ものづくり事業部

第61回 ポストコロナの働き方改革―生産性向上のための真の働き方改革について考えるー

新型コロナウイルスの感染拡大もワクチン接種の普及によりようやく収束への兆しが見えてきました。企業は緊急事態宣言下で定着した在宅勤務を基本とする労働形態から出社日数を増やし、リアルでのコミュニケーションによる意思疎通の促進やサービス・生産性向上につなげていく方向に「働き方」をシフトし始めています。

一方、先般の衆院選では、自民党が絶対安定多数となる261議席を獲得し、とりあえずは安定した政権運営が継続するものと思われます。しかし、選挙戦での各党の政策論争では分配政策のみが叫ばれ、分配の原資として必要となる成長や、成長を実現するための改革についての議論はほとんど見られず、非常に残念でした。かつて世界で大きなプレゼンスを誇った日本経済は30年を超える停滞から一向に抜け出せず、先進国の中で唯一生産性が上がらない、所得が上がらない、政府債務だけが危機的に増加している、という不名誉であり危機的な状況になっています。この状況を踏まえた真の「働き方」改革についての議論が必要ではないでしょうか。

コロナ禍により様々な課題が顕在化し、日本がいかに他の先進諸国から遅れているかといった面も浮き彫りになりました。デジタル化の遅れもその一つですが、その背景には日本(人)の「働き方」が大きく関係していると思います。日本経済を再生し、生産性が上がることにより所得(給料)も上がり、同時に税収増加により国家財政の改善も期待できるような明るい未来を描ける国家に変わるためには、真の「働き方」改革を実現する必要があるのではないかと思います。

1.コロナ禍で見られた働き方の変化とジョブ型雇用導入議論
新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な働き方の変化が見られました。最も大きな変化は在宅勤務(テレワーク)の実施です。大企業での実施率が高く、中小企業や対面型事業を主業とするサービス業関連では導入が難しかったという傾向はありましたが、実施企業では比較的スムーズに運営できていたという調査結果がでています。その他に、副業の解禁、中途採用の増加、従業員シェア、ジョブ型雇用の導入拡大、等の動きが見られました。これらの変化の中で、在宅勤務とジョブ型雇用導入必要性がセットで議論される傾向が見られました。

2.在宅勤務とジョブ型雇用導入の必要性がセットで議論される背景
ジョブ型雇用とは、職務内容や処遇を職務記述書で明確にし、職務に対して人を割り当てる(雇用契約を結ぶ)という考え方の雇用形態で、欧米諸国で主流となっています。ジョブ型雇用といっても、アメリカ型と欧州型では内容に違いがあるため、論者によって内容の定義に違いも見られます。一般的に理解されているジョブ型雇用の特徴としては、1)事業計画に応じた職種別の採用や報酬、2)会社と従業員の対等な関係、3)公募中心のキャリア形成、4)(職務が無くなった場合は)退職勧奨もある、といった内容が挙げられます。日本では、ジョブ型雇用=アメリカ型という認識が強く、ジョブ型雇用が普及すれば企業による解雇が多発する印象が持たれているため労働組合の反対も強く、これまで議論が進まなかったという側面もあるのではないでしょうか。
在宅勤務では、相手が見えない中で自主的・自律的管理による業務遂行と成果の創出が求められるためジョブ型雇用との親和性が高いということと、経団連が時代に合わない日本型雇用に代わり、ジョブ型雇用拡大を提案したことにより、大企業では次第に導入が進んでいます。

3.日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)の問題点
日本型雇用システムは、メンバーシップ型雇用と言われ、1)終身雇用・年功序列賃金・新卒一括採用、2)企業特殊的技能(その企業内のみで生きるスキル)を前提とした職能給制度、3)職務・仕事範囲不限定の就社システム、といった特徴を持つ雇用形態です。
無限定正社員システムともいわれ、職務無限定による指示待ち姿勢、労働時間の無限定による労働時間の長さ、勤務地の無限定によるミスマッチ、等が労働者の労働意欲や生産性向上意欲を阻害し、日本経済の長期停滞の原因になっているとも言われます。また、就社によるメンバーシップから外れた非正規労働者は、同じスキルを持っていても評価されない、待遇が低いといった不合理な非正規問題を生みやすいシステムです。

