、こんな開発態度を許しません。早い話が「会社の開発資源をコッソリと勝手に使い」損したら『知らぬ顔』で、儲かったときだけ結果オーライの『手柄話になる』ことが、組織の仕事で許せるはずがないでしょう。
 こういう無責任状態、職務使命の不徹底な状態があるとすれば、それこそ立派なアイデア開発の阻害要因です。

● 結果責任をとるとは
 評価されたアイデアに基づき開発を遂行し、その結果責任はすべての業務を統括するトップに帰属するのは当然です。
 もっと平たく言えば、新商品開発の「成功によって儲かる」のも「失敗で損をする」のも、結果のすべてが「トップに跳ね返ってくる」ということです。あたかも図表4-16のような循環です。
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 トップからすれば「誰でもいい」から、全く「無責任な発言でもいい」から、多くの意見を出させることです。一見無責任に思えるアイデアの中には、十分評価し得る本人さえも自覚し得ないほどの名案があるかもしれません。
 企業の発展につながる可能性が大きく、素晴らしいと評価できるアイデアが発掘できれば、その商品化に「万全の努力を払う」のが企業経営というものです。 アイデア実現のためには「新しい技術を習得」させ、借金をしてでも「最適な新設備を導入」し、必要ならば「新しいマーケティングルート」を開拓するのが 『トップの役目』というものです。
 提案者側が、発想前の『制約条件の押し付け』や『結果責任逃れ』のために、誰もがアイデアが出せない状況があるとすればトップにとって、また会社にとって大きな機会損失を招く要因になることを知らねばなりません。

4-5.新商品イメージへの接続

〔猫でなければ〕

● 商品イメージは明確に
 「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたか頓と見當がつかぬ。・・・」というのは、夏目漱石の処女作の出だし部分です。
 原文にあるように、発掘されたアイデアの名前は「まだなくて」もよいのです。が、はじめに「“猫”というイメージ」だけははっきりさせないと、プロローグ以後の筋が立ちません。同様に、商品イメージがはっきりしなければ、新商品開発が進まないのです。
 ただ小説のイメージキャラクターは、あくまでも”猫”です。犬であってもその他のペットであっても、たとえ主人公の迷亭先生や寒月君という登場人物の設定を同じにしても、この小説は『売れる新商品』になりません。

● おらがアイデアの誇り
 引例は全くこじつけに過ぎませんが、創作という点では新商品企画も小説も変わらないでしょう。ですからこのこじつけは、図表4-17のようにKJ法的なまとめができるでしょう。また新製品イメージでなく、新サービスのアイデアを創出するのでも、このような方法で考え方をまとめていけるかもしれません。
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 さてブレーン・ストーミング(BS)のルールでは、その場で「結論を求めない」ともいわれますが、この留意事項は「アイデアを多くださせるための配慮」にすぎません。決して「思い付きの出しっ放し」でよいはずはないのです。
 あれこれと考え、議論し蓄積した意見を総合して「やっぱり“猫”でいこう」とばかり、イメージをはっきりさせていきます。その狙いは、BSメンバーに「おらがアイデアだ」という意識を植え付け、参加社員をこれから先の取り組みに動機付けるためです。

〔BSをまとめたイメージ〕

● ポンチ絵が描けるくらいに
 まずBSをまとめるチャンスは、断片的な思い付きがあても、同じ意見が繰り返されるようになってきたときです。座長は多少の無理があっても、まとめの方向に誘導します。まとめの留意事項は図表4-18に示します。
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 新サービスも新製品イメージも同じことですが、重要なのは「猫なのか」「犬なのか」ポンチ絵(略図)が描けるくらいにはっきりさせなければなりません。そうでないと開発者は、このあと「どういうように考えていく」のか「何を作ればよい」のか、わらなくなります。
 たとえば『当社の商品フレームは玩具』と設定している会社で、ただ「かわいい動物の縫いぐるみを開発しよう」というだけの商品イメージが出される場合で す。これでは「縫いぐるみ」そのものが商品イメージになってしまいます。ですから“猫”であろうが“犬”であろうが「かわいい動物」でありさえすればいい ことになります。
 ところがこの場合の「かわいい動物」は、単に製品条件にすぎません。商品イメージとして最終的にまとめるには、新商品に対する『条件付け』が必要になることもあるでしょう。それによって実際に開発するとき、“縫いぐるみの猫”をいかに「かわいらしくみせる」かが、デザイン課題となってくるわけです。

● 原始アイデアが高度アイデアに
 ここまで商品イメージがはっきりすればそこに重ねて、また新しいアイデアが生まれてくるというものです。しかし、製品条件を示されるだけの商品イメージ が、先に出されたのでは「どんな縫いぐるみを作ればよいか」わからないわけです。それでは『具体的な製品』になりません。
 描いたイメージを商品像に結び付ける形態は、『絵に画く』か『成文化』することです。上の例でいうならば、”猫の縫いぐるみ”をポンチ絵に示せばピタリです。また、縫いぐるみの「大きさはどれくらい」「材質は」「色彩は」というように、製品のもつ機能仕様を成文化する方法なら、絵の下手な人にも示せます。
 このようなまとめは、後で評価する時点で「時期尚早」などと仮に没になっても、次の機会に日の目をみたり、別の機会に切り口を変えてみたり、新たに肉付けされることもあるわけです。

● 脱線アイデアの処置
 ただ、商品フレームに外れたところで「素晴らしいと思える」脱線アイデアが出たときは、そのまま尻馬に乗って突っ走ってはなりません。必ず「商品フレームの見直し」に返って、フレーム自体を検討しなおすことです。
 だからといって、商品フレームを『玩具に設定』しているのに、フレームから全く外れた「こんな饅頭があったら売れるだろう」といった異端のアイデアは、まったく要らないわけではありません。出されたアイデアは全部、企業の無形資産です。
 会社のトップが、異分野の会合で聞いた話に「ピンと勘に響いて」この「ヒット商品が生まれた」といったようなエピソードは多くあります。したがって、他 の商品フレームの分野でよいアイデアが続出するような場合は、原点に立ち返って「商品フレームの方を見直せ」というわけです。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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