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事業部トップ>執筆者:久保田 裕史

執筆者:hkubota

第83回 中小企業のための自治体ビジネス参入

1.なぜ今「自治体ビジネス参入」なのか

 中小企業を取り巻く経営環境は、原材料価格の高騰、人手不足、価格競争の激化などにより、従来型
 の民間取引だけでは安定的な成長が難しい局面を迎えています。その中で改めて注目されているのが
「自治体ビジネス参入」です。

 自治体は、インフラ整備、福祉、教育、防災、DX推進、地域活性化など多様な分野で継続的に予算を
 執行しています。
 総務省の公表資料等でも、地方公共団体の歳出規模は大きく、一定の安定性を有する市場であること
 が示されています。

 しかし一方で、「入札はハードルが高い」「実績がないと参入できない」「価格競争になる」といっ
 たイメージから、十分に検討されていない企業も少なくありません。重要なのは、自治体ビジネスの
 特性を理解し、戦略的に参入準備を進めることです。

2.自治体ビジネスの構造を理解する

 自治体ビジネス参入を検討する際、まず押さえるべきは市場構造です。

第一に、自治体の調達は原則として「競争性」「公平性」「透明性」に基づいて行われます。随意契約
も存在しますが、多くは入札や公募型プロポーザル方式です。したがって、民間営業とは異なり、「関
係性」よりも「仕様への適合性」や「提案内容の妥当性」が重視されます。

第二に、単年度予算主義という制度的特徴があります。事業は年度単位で計画・執行されるため、タイ
ミングを逃すと機会を失います。予算編成時期や事業化の流れを理解することが不可欠です。

第三に、政策目的との整合性が評価軸になります。自治体は営利を目的としません。地域課題の解決、
住民サービスの向上が最優先です。自社の商品・サービスが、どの政策課題に資するのかを明確に示す
必要があります。


3.参入を成功させるための基本ステップ

  自治体ビジネス参入を現実的な成果に結びつけるためには、以下のステップが有効です。

(1)ターゲット自治体の選定
   人口規模、財政状況、重点施策、地理的特性などを分析し、自社と親和性の高い自治体を絞り込み
   ます。すべての自治体を対象にするのではなく、戦略的な集中が重要です。

(2)政策・計画の読み込み
   総合計画、まち・ひと・しごと創生総合戦略、個別分野計画などを確認し、自治体が何を重視して
   いるのかを把握します。ここから提案の方向性が導き出されます。

(3)競争参加資格の取得
   入札参加資格申請は参入の前提条件です。業種区分や格付け要件を確認し、必要な体制整備を行い
   ます。
(4)小規模案件からの実績形成
   初期段階では大型案件を狙うのではなく、委託業務や実証事業など、比較的規模の小さい案件から
   実績を積み上げることが現実的です。実績は次の案件への信用となります。

(5)提案力の強化
   価格のみならず、課題分析力、実行体制、地域波及効果などを明確に示す提案書作成能力が不可欠
   です。特にプロポーザル方式では論理構成が成否を左右します。


4.自治体ビジネス参入のメリットと留意点

   自治体ビジネス参入には以下のようなメリットがあります。

   ・比較的安定した取引が期待できる
   ・実績が信用力向上につながる
   ・地域内でのブランド力向上に寄与する
   ・社会的意義の高い事業に関与できる
 
   一方で、留意点も存在します。
   ・手続きが煩雑で事務負担が大きい
   ・価格競争が発生しやすい
   ・支払サイトが長い場合がある
   ・仕様変更や議会承認など、民間と異なる調整プロセスがある

   これらを理解せずに参入すると、収益性や資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。参入判断は、
   事業ポートフォリオ全体の中で位置付けることが重要です。

5.自治体ビジネスを「戦略市場」として捉える

  重要なのは、「自社は何を売りたいか」ではなく、「自治体は何を解決したいのか」という視点に立
  つことです。政策課題と自社の技術・サービスを結び付けることができれば、価格競争に陥らないポ
  ジションを築くことも可能です。 

  自治体ビジネス参入は、準備なくして成果は得られません。しかし、構造の理解と戦略設計を伴えば、
  中小企業にとって持続的成長を支える有力な市場となり得ます。公共市場を単なる入札の場と捉える
  のではなく、自社の経営基盤を強化する戦略市場として位置付けることが重要です。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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