4.経済構造・環境の変化に応じた真の働き方改革の必要性
日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)は、現在の経済構造・環境の変化の中で、1)年功序列賃金による高齢社員の賃金肥大化(もらいすぎ)と重要な仕事をする若年社員の低賃金による労働意欲の低下、2)会社に依存した社員の成長意欲の低下、3)グローバル人材や専門性の高い人材の採用難、4)日本の生産性や国際競争力の低下、等の問題に繋がっており、日本経済の成長の足かせになってるとも言えます。
バブル崩壊前までの日本では、欧米の技術を改良して質の高い製品を効率よく大量生産・輸出するモデルで経済発展を実現しました。この環境下では、大量生産を最も効率的に運営できる大きな階層組織が適し、毎年事業が拡大する中では無限定正社員システムはメリットが高かったとも言えます。しかし、経済環境の変化によりモノ(ハード)の大量生産による売り切りだけでは稼げなくなった現在は、ソフト面(無形資産・ノウハウ・企画力など)における柔軟な取組みにより他社との差異性を自ら作り出していかなければ付加価値は創出できず、稼ぐこともできません。つまり、柔軟で差異性のある組織へと変革できる真の働き方改革が求められているのではないでしょうか。ジョブ型雇用の導入は積極的に検討すべきあり、日本経済復活の突破口になるのではないかと思います。(以上)

第60回 コロナ禍を取り巻くSDGsの近況

持続可能な開発目標(SDGs)は、1/3の期間が過ぎ、達成に向けての具体的な行動が求められています。直近の各報告書からその近況を見てみたいと思います。
1.パンデミックで後退するSDGs
持続可能な開発目標(SDGs)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として策定されました。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標では、地球上の誰一人として残さない(leave no one behind)を理念とし、実現するための17のゴール・169のターゲット・232の指標が示されています。
2021年6月に公表された国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)の報告書(Sustainable Development Report 2021)によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、2015年にスタートしたSDGsの目標は、初めて達成に向けた進捗が後退しました。2020年の世界平均のSDGs達成点数は、前年より減少し、その主な要因はパンデミックによって生じた貧困率と失業者数の悪化によるものです。

2.日本の達成度は18位、ジェンダー平等と環境分野が課題
日本の進捗状況は、世界順位で165か国中18位、19年の15位、20年の17位から更にランクダウンとなっています。目標別に見ると下図に赤表示されている、ジェンダー平等と環境分野に大きな課題が残っているとされています。
なかでも目標15:陸の生物多様性は、保護された陸地や内陸水面の面積の減少を理由に、2段階下げて悪化となりました。新型コロナウイルスの影響は経済、社会、環境のすべてに及んでいますが、達成に向けては、持続的な成長を見据えた経済復興が鍵となります。

             出所:Sustainable Development Report 2021

3.ESGから見るサスティナブル投資の現状
投資家がE(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の3つの指標で企業の持続的成長を評価するのがESG投資です。SDGsが世界共通の目標であることから、投資家が各企業のESGを評価する上でSDGsは大きな指標となっています。
GSIAの報告(GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020)によると2020年のESG投資は、地域別で、アメリカと日本が急伸し、逆にEU国が見せかけのグリーンウオッシュ排除など基準見直しにより減少となっています。
全体の投資残高では、35兆3千億ドルで2016年の総額から55%の大幅な増加となります。
ちなみに、35兆ドルの規模感ですが、機関投資家の全運用資産が約100兆ドルですので、その35%がESG投資となります。コロナ禍にあっても環境分野を中心にサスティナブル投資が伸張していると言えます。

          出所:GSIA  GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020

4.これからは行動の10年
日本政府は「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、経済、社会、環境の三分野での課題への取組みを強化し、経団連も企業行動憲章を改定し、会員企業に対してSDGsの達成に向けて行動するよう求めるなど、企業によるSDGsの取組みを後押しています。
新型コロナウイルスによるパンデミックは、先送りしてきた社会の課題を改めてはっきりとさせ、「持続不可能」な社会にいることに気づくきっかけになったのではと思います。普及と後退の期間を経て、SDGsは「行動の10年」に向かいます。

第59回 繊維産業の現状と今後の方向性

1.国内繊維産業の現状
経済産業省によると、国内繊維産業の2017年の事業所数は1.1万事業所、従業員数は21.4万人、出荷額は3.2兆円、全製造業のうち5.7%の事業所数、2.8%の従業員を占める産業となっている。国内生産の減少により、国内繊維事業所数、製造品出荷額ともに、1991年比で約1/4に減少、国内アパレル市場における輸入浸透率は増加し続けており、2018年には97.7%まで増加している。国内のアパレル市場規模は、バブル期の約15兆円から10兆円程度に減少する一方で供給量は20億点から40億点程度へとほぼ倍増している。衣料品の購入単価および輸入単価は、1991年を基準に6割前後の水準に下落しており、供給量が増加しても単価の減少により市場規模が縮小していることが読み取れる。
さらに、長年の厳しい国際競争の中で、生き残った素材メーカー等は相応に強いものづくりの地力を有し、生地輸出額は世界的に見ても高い水準にある一方で、生地は競争力があるが、衣料品の輸出は先進国のなかでも極めて少ない状況にある。このように、国内繊維産業は厳しい状況にある。

2.繊維産業の今後の方向性
国内の繊維産業の現状を踏まえ、経済産業省は「繊維の将来を考える会」を発足。繊維産業の業界をリードする事業者間で、繊維産業の課題や将来等に関して自由闊達に情報・意見交換等を行うネットワークの場を設けるとともに、当会での意見をもとに政策の企画立案をしている。令和元年には、繊維の将来に向けた行動指針「繊維の将来宣言」を公表した。
「繊維の将来宣言」の行動指針のポイントは以下の5つである。
1) 自社の強みの把握やブランディング、販路開拓・ユーザー開拓を行い、自社の強みを生かした経営で価値を高めること
2) 海外販路開拓を行い、「メイドインジャパン」に満足するのではなく、独自の価値を世界に発信・提供すること
3) 画期的な製品・サービスの開発やIT・新技術の積極的な活用を行い、あらゆる分野で繊維の可能性を探求し、常に新しく付加価値が高いものづくりを実践することにより、素材革命を起こすこと
4) 異業種連携や産地間連携を推進するなど、繊維産業が技術とクリエイティビティが融合する先端の分野であることを広く発信すること
5) サステナビリティやSDGsへの対応、責任あるサプライチェーンをつくるなど持続可能な繊維産業の在り方を模索し、社会課題の解決に貢献すること
私は、この「繊維の将来宣言」の内容は今後の繊維産業の生き残りや発展にかなり役立つと考えている。もし、OEM生産に依存して、上記の1~5の行動指針を実践していない企業は今後の繊維製造業界の中で取り残される可能性があると考えている。

3.コロナ禍における繊維製造業の景況と成功事例
靴下製造業など多くの繊維製造業が集積する奈良県のコロナ禍における繊維産業の景況感について奈良県中小企業団体中央会の発表は以下の表のとおりである。

年月 景況感
2020年10月

 

依然として百貨店や大手アパレル等の小売業は、売上高が横ばい又は減少傾向で厳しい状況が続いているが、ネット販売で検討しているメーカーもある。
2021年1月

 

緊急事態宣言の再発令に伴い、小売店の客足は減少し、業界としては依然として厳しい状況にあるが、コロナ禍で同業者が廃業したことによって受注が増えているメーカーや自社ブランドのEC販売が好調に推移しているメーカーなどもあり、販売先によって明暗が分かれてきている状況にある。
2021年7月

 

大手百貨店の7月売上高は前年同月比で2~3割減少しておりコロナ禍による外出自粛の影響が再び広がりはじめている。組合員の売上高減少の影響が出始めている。

自社ブランドを構築してEC販売を行っている企業は好調に推移しており、前述の「繊維の将来宣言」の内容を実践している企業はコロナ禍の状況を乗り切っている、または、乗り切ろうとしている。
実際に、奈良県の靴下製造企業の中では、OEMに依存せず、積極的に独自で素材開発をして画期的な製品を開発し独自ブランド化をはかり、EC販売を行うことでこのコロナ禍を乗り切っている、または、乗り切ろうとしている企業が多数存在している。
コロナ禍でも好調に推移している企業が存在していることから、コロナ禍という状況において経営が思わしくない企業は、現状の繊維製造の経営方向性を見直す機会となっていると私は考えている。今後の発展のために「繊維の将来宣言」の行動指針などを踏まえ繊維製造の経営の方向性を再検討することをお薦めします。

第58回 商標の不使用取消審判について

1.商標とは
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
その商品やサービスは、ある程度の範囲の塊ごとにグループ(45の区分)に別れてます。さらにそのグループ内での小グループ毎に商標権を取得できます。
但し、出願された商標は、特許庁での審査を経て権利化されます。
但し、例えば、他人の商標と紛らわしい商標は権利化されません。
そして、権利化された商標は10年毎に更新できます。

2.時々他人の商標と紛らわしい商標を使いたいときがあります。そのときどうする?
通常は諦めます。他人の商標を勝手に使えないので、別の商標を考えます。
でも他人の紛らわしい商標を製品等で使用していないときがあります。このときには「不使用取消審判」を特許庁に請求します。
この請求が成功して、他人の商標権が取り消されると、自分が出願した商標が登録されて、自由に使用できます。どうしても権利化したい商標があるが、その商標権を他人が持っている場合には、他人がその商標を直近3年以内に使用していないことをWeb等で確認して、「不使用取消審判」を行うことになります。
使用しない商標権を保有し続けることは、他人が選択できる商標の範囲を狭める。また積極的に使用して業務上の信用維持を計る観点からも、不使用を続けることは好ましくない。そのために「不使用取消審判」の制度があります。

3.商標の不使用取消審判に関連した最近進行中の事例
登録された化粧品の商標Aがあります。
商標Aの権利者は従業員10人以下の企業です。
その商標を使用したい企業が現れました。その企業は世界的日用品メーカーです。世界中で同じブランドを展開しており、新たに展開するブランドがたまたま商標Aでした。
当然のことながら、世界的日用品メーカーは商標Aの使用をWeb等で調査済です。しかし、権利者の企業の事業規模が小さすぎるため、Webでは使用を発見できませんでした。
世界的日用品メーカーは「商標Aは不使用である」と考えて、不使用取消審判を請求しました。
実は商標Aを実施していたので、その証拠を基に争い、結果的に商標Aは取り消されませんでした。
その結果、現在でも世界的日用品メーカーは日本において、そのブランドを展開できていません。
今後、どうなるかは未定です。裁判事件になる可能性もあります。
いずれにしても、知的財産というものは企業規模に関わらず、公平な制度であり、必要に応じて積極的に活用することが望ましいと考えます。

第57回 業界状況 「もの補助」からみる「印刷業」

1.印刷産業の特徴
昨今の印刷産業の特徴は、市場規模(出荷額)でみると、1991年の9兆円がピークで年々縮小し、2020年では約5兆円である。約30年で半減している。
印刷産業(印刷業・製版業・製本業・印刷加工業・印刷関連サービス業)の事業所数をみると21,247事業所(2019年工業統計調査)で、従業員4人以上の事業所数は、製造業24業種中、金属製品、食料品、生産用機械、プラ製品、繊維に次いで6番目に多く、全製造業の5.3%を占めている。
しかし、産出事業所数でみると、特に出版印刷と商業印刷の減少が大きい。ピークであった1990年と比較すると、活版印刷は7,279事業所→737事業所(90%減)、オフセット印刷は13,179事業所→6,022事業所(54%減)と大きく減っている。
また、売上シェア(2019年度決算書)でみると、T社(1兆4647億円)とD社(1兆4015億円)と大手2社で印刷業全体の約60%、上位10社で全体の70%と超寡占状態である。市場規模(出荷額)は5兆円であるから、残り約2兆円を約2万社で競争していることになる。
2020年度は、他産業同様に新型コロナのダメージが大きく、印刷生産金額(従業員100人以上)は*3,444億強で前年比7%減のマイナス成長だった(印刷業界NEWS 2021/3/3)。
(*生産金額とは、工業統計の出荷額と異なり、印刷前後工程と用紙代などを除いた、印刷工程の生産金額に限定された数字)

2.もの補助と印刷業
ものづくり補助金とは、正式名称は「ものづくり・商業・サービス革新補助金」であり、中小企業・小規模事業者の生産性向上を図り、我が国経済の発展に資する目的で、24年度補正より実施され、中小企業の革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善等を行うための設備投資等を、平成24年度補正以降約52,000者を支援してきている。
「ものづくり補助金総合サイト」で令和2年度補正「もの補助」で申請者の業種を調べてみると、製造業が過半の52.5%を占めており、採択率は45.6%だった。つまり、申請者の半分は製造業で、その半分は採択されていることになる。
では、印刷業はどうかと調べてみると、詳細なデータは入手できないので、令和2年度補正4次募集の採択結果(3,131件)から「印刷業」で検索してみると「72件」がヒットし、2.3%のシェアであった。
6月18日、注目の「事業再構築補助金(1次)」(予算額1兆1,485億円、複数回にわたる公募、17万件の応募予想、6万7千件の採択予想と超大型の補助金)の採択結果が発表された。
<緊急事態特別枠>申請件数5,181件、要件適合4,326件、採択2,866件、採択率(55.3%・66.2%)。印刷業14件(シェア0.5%)だった。
<通常枠・卒業枠・回復枠>申請件数17,050件、要件適合14,913件、採択5,150件、採択率(30.2%・34.5%)、印刷業53件(シェア1.03%)だった。

3.今後の印刷業
日本国内の中小企業数は約430万社であり、大企業を含めた全企業数に占める中小企業の割合は99.7%である。中小企業の従業員数は2,800万人であり、大企業を含めた全従業員数に占める中小企業の割合は70%である。
全法人数に占める赤字法人の割合は前年度分から0.9ポイント減少の62.6%であり、過去最高の赤字割合を記録した平成21年度分(72.8%)から8年連続で低下している。数字上はアベノミクス効果等による企業業績の改善がみられる。
しかし、業種別に赤字法人割合をみると、最も高いのが「出版印刷業」で74.8%と4社に3社が赤字である。以下、「繊維工業」74.4%、「料理飲食旅館業」73.3%、「小売業」70.6%、「食料品製造業」70.3%までが赤字割合が7割を超えており、最も低い業種は「建設業」の57.2%だった。(出所:国税庁平成29年度分「会社標本調査」)
また、2019年の「印刷業の休廃業・解散」動向調査(出所:東京商工リサーチ)では、2019年に休廃業・解散した印刷業を業歴別(判明418件)にみると、50年以上100年未満が109件(構成比26.0%)で最多だった。印刷業では業歴の長い老舗企業を中心に市場からの撤退が進んでおり、新規参入の減少と老舗企業の退出が加速しているのが特徴となった。
さらに、2019年に休廃業・解散した印刷業の直前期の決算は、64.7%の企業が黒字(当期純利益)だった。休廃業・解散した印刷業の黒字率は、2013年が59.6%、2017年が77.6%と年により変動するが、総じて6割以上で推移している。全業種の黒字率は61.4%にとどまり、印刷業が3.3ポイント上回っているが、印刷業の「黒字廃業」が目立つ。
印刷市場が現在の印刷業を続けていて、市場規模がプラスに転じることはない。今後も、顧客はペーパーレス化を進めていくため、印刷業界(特に中小印刷・商業印刷・オフセット印刷の分野)がとるべき方向は、4つにわかれるといわれている。
(1)デジタル化…webマーケテイング・オンデマンド印刷
(2)高機能化…包材・建材・ガラス・産業資材
(3)ソリューション化…顧客業務のアウトソーシング
(4)新しいビジネスモデル形成…デジタル+ITに強い企業と連携
この4つのどれも実現できない印刷会社は、残念ながら淘汰の対象になるといわれている。
(5)ワンストップソリューション…前後工程内製化
(6)ワンソースマルチユース…印刷業務から派生する周辺業務にリソース活用
印刷業界全体が、印刷事業に続く柱を作っていけるかが、大きな課題であり、「受注産業の壁」を破れるかが焦点である。そのためにも「補助金」を活用して「勝ち組」になって生き残ってほしい。

事業部紹介

ものづくり事業部では単に製造業に限らず第一次産業でも第三次産業でも、人々の生活を豊かにする「ものづくり」機能全般にわたって企業支援をいたします。
「ものづくり」は単に、物財の製造だけを指しているのではありません。私たちは、人々の生活を豊かにし、企業に付加価値をもたらす財貨を産み出す総ての行為こそ「ものづくり」だと捉えているのです。
ものづくりの原点にかえって、それぞれの企業に適した打開策をご相談しながら発見していくご支援には、いささかの自信があります。

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